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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
1幕-1:事前情報

PERFECT BLUE 01-03

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諏訪は、その場に突っ伏してしまった。肩に残る丸岡の手の感覚が、まるで鉄でも乗りかかっているように重く感じる。
いったい、どういうことだろうか。自分にF組の担任を申し付けてきたここの重鎮たちは、悪いことを隠して良いことしか言わなかったとしか思えない。今日までにだって何度か打ち合わせやら顔合わせやらあったというのに、一度もそんな話などしてこなかったのだから。
そしてやはり、どう考えても、自分は押し付けられたのだとしか思えない。他にも担任を持っていない教師は、多くはないけれど居ることは居るというのに。それでも新人の自分に回ってくるなんて、どう考えても押し付けられたと理解するのが妥当だろう。

「ふざけんなよ……」

この高校での教師生活を楽しみにしていた自分だったのに、一瞬で一転してしまった。

「少年院って……」

いったいどんなことをしでかしたのだろう。しかもそれが理由で留年ということは、割りと長い期間居たということ。

「そんなんフツー退学だろ…。どこまで大らかなんだこの高校は……」

次々と愚痴がこぼれていく。

「どーしたの。明日から新学期ってときに」

不意に、背後から再び自分を呼ぶ人物がいた。
親しみある声と言葉に、諏訪は半泣きで振り返る。
そこに立っていた人物を確認すると、

「串崎さ~~ん……」

言葉と共に、諏訪は"串崎"と呼んだその人物に泣きついた。

「ちょ……諏訪?」

串崎は驚いてアタフタしている。

この"串崎"こと串崎卓也(クシザキ タクヤ)は、この高校の卒業生であり、現在は教師。今年で2年目になる。
諏訪がこの高校に赴任することが決まり挨拶に現れた日、一番最初に声をかけてくれたのが串崎だった。
184cmの高身長である諏訪と比べると若干目線は低いものの長身の部類に入るであろう串崎は、顔立ちも端正でスタイルも抜群なのだが、おしゃべりでいじられがちな性格が全面に出ていて、どちらかというとお笑い系。同じく諏訪も、ルックスには恵まれているのだが空回りしがちな性格のおかげでいつでも賑やかし役を担ってきたため、串崎とは妙に気が合う。
年齢も諏訪とは1つしか違わないせいか、串崎は最初から友達のように接してくれた。諏訪のことも"先生"を付けず、自分のことも『串崎でいいよ』と言うほど、親しみ易い人間。会った初日から仲良くなれたのだ。
しかも串崎も、以前からこの高校が勤務先の第一志望で、数学教師が足りていなかったために去年面接を受けることができ、教員として採用された。この高校出身で、この高校のおかげで楽しい学校生活を送ることができたという彼の場合、今度は教師として、恩返しの意味も含めてこの高校で教鞭をとりたかったらしい。そして新任早々、転勤したF組の担任に代わって、2年生から担任を持つようになった。要は、諏訪と似た経緯を辿ったのである。
その串崎は3年F組の担任で、諏訪が受け持つことになる2年F組とは兄弟学級にあたる。串崎のクラスと兄弟学級ということで、諏訪は彼を本当に頼りに思っているのだ。
しかしその串崎からも、"彼ら"の存在を聞いていなかったと、諏訪はようやく気付いた。

「串崎さんも知ってるんですよね?」
「ん?」
「DOQ」
「あ……」

DOQの単語に、串崎は微妙に、だがわかりやすく表情を変えた。

「知ってたんだ……」
「いや、隠すつもりはなかったんだけど…」
「けど?」
「怖がらせるのも何かなぁ~~と思ってさ」
「隠してたと……」
「すいませんでした」

ジト目で見つめてきた諏訪に、串崎は素直に謝りながらもヘラッと笑って誤魔化そうとしてくるから、諏訪は更にどんよりと表情を曇らせた。
そんな諏訪を覗き込むように、串崎はさっきまで丸岡が座っていたデスクに腰をおろしてくる。

