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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-3:氷の仮面

PERFECT BLUE 03-06

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「うそ……」
「だから、DOQの気持ちが分かるっつーかさぁ。DOQの兄貴って感じかな~、俺」
「元ヤンなんだ……」

何で…??と、諏訪が泣き出しそうな目をしている。

「今、"お前もかよ"って思ったでしょ」
「正直……」
「ハハハっ。正直でいい奴だねお前。やっぱ諏訪おもしれ~~」
「俺は全然面白くないんですけど。え、冗談なんですか?」

冗談だと言ってくれというように、肩を落として諏訪が眉を下げる。

「いや、マジなんだけどね?」
「マジなのかよ…」
「まあでも、ワケあって更生したのよ、俺。
で、心入れ替えてちゃんと働きながら勉強してさ、さくっと高認(高等学校卒業程度認定試験)とか合格して、大学4年行かなくても先生になれるのが養護の先生だったから専門学校行ったんだ。それで免許取ったの。全部ストレート。何気にすごくね??」

ピっと人差し指を立て、町田が諏訪に得意気に笑う。
すると諏訪は、さっきまでとは打って変わって、尊敬の眼差しを町田に向けた。

「何気にどころか、めっちゃすごいっすね……」
「でしょでしょ?」
「いや、マジで。尊敬します」
「分かってるって。俺ってば偉人さんなのよ」

ハハンと笑って、町田は麦茶をすする。どこまでも真っすぐで素直な諏訪に対する自分の好感度は上がったが、いちいち言う必要もないのでやめておいた。
諏訪も諏訪で、自分の偉業をジョークまじりに答える町田に、紆余曲折を経てここまでやってきた努力家の彼に、今まで以上に大きな好感を持った。
しかし、すぐにムッとした顔をして町田を見る。

「それはそうと、町田さん」
「ん?……何、怖い顔して」
「皆藤のことですけど」
「皆藤?ああ、俺を褒めるのはもう終わりで、話を戻すわけね。何?」
「アイツが保健室にそんなに頻繁に来るの、何で黙って許してるんですか?入学当初から知ってるわけでしょ?この2年間、ずっと見逃してやってるってことですか?」

皆藤はサボリのためだけに保健室に来ている。それを黙って見過ごすとは、いくら尊敬している相手でさえムカつくというものだ。それが、自分のクラスの生徒、しかも最大の問題児であれば尚更。

「皆藤ねぇ。別に俺も黙ってるわけじゃないけど?」

町田が、さらりと返してくる。
しかし諏訪は引き下がるわけにはいかない。

「なら、キツく言ってくれてます?」
「ん~、でもさ、やる気ないのに無理矢理授業出ろってのもねぇ。どうかと思わない?」
「思いません」
「言うねぇ」
「勉強できるから授業出ないでいいなんて、不公平です。それに、高校に来てる意味がない」

納得出来ないという表情で、諏訪は食い下がってくる。
仕方なく町田は、事情を説明してやることにした。

「いや、ね。諏訪」
「何ですか?」
「別に、毎回サボるために保健室来てるわけじゃないんだよ」
「?」
「皆藤はね、体が弱いんだ」
「え?」

キツく町田を睨んでいた諏訪が、ふと表情を戻した。
町田は苦笑しながら、

「これ、秘密ね。皆藤本人以外では、養護の俺と親友の宇賀しか知らないことだから。知られんの本人嫌がるからさ」

と、口元に人差し指を立てた。

「別にどこが悪いってわけじゃないよ?単に虚弱体質っつうか、すぐ疲れちゃうんだよ。不良のくせして、笑っちゃうよな。だから皆藤自身も知られたくないんだろうな。カッコわりーって思うんじゃん?」
「……はあ」
「あんまり無理して体壊したりしちゃったら大変だろ?それを自分でも分かってて、しんどくなると休みに来るわけ」
「……そうなんですか?」
「うん。それに、授業が始まればそれなりに出てるよ?だから勉強出来るんでしょ。体育とか音楽とか、要はみんなで授業ってのを敬遠してる感じ」
「………」
「もちろん、普通の授業だってサボりに来る時もあるけどさ。保健室に来る理由の半分ぐらいはサボリかもね~」

