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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-3:氷の仮面

PERFECT BLUE 03-03

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職員室で朝礼を終えた諏訪は、教室に向かって歩いていた。
昨日のあの一件が、頭からずっと離れない。

『教師は大人しく勉強だけ教えてりゃいいんだよ。それで金貰ってんだろ?それとも生徒の心に踏み込むとボーナスでも貰えんのか?』
『先公なんて、ホストと一緒なんだよ』

冷たい瞳で、そう言い捨てた皆藤。
しかしそれは、目の前の諏訪に言っているというよりも、皆藤自身に言い聞かせているような気がして。だから、去っていこうとした彼を引きとめたのだ。
それなのに、彼は諏訪を襲うような真似をしてきた。

『これ以上のことされたくなかったら、下手なお節介はやめろ。仲良しごっこは他の生徒とやりな』

キスの後、彼が耳もとで囁いた言葉が、しっかりと鼓膜に焼き付いている。あの時感じた彼の吐息の冷たさも、しっかりと残っている。

"ふざけんな"

バイクで走り去っていく彼の後ろ姿を見ながら、そう思った。
彼は完全に自分をナメている。そしてそれに怯んだ自分は、そんな彼の思惑通りになったわけで。そのことが悔しくて仕方なかったのだ。

"少年院帰りだろうが何だろうが、負けてたまるかよ"

マンションに帰ってベッドに寝転がりながら、そう決心した。
しかし……

彼が強引に触れてきた唇に、手を当ててみる。
冷たい唇だった。毒気を含んだ棘に触れたようだった。彼は、何もかもが冷たく、毒気のある人間なのだ。
それなのに、彼にキスされた瞬間、自分は少しだけその毒に酔ってしまっていた。それも悔しい。
悔しいが……その毒がとても甘美だったのは事実。
偏差値80越えの天才が巧みに仕掛けた罠は、確実に諏訪を捉えたのだ。

「……違う」

教室が見えてきた直後、諏訪は呟いて立ち止まった。

そう、違う。
自分は、彼の罠になど嵌まってはいない。
彼の持つ異様な空気に、圧倒されていただけだ。

あんなに魂のない人間を、見たことなかったから。
まるで精巧な機械で作られた人造人間のようだと思ったのだ。もしくは、別の世界の人間なのではないかと。
整った顔立ちも、細いが均整の取れた体も何もかも。頭のてっぺんから爪の先まで、完璧なまでに彼からは温度を感じない。ガラス玉のような瞳は何も映さない。

しかし彼だって、生身の人間なのだ。
17歳の、まだまだ未熟な未成年なのだ。

「負けないからな…皆藤」

誰にでもなく、強いて言えば自分に言い聞かせるように呟いて、諏訪は教室まで真っ直ぐ歩きだした。


「おはよっ」

ドアを開けるなり、諏訪はいつもの陽気な笑顔で教室に入った。
中には、すでに12名の生徒が登校しており、だいたいの生徒が何人かで固まって話をしたりしている。諏訪を見るなり、生徒たちも「先生、おはよ~~」と元気な声を返してきた。

「ほら、席につけ~。チャイム鳴っただろ?楽しいお喋りタイムは終了!」

冗談交じりに叱るような口調を発すれば、生徒たちも笑いながら各々の席に着いていく。
諏訪は教卓に立ち、名簿を広げた。
教卓には、昨日浜島がくれた席表をテープで綺麗に貼ってある。昨日皆藤を待っている間に、諏訪が貼ったのだ。そこに一度目を通し、教室を見渡す。昨日の点呼で名前と顔は殆ど覚えたが、一応確認のための行動だ。
名簿を見るふりをして、チラリと、諏訪は窓際の最後尾に視線をやった。皆藤が、刺すような視線を自分に向けてきているのを感じたからだ。きっと、昨日の今日で、諏訪がどんな行動に出てくるかと思っているのだろう。

―――お前の思い通りになんてならないんだからな

心の中で宣戦布告をしてから、視線を名簿に戻して。

「ま、全員揃ってるけど、一応、出席とるからな」

断りを入れて、点呼を始めた。

「秋本」
「は~い」
「おしっ。おはよ~マイケル」

ニコッと笑いながら言うと、秋本が楽しそうに笑う。生徒たちも笑っている。生徒たちとコミュニケーションを図るためにも、出席のときは必ず生徒の顔を見て、そして"おはよう"に加えて名前やニックネームを呼ぼうと、諏訪は決めていたのだ。

「麻生」
「はい」
「ん。おはよ~麻生。
次、石原」
「はい!」
「今日も元気だな~。おはよ~柊ちゃん」
「アハッ」

笑いながら、石原が隣の富永や斜め後ろの木下に、「柊ちゃんだって~~」と嬉しそうに訴えている。富永は、「よかったね~」と笑顔。木下も笑っている。今日も、やっぱり石原は甥っ子(小学生)に似ていて可愛らしい。諏訪は思わず微笑んだ。
そして―――

「皆藤」

その名を呼んだ。
しかし、返事が来ない。

「皆藤智司」

もう一度呼び、皆藤の顔を見る。
すると、先ほどから挑戦的な視線を諏訪に向けていた皆藤が、そのままの顔で、

「……はい」

返事をした。

「おはよう、皆藤。っつうか、1回で返事してくれよ」

他の生徒たちに向ける笑顔を崩さないように努めて、諏訪はそう言った。
しかし皆藤は、全く表情を変えずに、

「はい」

やはりそれだけ答えた。
そこには、余裕の笑みさえ浮かべて。

瞬間、諏訪の背筋に冷たいものが走った。
昨日のことがあっても何も変わらずに接した自分に対し、この生徒は表情を変えない。諏訪がどう出てくるか、さきほどから監視していたにも関わらず。
そしてこの笑顔。氷点下のように冷ややかな、氷の微笑……

「っと……木下」

しかしすぐに諏訪は我に返ると、木下の名前を呼んだ。

「はい」

端正な顔を優しく微笑ませて、木下から返事が来る。少しだけ、自分に歩み寄ってきてくれている笑顔だ。
昨日、皆藤を待ちながらした会話どおり、木下は確実に諏訪に歩み寄ろうとしてくれている。

「おはよう、王子」

諏訪も笑顔を返すと、木下は石原と顔を合わせて笑ってくれた。おかげで、皆藤の時の緊張がほぐれた。生徒にも、少しだけ笑顔が戻った。

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