「で、誰から聞いたんだ?」
「丸岡先生…」
「ああ、あの人、噂話好きだからねぇ」
「噂なんですか?本当はそんなん居ないの?」
「いや、居るけど……」
「やっぱり居るんじゃないですか」
「いや、まあ、ね」

頭を掻きながら、串崎は完全にいじけている諏訪の肩をポンと叩い、苦笑いを漏らす。
しかし彼はすぐに、少し真面目な顔になった。

「でも俺はね、丸岡先生とか他の先生みたいに、DOQを毛嫌いはしてないよ?」
「え?」
「木下と真鍋と桜沢は、俺、好きだけどなぁ」
「はい???」

思いがけない言葉に、諏訪は伏せていた顔を上げた。さきほどの丸岡は、どう考えてもDOQを嫌っている表情。しかし串崎は、そういう顔をしていない。
それどころか、"好き"だと……

「俺もあのクラスの数学の授業受け持ってるけどさ、アイツら、可愛いよ?」
「そうなんですか?」
「いや、確かにね、他の先生にしてみれば、扱いにくい生徒かもしれないとは思うよ?俺も最初は睨まれたりした。
でも、しっかり向き合って、理解しようと彼らの気持ちに寄り添う努力すればさ、こちら側のそういう想いをちゃんと受けて止めてくれるヤツらだよ。大事なのは、他の生徒に対してと区別しない、フラットな視線なんじゃないかなぁ」
「そうなんだ……」
「まあでも、皆藤はちょっと別かな。DOQって言ったって、彼は基本的に単独主義だし、実際俺も、多少は警戒してる部分あるし」

やはり串崎も、その人物の名前をピックアップした。
諏訪の頭を駆け巡る、出来れば関わりたくない生徒の名前。
串崎の言葉に少し安堵していた諏訪は、彼の名前に再び表情が歪んだ。

「……DOQのボスですよね」
「あ、それも聞いたんだ」
「バッチリと。諸悪の根源。氷のような生徒」
「アハ…」
「少年院帰りなんでしょ?」

さきほど聞いた知識を、諏訪は吐き出す。皆藤智司という名称が、諏訪の耳にこびりついて離れないのだ。
しかし、串崎は諏訪の言葉に、何故か微妙な顔をした。

「それねぇ。俺はどうも納得出来ないんだよなぁ」
「そりゃあ、俺たち一般人には理解できないでしょ。少年院なんて、誰もが通る道ってわけじゃありませんからね」
「いや、まあ、そうなんだけど…」
「……?」
「俺はね、な~んか納得出来ないんだよ」

同じ言葉を、串崎は繰り返す。そして、思案するような顔つきで顎をさすっている。

「どういうことですか?」

さっきの丸岡とは全く違うその反応に、諏訪はわけが分からずに串崎を見つめた。串崎は何が納得できないと言うのだろうかと。

「皆藤は他人とのコミュニケーションを頑としても取ろうとしない奴だし、表情も一切変えないから何考えてるのか全くわからないし、とにかく冷たい雰囲気の奴だし、本当に扱いづらいよ。ドン引きするぐらい頭も良いから、たかが高校生だなんて考えで安易に近付いたらエライ目に遭う。少年院にいたのも事実だし。
でもさ…」
「?」
「串崎先生~~~」

串崎が何か言いかけたとき、職員室の入り口から彼を呼ぶ声がした。おかげで、串崎はそこで言葉を切って顔を向こうに向けてしまう。

「ここですけど~?」
「あ、校長が呼んでますよ。明日の始業式のことで話があるみたいだけど」
「ああ、はいはい。そうだ、忘れてた」

やべえ、と小さく呟くと、串崎はすっと立ち上がる。

「明日、始業式の司会、俺がやるんだ。じゃ、行ってくるわ」
「え。ちょ……」

諏訪の静止も聞かず、串崎は資料を手にすると慌てて駆け出して行ってしまった。

「"でもさ~"何なんだよ……」

思いっきり気になるところで話が終わってしまって、諏訪は再び机に突っ伏した。

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