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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-2:美しい棘

PERFECT BLUE 02-11

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ガラッ。
皆藤が教室のドアを開くと、視界に人影が入った。何気なく目をやり、それが諏訪だと気付く。

「どこ行ってたんだ」

教卓の椅子に座っていた諏訪が、立ち上がって近付きながら皆藤に話し掛ける。
しかし皆藤は諏訪を完全無視すると、真っ直ぐに自分の机に向かった。
机の脇にかけてあったバッグを取り、手にしていた本を中に入れて再び教室を出ようとする。しかしそれを、諏訪が制した。

「待て」

皆藤の肩を掴み、歩みを妨げる。
皆藤は仕方なく、立ち止まった。

「どうして始業式に来なかったんだ」
「………」
「帰りのホームルームにも戻ってこないし。それじゃ学校に来てる意味がないだろ」
「……意味?」

諏訪の言葉に反応した皆藤が、ゆっくりとこちら側を見た。
何の感情も見られない、ガラスのような瞳。それでいてとても威圧的。
しかし諏訪は怯まずに、皆藤を見つめる。
すると、

「意味…ね」

皆藤が口の端を片方だけ上げ、卑屈な笑顔を見せた。

「アンタの"学校に来る意味"って何だよ」
「え?」
「教師は知識を与え、生徒はそれを受ける。学校ってそういうモンだろ」
「………」
「違うのか?」
「……違うな」

皆藤の冷ややかな冷めた言葉に、諏訪の中にある熱い何かに火が点いた。
皆藤の両肩を掴み、彼を真っ直ぐ見つめる。

「もちろんそれもあるけど、それじゃ塾と何も変わらないじゃないか。
学校っていうのは、自分以外の人間と一緒に生活する場でもあるんだ。小さな社会だよ。
みんなと一緒に悩んで、一緒に解決して、一緒に笑って。そうやって、人間同士の信頼関係の築き方を体で覚えていく。学校っていうのは、そうやって社会に出る準備をするものだと思うよ」
「信頼関係?」

再び、諏訪の言葉に皆藤が反応した。
同時に、自分の肩を掴む諏訪の手をバッと振り払う。見た目よりもずっと強いその力に、諏訪は少し驚いた。

「教師は大人しく勉強だけ教えてりゃいいんだよ。それで金貰ってんだろ?それとも生徒の心に踏み込むとボーナスでも貰えんのか?」

いっそう低いトーンで吐かれた言葉と、相変わらず冷たい視線。さすがの諏訪も、思わず少しだけ怯んでしまう。
するとそれを鋭く読み取ったかのように、皆藤が鼻で笑って。それからグッと、きつい眼差しを向けてくる。

「先公なんて、ホストと一緒なんだよ」
「……皆藤?」
「少なくとも俺にはな」
「…なっ……」
「むしろホストよりタチが悪いんじゃねぇの?あいつらは客は金づるだって割り切ってるからな」

彼は、そう言い捨てて諏訪の横を通り過ぎる。

「ちょ…皆藤っ」

何だか悔しくて、気が付けば諏訪は、ドアを開けようとしていた皆藤を再び引き止めていた。

「ちょっと待て」

悔しさがあったのはもちろん。しかし、それと同じぐらい、この生徒が心配になったのも事実だった。
17歳かそこらでここまで頑なな彼は、一体どんな経験をしたのだろうと。
木下たちが心を開いている串崎でさえ、皆藤には手を焼いている。そして同じDOQの木下たちでさえ、皆藤のことを"何を考えてるのか分からない"人間だと言う。
しかしそこに、ヒントがあるのではないだろうか。それさえ分かれば、少しは彼への対処も出来るのではないだろうか。諏訪はそう思ったのだ。
しかし、である。

「アンタも分かんない人だな」

ため息混じりに言うと、皆藤はバッグを床に乱暴に下ろし―――突然、諏訪を壁に押しやった。

「……?!」

驚いて目を丸くする諏訪だったが。
しかし、もっと驚くことが起きてしまった。
その見た目からは想像もつかないほどの馬鹿力で、皆藤が諏訪の背中を壁に押し付けた直後。
気が付けば諏訪は、自分の唇を彼の唇で塞がれていたのだ。

「!!!」

諏訪は、驚き過ぎで硬直していた。
皆藤は深いキスはしてこないものの、唇を離す気配はない。
そしてそんな彼の強引なキスは、諏訪を一瞬だけトリップさせた。
あまりにも、甘美なキス……

「………」

皆藤が唇を離しても、諏訪は硬直したままだった。
すると皆藤は、スッと諏訪の耳元に唇を寄せ、そして囁く。

「これ以上のことされたくなかったら、下手なお節介はやめろ。仲良しごっこは他の生徒とやりな」

それはまるで、悪魔の囁き。
皆藤は体を離すと、諏訪の口元にそっと手をやり、ニヤリと笑う。それから何事もなかったかのようにバッグを再び手に取って肩にかけ、教室を出て行ってしまった。
残された諏訪は、そこから一歩も動けなかった。



教室を出た皆藤は、そのまま階段を下り、昇降口を出た。
そのまま駐輪所に停めてあるバイクのうち、真っ黒な車体の前で立ち止まる。
サドル部分を開けてヘルメットを取り出し、代わりにペチャンコのバッグを入れた。
バイクに跨ってエンジンを吹かしながら、ふと思い出すのは、ついさっきの諏訪との一件。

「……待ち伏せなんかしてんじゃねーよ」

思わず、声が漏れる。

『みんなと一緒に悩んで、一緒に解決して、一緒に笑って。そうやって、人間同士の信頼関係の築き方を体で覚えていく』

「言うだけなら簡単だよな」

吐き捨てるように呟くと、颯爽とバイクを走らせ校舎を出て行った。


バイクで出て行く皆藤の後ろ姿を、諏訪は教室の窓から見ていた。
さきほど重ねられた唇に、そっと手を当てる。
まるで、毒の入った棘に差された気分だった。
彼は、いつでもこうやって人を遠ざけているのだろうか。

「皆藤。何者なんだ…お前は……」

去っていく皆藤に、諏訪は呟いた。


皆藤は、ただひたすら街を駆け抜ける。
先ほどの自分の行動で、少しは諏訪が大人しくなるだろうと思いながら。
あんなに親身ぶったって、どうせその程度の人間だろうと。皆藤はそれを、嫌というほど痛感したことがあるのだ。
いつだって、心の中で彼は叫んでいる。

―――どうせ裏切るんだろ……

だから自分は、決して他人に手の内を見せたりはしない―――。


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