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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-2:美しい棘

PERFECT BLUE 02-08

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宇賀は、結局保健室までついて来た。
ドアを開けようとした皆藤は、まだニコニコと傍に居る宇賀に睨みをきかす。

「お前、どっか行けよ。俺これから寝たいんだよ」
「いいじゃん。寝るまで子守唄でも歌おうか?」
「宇賀」
「アハッ、冗談冗談。怒らないでよ智司」

陽気な笑顔で、宇賀は楽しそうに笑う。
皆藤は大きなため息をついて、髪を掻いた。

「じゃー、智司」

笑顔のまま小首を傾げて見つめてきた宇賀の瞳には、少しだけ意地悪な色が浮かんでいて。

「彼氏にヨロシクね」

そっと耳打ちをして、皆藤の頬にチュッとキス。
そして宇賀は、クルリと踵を返して去って行った。

「ったく……」

ボソリと呟いてから、皆藤は保健室のドアを開けた。




諏訪は、教室に残っていた。
始業式が終わって教室に戻っても皆藤の姿はなく、バッグは置きっぱなし。ホームルームが終わった今も、彼は戻って来ない。

「木下」

最後に教室を出ようとした木下に声をかけると、

「はい?」

木下はすんなり振り返った。

「あのさ、ちょっといいかな」
「……俺?」
「うん」

ちょいちょいと手招きした諏訪に首を傾げながらも、木下は近寄ってきてくれる。
そして木下は、教卓に立っていた諏訪の目の前の、武藤の机に腰をかけた。

「皆藤のことなんだけど……」
「皆藤?ああ、うん。何?」
「アイツ、どこに居るか分かるか?」

DOQである彼ならば分かるかもしれない、諏訪はそう思ったのだ。
しかし、木下は「ん~」と苦笑いで首を傾げる。

「どうかなぁ。保健室が殆どだけど、保健室なら、集会が終わったときに俺らが迎えに行けばホームルームには戻ってきたりするんだよな」
「今日は?」
「今日は保健室には居なかったんだよね」

保健室じゃなかったら俺たちも分からない。木下は、そう続けた。

「そっか……。分かった、ありがと。ゴメンな?引き止めて」

諏訪は、仕方ないかというようにため息をつき、木下に笑顔で礼を言う。
すると木下は、また微妙な表情を見せた。

「どうした?」

何か言いたいのだろうかと諏訪が首を傾げると、

「なあ、先生」
「ん?」
「先生は、俺たちのこと、怖くねぇの?」

いつの間にか机の上で胡座をかいていた木下が、不思議そうに諏訪を見上げてきた。

「はい?」
「だって、知ってんだろ?俺たち4人が何て呼ばれてるか」
「……え、ああ、まあな」
「そのくせ、全然普通に接してくるじゃん。何で?」

どうやら木下は、ずっとそのことが気になっていたらしい。
品定めするでもなく、真剣に訊いてくる木下の目。だから諏訪は、きちんと答えてやろうと思った。

「ぶっちゃけ、最初聞いたときは、怖いと思ったよ」

正直に、昨日の自分の心象を打ち明ける。

「でも、落ち着いていろいろ考えていた中で、思い出した言葉があるんだ」
「言葉?」
「木下さ、"袖振り合うも多生の縁"って、知ってる?」
「袖……ん~、あるような無いような…」
「仏教的な考えから出来たことわざで、じいちゃんがよく言ってて俺も好きになったんだけどね」

言いながら、諏訪は黒板に"多生(他生)の縁"と書いた。

「多生(他生)っていうのは、輪廻のことを指してるんだけどさ。
要は、見知らぬ人と道でたまたま袖が触れあうようなちょっとしたことも、決して偶然なんかじゃない、前世からの深い因縁がもたらした結果だ。っていう意味になる。人と人との縁の大切さを意味することわざなんだ」
「縁…」
「うん。だから、すれ違うだけの人との間にも縁があるっていうなら、同じ学校で担任と生徒として一緒に過ごすことになるなんて、前世ですっごいつながりがあったってことじゃん?」

もしかしたら親子や兄弟だったかも、と諏訪は笑顔を見せる。

「輪廻転生なんてものが本当にあるかどうかなんてわかんないし、仮にあったとしたって何も覚えてないけどさ。なんかそういうのってロマンを感じないか?
壮大な歴史の中で、俺たちはずっと、何かしらの縁で繋がっていたかもしれないなんて」

昨晩ずっと考えて出たそんな結論を、そんな縁があるのなら素晴らしいと思ったあのワクワク感を、木下にも少しでも味わってもらえたらと諏訪は思う。

「もちろん、前世は人間じゃなかったかもしれないぞ?俺は馬で、木下が王子だったかもしれない。でもきっと、木下に一番大事にされた馬だと思うぞ。真っ白で賢い馬。だって俺、王子の来世である今はさ、担任になれたんだから」

説教臭い言い回しが苦手な諏訪にとって、ついついこうして脱線してしまいたくなる。
しかしそんな付け足しが妙に気に入ったのか、木下がプッと笑った。

「それじゃ寧ろ逆転されてんじゃん。王子、馬に負けてんじゃん」

言われてみればもっともで、諏訪も笑いながら「悪い。ついつい負けず嫌い根性がね」と頭を掻けば、木下がまた笑った。
木下が本当に楽しそうに笑うので、諏訪はこのまま彼とバカ話をしていたいと一瞬思ったのだが。今後も彼が笑顔でいてくれるためにも、彼が投げかけてきた質問に最終的な結論を伝えてやりたいと思い話を戻した。

「とにかくさ、たっくさんある学校の中でこの学校に入って、俺もここに採用されて、お互い2年F組に選ばれて……それってもう、すごい確率だろ?俺たちは縁あって出逢えた同士だと思うんだよ、やっぱ」

黒板の文字を消してから真っすぐと木下を見つめて、諏訪はゆっくりとそう伝える。

「そんなに貴重な縁を、先入観なんて無意味なもので無駄にしてくない、って思う。それが、俺が木下たちと他の生徒を区別しない理由」
「……先入観?」
「そ。先入観による思い込みってさ、マイナスしか生まないんだよ。七不思議とか都市伝説が良い例だ」
「都市伝説???」
「先入観が人の不安を掻き立てて、"そうかもしれない"っていう考えが"そうらしい"に変わって、最終的に"そうだ"になる。人間関係の悪循環も、それと一緒だよ」

悪循環はやがて、重大な亀裂を生み、時に争いをも生んでしまう。
昨日諏訪が丸岡をはじめ他の教師から訊いたDOQの情報は、彼らが先入観から作り上げたもの。そんなものは、弱虫の陰口と同じだ。
それよりも諏訪は、DOQと真っすぐ向き合っているであろう町田や串崎の言葉が信ぴょう性があると思っているし、だからといって彼らの言葉を鵜呑みにするわけでもなく、彼らのように向き合った上で決めたいと思うのだ。

「だから、木下とも他のみんなとも、たくさん話がしたいし、いろんなこと知りたい。俺のことも知ってもらいたい。自然にそうなれるようなクラスを作っていきたい」

教師との関係を諦めないでほしいと、ただ切に願う。それが、今日諏訪が実際にDOQを見ていて思った素直な感想だ。

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