FC2ブログ

「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-1:事前情報

PERFECT BLUE 01-05

 ←PERFECT BLUE 01-04 →PERFECT BLUE 02-01
あまりにもさらりと普通に返されて、諏訪は思わず訊き返してしまった。
町田の反応も返答も、さきほどの北山や丸岡はもちろん、串崎が見せた反応とも違う。とにかく、普通だ。

「本当に知ってます?」
「知ってるよ。新2年生の、F組の4人のことだろ?知ってる知ってる」
「あの…じゃあ、どんな子たちなんですか?」
「誰が?」
「いや、だからDOQが」
「若いよ」
「そうじゃなくて……。俺のことバカにしてます?」
「いやいや、ゴメン。そんなつもりは無いんだけどね」

諏訪の肩をバンバン叩きながら、町田がケラケラ笑う。
諏訪はこの男にどこまでも遊ばれている気がして、ガックリ項垂れた。この養護教諭、親しみ易い人間ではあるが、少々性格が曲がっている気がする…と思う。

「そういえばあのクラス、担任が退職したけど……あ、もしかして諏訪、2年F組の担任?」

笑っていた町田がふと思案顔になったかと思うと、確信めいた口調でそう訊ねてきた。諏訪が大きく頷けば、またフッと笑った。

「なるほどね。それで胃が痛いってわけか。
で、どこら辺まで話は聞いてるわけ?」
「4人中3人留年。教師たちですら恐れる存在。報復が怖くてPTAも口を出してこない。
その中でも、皆藤智司は強烈。DOQのボス、諸悪の根源、氷のような男、通称"レクター"。そして少年院帰り」
「ああ、そりゃ胃も痛くなるかもしんねぇな。そういう風に話されればさ」

腕組みをしながら、しかし少しだけ苦笑交じりに町田が答える。
諏訪はその言葉に、妙に引っ掛かるものを感じた。

「そういう風に話されれば、って?」

それは、他の教師たちの言い方が間違っているとでも言いたいのだろうか。
諏訪が町田を覗き込めば、

「俺はね、DOQの連中、みんな好きよ?」

詳しい話を避けるように、町田はそうまとめた。
串崎と似たようなことを言っているが、串崎と違うのは、町田はDOQみんなが好きということ。ということは、皆藤智司も入っているわけで。

「あの…」

皆藤の話をもっと詳しく、と諏訪が身を乗り出そうとしたのだが。
町田はそこに気付いていないのか、自分の見解を説明しだした。

「アイツらを嫌ってる教師たちっていうのはさ、結局のところは過去にばかり捉われて、彼らの今を見てないだけ。噂や見た目だけで怖がったり嫌ったりして、拒絶してる。
教師ならさ、失敗はたくさんのことを学ばせてくれるものなんだって、失敗して良いんだって生徒に教えてやるべきなのに。一度でも失敗したら最後って言ってるようなもんだよ、あれじゃ。人殺しでもしたのかよって思っちゃうね。
仕返しが怖いとか何とか思ってる連中だって、俺から言わせてもらえば、そんな低レベルな発想しか出来ねぇのかなって感じ?自分たちがそんな頭の悪い人間だなんて思われたら、そりゃあアイツらだって反発したくなるだろ。そう思わない?」
「はぁ……」
「なあ、諏訪は、どうして教師になりたいと思ったわけ?」
「え?」

突然、話の矛先が自分に向けられて、諏訪は一瞬間抜けな声が出た。
しかし、見つめてくる町田の目はとても真剣で、諏訪もすぐに気を取り直して自分の志望動機を打ち明ける。

「えっと…。何ていうか……俺の高校って、やっぱり男子校だったんですけど、すごい人数が多くて、大学進学重視だったから勉強勉強って感じで。高校時代っていうのは生涯の友人に出逢う時期だって聞いたことあって楽しみにしてたのに、実際のところはみんな繋がりが薄くて。やっと仲良くなったと思ったらクラス替えだし。こういうのって、もったいないなって思ったんです。せっかく縁あって出逢えたのに。
それに、高校時代って、親離れしてるくせに自立もできてない、そういう危うい時期じゃないですか。そういうときに、自分を支えてくれたり助けてくれる存在と出逢うことって大事だと思うんですよね。それがクラスメートや教師だと思うんです。そうやって成長していくのが高校生活の価値なんじゃないかって。自分はひとりじゃないんだって思えることって、今後の人生にもすごく影響してきます」
「うん。なるほど」
「だから、そういう貴重な時間や出逢いを、これからの学生たちに味わってもらいたいって思って。
生徒と教師が強い信頼関係で繋がっていて、友達とも一人一人と理解し合えて、たくさんのことをみんなで分かち合えるような高校生活を送ってもらいたい。卒業しても繋がっていられるような仲間を作って欲しい。
俺も、教師だからって変に偉ぶるとかもしないで、あくまで生徒と対等に、同じ目線で物事を見たいんです。それに自分も、そういう生徒と過ごしたら、もっといい大人になれるかなって。成長できるだろうなって。
で、この妹尾学園が、自分の理想とする学校に一番近いと思ったから」

採用面接では緊張とプレッシャーで言いたいことの半分も言えなかったが、ようやく自分の志望動機を言えたと、諏訪は思った。目の前に居る男があのときの面接官でないのが残念なぐらいだ。
だから思わずすっきりした顔をすると、

「それでいいんですよ。諏訪センセ」

真剣に聞いていた町田が、優しく笑ってそう言った。

「え?」
「自分の信念に従えばいいんだ。怖がる必要なんてないじゃん。
諏訪は教師で、生徒よりも人生経験豊富なんだし、だからと言って変に偉ぶる必要もない。
俺もね、生徒たちとは、同じ目線で、対等の立場でいきたいと思う。
それに、いつでも笑顔の絶えない学校でいてほしいと思う。だから、俺は生徒と同じ目線にいるし、自分が笑顔でいるようにしてる。分かってもらおうとするんじゃなくて、相手を分かろうとする。そうすれば、きっと周りも分かってくれるし、自然に笑顔になる」

さきほどの意地悪な笑顔は消え去り、町田はとても優しい顔で言ってくれた。
諏訪の顔にも、自然と笑みがこぼれてきた。

「そうですよね…」
「うん、そうそう」
「俺が笑顔で、そして、生徒ひとりひとりに寄り添えば良いんですもんね」
「そうだよ。そうしたかったんでしょ?」
「はい」
「じゃ、頑張らないと」
「ですよね」

諏訪は急にいつもの陽気な声に戻ると、すくっと立ち上がった。手にしていた名簿と資料をバッグにしまい、ドアを開ける。

「町田さん、ありがとうございました」
「いえいえ。俺でよかったらいつでも相談にのりますよ~?」

町田はヒラヒラと手を振りながら笑顔で見送ってくれる。
諏訪は改めて町田に挨拶をして、そのまま保健室を出て行った。
扉が閉まった途端、

「でも、皆藤智司は手強いぞ……諏訪」

残った町田は、フウと大きなため息をつきながら呟いた。

そんな町田の呟きも知らず、諏訪は明日に向けて、もう一度気合いを入れなおしていた。

「よしっ、やる気出てきたっ」

平凡に生きてきた諏訪の運命を変える人物が、明日待ち受けているとも知らず―――


第2章へ進む

関連記事
スポンサーサイト



↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ  3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【PERFECT BLUE 01-04】へ
  • 【PERFECT BLUE 02-01】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【PERFECT BLUE 01-04】へ
  • 【PERFECT BLUE 02-01】へ