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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-3:氷の仮面

PERFECT BLUE 03-04

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他の生徒にも、諏訪はひと言ずつつけて出席を取り続けた。
昨日は一度で返事をしてくれなかった桜沢や真鍋も、今日は一度で返事をしてくれた。諏訪が「おはよ~桜沢。いい名前だからもう一回呼んでいい?」とか、「おはよ~ナベ。今日も俺のファッションリーダーだ」と親しみを込めて言葉を返せば、2人はそれに対する返答はしないまでも、「アホくさっ」と呟きながら笑ってくれた。
その中で皆藤は、いつの間にか諏訪から窓に視線を移すと、無言で教室内の空気から存在を消していた。

皆藤は内心、舌打ちをしていた。
昨日と変わらず、他の生徒にするように自分に接してきた諏訪に、ずい分と厄介な人間がこのクラスの担任になってしまったと、予想以上に面倒な奴かもしれないと、こんなとき妙に働く直感が警鐘を鳴らしているのだ。
去年の担任や他の教師のようにしょっぱなから自分に怯む様子がないのは、昨日の時点で分かっていたこと。
もちろん今までだって、諏訪のように自分に歩み寄ろうとする教師もいた。しかし彼らだって自分が少し凄味をきかせれば、次の瞬間からは彼らの方から遠ざかっていく。昨日のような大胆な行動にまで出なくても、皆自分を恐れて近寄らなくなるのだ。"この生徒には、関わらない方がいいだろう"と確信して。
唯一串崎はあまり自分を恐れている様子もないが、彼の場合、自分の担任ではないので近寄ってはこない。だから皆藤は拒絶する行動に出る必要もない。それに串崎だって、自分を警戒していることは確実である。
それなのに……
諏訪は、まだ懲りていない様子だ。今までで一番の暴挙をしたのに、それでもまだ自分にあの笑顔を向ける。同じ態度で接してくる。それが、諏訪からの"挑戦状"なのだと、皆藤は正確に気付いていた。
だから、

"ムカツク野郎だ"

そう思いながら、名前を呼ばれた瞬間、諏訪に冷たい笑顔を送ったのだ。

"ふざけんなよ"

と言う代わりに。
すると一瞬だけ、諏訪が表情を固まらせた。皆藤にはそれで満足だった。
彼も、全く自分を恐れていないわけではないのだと分かったから。
あと一押しだろうか―――窓を眺めながら、皆藤はそんなことを考えていた。



「皆藤」

保健室に行こうとして教室を出た途端、皆藤は誰かに呼び止められた。
振り向かなくても分かる。今自分が一番、聞きたくない声。
心の中で舌打ちをしながら、皆藤は振り返って立ち止まった。前方のドアから出て来た諏訪が、皆藤に近付いてくる。

「どこ行くんだ。すぐにホームルーム始めるぞ」
「………」
「おい」
「具合悪いから、保健室行ってきます」

無視をしたまま歩いてもどうせこの教師は付いて来るか腕を掴んで引き止めるだろうと思ったから、皆藤は表情を変えずにそれだけ答えてやる。
だが、

「だったら俺に断ってから行け。何も言わずに教室出て行ったら心配するし、だいたい失礼だろ」

しつこく食い下がる諏訪に、皆藤は苛立ちが募った。
放っといてくれ……。

「これからもそうだ。俺とか科目担当の先生がいなければ、クラスメートに伝えるとか」
「………」
「無断で居なくなるのは、」
「アンタ、まだ分かんねぇのかよ」

諏訪の説教に頭に来て、皆藤は小さい声で呟いた。
そして、言葉を止めた諏訪を見上げる。

「昨日俺が言ったこと、忘れたのか?」
「……覚えてるよ」

諏訪も、しっかりと皆藤を見た。2人で睨み合う。

「でもそれは、皆藤の言い分で、俺の考えじゃない」
「………」
「皆藤も他のヤツらも、俺の生徒であることには変わりない。だから、俺は同じように接する」

皆藤の刺すような視線に怯まず、諏訪は勝ち気に出た。
意思の強そうな瞳と眉が、真っ直ぐに皆藤を見ている。皆藤が一番嫌いな視線だ。自分より10cm近くは高そうな位置から見下ろされていることが、また癪に障る。

「ムカツクな…」

呟いて、皆藤はフッと笑った。
その笑みに、やはり諏訪はちょっと表情を強張らせた。
それを満足気に見遣り、皆藤は諏訪の顎に自分の右手を伸ばした。

「……?!」

さらに表情を強張らせ、諏訪が、きりりとした眉をグッと潜める。皆藤は、その手の親指で諏訪の唇に触れた。
諏訪の全身に緊張が走ったのが、親指から伝わってくる。

「俺に近付くと、酷い目に遭うよ?」
「………」
「自分の身は、自分で守りな」

いつでも自分に言い聞かせている言葉を諏訪に吐くと、皆藤はその場を後にした。

残された諏訪は、呆然と立ち尽くしていた。保健室に向かって歩いていく皆藤の後ろ姿を見つめながら。
やがて、チャイムの音で我に返った。
皆藤は保健室に入ってしまったのか、すでに廊下から姿を消している。
触れられた唇に触れてみる。
彼が自分に向けてくる氷の微笑みと、さきほど唇に触れられて感じた電流。どちらもそれは、諏訪の神経全てを奪うような感覚だった。
そんな反応を愉しんでいるようだった皆藤。そう、それはまるで、誘惑しているようで……

"あの生徒に関わってはいけない"

心の中で、自分が警告してくる。
しかし同時に、

"あの生徒を見放してはいけない"

もう1人の自分が、そう語りかけてくる。
きっとどちらも、正論なのだろう。それならば、関わらない方が安全であることは確かだ。きっと他の教師たちも、そちらの道を選んだのだろう。
しかし、敢えて自分は危険な道を選ぼうと諏訪は思った。
このまま彼と関わらないという気持ちよりも、あの生徒を、見放してはいけないという気持ちの方が強いから。もう少し、努力してみようと決めたのだ。

そこには、出口の見えない迷路が待ち受けるとも知らず―――

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