困った困った。そう続けて、町田は呑気に笑う。

「まあそういうことだからさ、ある程度は大目に見てやってよ」
「ん~…そうですかねぇ」

町田の提案に、諏訪は少し渋い顔をしている。
コップに視線を落とした町田が、ふと、呟いた。

「……寧ろ最初は、真面目に出てたよ」
「え?」

町田の呟きがほとんど聞き取れず、諏訪は訊き返した。
しかし、

「ん?独り言」

そう言って、町田はまた明るく笑った。
何となく腑に落ちなくて諏訪が首を傾げていると、再び保健室のドアが開く。

「町田ぁ~居る~~?」

間延びをした声と共に、串崎が入って来た。そして、長いすに並んで座っている町田と諏訪に気付く。

「あれ?もしかして真剣な話してた?」

言葉とは裏腹に、楽しそうに近付いてくる。俺も話に入れて、といったところだろうか。
そんな串崎に、町田が笑った。

「そうだよ、真剣な話してたんだよ。俺が元ヤンで、高校中退だって」
「あ、諏訪知らなかったんだっけか。そうなんだよ、コイツ元ヤンなんだよ。怒らせると怖いよ~~。敵に回さないように気を付けような?」

町田に聞こえるようにわざとらしくコソコソと、串崎が話しかけてくる。諏訪は曖昧に笑ってみせた。

「生徒の憩いの場である保健室の先生が、ハマの元番長なんだから」
「町田さん、横浜出身なんですか?」
「そ。イメージと違った?」
「いや、寧ろイメージ通りっすね」
「町田祥の名前を聞くと、ハマでは鬼が笑ったんだろ?町田」
「あー赤鬼さんはね。でも青鬼さんはなかなか手強かったかなー。赤鬼さんと違って、ツノが2本あるからさー」

そう答えると、町田は懐かしの童謡『赤鬼と青鬼のタンゴ』を歌い出す。それを、町田の世界観について行けずポカンとしていた串崎と諏訪が「あー、そういうことかー」と、意味を理解して笑った。
せっかくの美貌を無駄にして盛り上がる3人は、"生徒の憩いの場である保健室"を、放課後とはいえ"深夜の居酒屋"に変えてしまっている。

「つうかこの男、高校中退といえど、頭いいからムカつくんだよ」
「あ、さっき聞きましたよ。独学で高認合格したんでしょ?養護の免許もストレートで取ったって」
「そうそう。しかも高校は県立Y高校ね」
「え?!そうなんですか?インテリヤンキーじゃないすか」

諏訪が思わず素直に発言してしまえば、町田と串崎がまた爆笑した。

「そうなんだよ~俺はインテリヤンキーだったのよ。こんなところもDOQと共通でしょ」

だからアイツら、他人とは思えなくてね。と、町田は相変わらずDOQの名前をさらりと出して平然としている。
町田がDOQを全く恐れず寧ろ好意的に見ている理由が、諏訪は何となく分かった気がした。町田は彼らと自分の過去と重ねて見ているのかもしれないと、だから彼らが道を外れたくなる気持ちが分かるのだろうと。
しかし本当にそれだけで、全てが納得できるわけでもない。皆藤のように複雑すぎる生徒でさえ、保健室に入り浸るほど町田に気を許せるようになる理由が、はたしてそれだけなのだろうか。
それは、串崎も同じことを疑問に思うようで。

「ウチじゃ町田ぐらいだよな。皆藤とも打ち解けてんの」

不思議そうに首を傾げる。
そんな串崎に町田は特に言葉は返さず、陽気な笑顔を見せて笑った。

「で、串崎は何しに来たの?今日は、あ、今日も、遊びに来ただけ?」

さりげなく町田が話題を逸らせば、串崎はそこには気付くことなく、健康診断のために3年F組の生徒名簿を渡しに来た事を思い出した。
そして諏訪も、職員室に生徒名簿を置き忘れていたことを思い出し、慌てて教室へ取りに帰った。

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