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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-3:氷の仮面

PERFECT BLUE 03-08

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授業が終わり、ホームルーム前の5分ぐらいの休憩時間。帰り支度をしながら、生徒たちがわいわいと騒いでいた。
即行彼女に電話をかけた秋本が、隣の武藤に頭をはたかれたり、谷原からは「マリエ~、だってぇ」と楽しげにはやし立てられている。それを藤崎が笑いながら見ており、谷原の机に腰掛けていた富永も「マイケルの彼女?美人?ブス?」と独自の毒舌で笑いながら見ている。
黒板の文字を消しながら楽しそうに会話をしているのは、麻生と石原の癒し系コンビ。
そしてDOQは、後ろでそれぞれ帰る準備をしている。
そんな中で、浜島が生徒たちにプリントを配って歩いていた。今日のホームルームで使うから、と。浜島は懐っこい笑顔でクラスメート1人1人と会話をしながら、ゆっくりとプリントを配っている。

「あれ、今日のホームルーム、ちょっと長くなるとか言ってたっけ」

浜島の姿を見ながらふと気付いた木下が、誰にともなく3人に話し掛けた。

「ああ、そういえば諏訪、そんなこと朝言うてたなぁ」

桜沢が思い出したように答えると、真鍋が顔をしかめた。

「メンド……俺今日、バイトやのに」
「え?ナベは来人と同じとこで、まだやっとんの?」
「やっとるっちゅうねん。ボケたんか、お前は。辞めたのは来人の方や」

桜沢が、あれ?というように首を傾げると、真鍋がそんな厳しいツッコミを入れる。木下がそれを見て笑っている。

「そうそう俺の方だよ。でもナベ、店に馴染んでるのは相変わらずその髪の色と服装だけっぽいな。楽器のことは半年経っても全然分かってないんじゃん?店長から聞いたぞ」

そんな正論をストレートにぶつけられて、真鍋はムスッとした表情をしてみせた。
すると、無言で本を読んでいた皆藤が、スッと立ち上がった。

「あ、保健室?」

ホームルームが長くなるという事実を知って保健室にサボリに行くのだろうと察した真鍋が、声をかける。

「俺も行くわ。お前ら、適当に理由つけといて」

木下と桜沢にそう告げ、真鍋が立ち上がる。
するとそこに、ちょうど浜島がやってきた。

「ナベ、皆藤くん。ちょっと待って」

遠慮がちに声をかけてくる。
浜島は木下と桜沢にプリントを渡すと、真鍋と皆藤の方に近付いた。

「今日のホームルームに使うプリント。校内アンケートで今日中に提出なんよ。ホームルーム中に書いてもらってその場で回収したいから、ちゃんと出てくれる、かな?」

一生懸命に2人と話そうとしている浜島は、プリントを持つ手にギュッと力がこもっており、プリントに少しシワが寄ってしまっている。
木下と桜沢は、そんな浜島と2人を交互に見ている。
真鍋が、浜島を完全に無視しようと顔をそむけた。
途端に浜島の顔が、さっと曇る。
しかし……
皆藤は違った。
普通こういうときには必ず真鍋のように無視して立ち去ってしまうのだが、彼はスッと浜島の前に手を出したのだ。

「……え?」

行動が読めずに首をかしげた浜島は、自分がプリントを手にしていることを思い出し、慌てて皆藤に1枚渡す。皆藤は素直にそれを受け取ると、黙って席に戻り、座ってしまった。

「……んやねん」

"まただ"というような顔をして、真鍋が舌打ちしながら呟いた。そして自分も仕方なく、浜島に向けて乱暴に手を出す。遠慮がちにプリントを差し出してきた浜島からそれを受け取って、真鍋は不機嫌そうに席に着いた。
浜島は、自分に目を合わせようとしない真鍋に悲しそうに目を伏せながら席に戻って行き、石原と麻生がニコニコと近寄って来ると、サッと切り替えて笑顔を向けた。

「ナベお前、ああいう態度とるなって言ってるだろ」

木下が、咎めるような口調で真鍋に声をかける。

「ハマとお前、幼なじみなんだろ?何でそんなにアイツを無視すんだよ」
「そうやで。最低でも、言葉に答えるぐらいはしてやれや」

桜沢も、真鍋を嗜める。いつも気になってしまうのだ。
2人が幼なじみというのは、木下も桜沢も真鍋本人から聞いた事実。去年の4月、浜島が真鍋に『同じクラスやね』と話し掛けており、それが気になって、真鍋とつるむようになったある日、訊いたのだ。当時から真鍋は浜島を避けていたものの、木下が訊けばそれなりに事情を答えてくれた。2人とも大阪出身で、小学校が同じだったと。中学2年生のときに真鍋が両親の離婚によって東京に引っ越して、その翌年、浜島も親の仕事の関係で同じ地区に引っ越してきたのだと。

『それってもの凄い確率だよな。お前ら、運命の絆ってやつ?』

木下は感心しながらジョーク混じりにそう言ったが、真鍋はその時、

『ガキの頃の話や。もう関係ないねん。今はもう、友達とも幼なじみとも俺は思ってへんし』

とサラリと返しただけだった。
だが、関係ないようにはどうしても思えないと、木下も桜沢も思っている。浜島は必死で真鍋に近付こうとしているし、真鍋に無視されるたびに、見ているこっちが切なくなるような悲しい顔をする。幼なじみを真剣に心配している顔だ。

「ハマがあんなに心配してくれてんだから、もっと接し方があるだろ」

木下はいつものそのセリフを真鍋に吐き、

「るさい。お前と石原とは違うんじゃ。もう関係ないねん。俺は仲良くする気ない言うてるやろ」

真鍋も木下と桜沢の説教に対していつものように邪険にあしらってから、皆藤を見た。皆藤は、黙って本を読んでいる。
いつもそうだ。と真鍋は思う。
皆藤は浜島に対して、一見他の人間に対する態度と同じだが、彼の言うことに逆らったことがないのだ。
いつからか、彼はそんな風になっていた。去年だって、サボろうと席を立っても浜島がひと言"次のホームルームは出て"と言えば、皆藤は必ずと言っていいほど出席する。もちろん、浜島も皆藤に近付くのは躊躇われるのか、彼が直接皆藤にそんなことを言うのはあまり無いことだが、言えば必ず皆藤は無言で従うのだ。

「皆藤……」

何となく、皆藤の名前を呼ぶ。すると皆藤が、すんなりと顔を本から真鍋に向けた。

「……お前さ」
「……何」
「…いや、何でもないわ」

何かを言いかけて、真鍋はやめた。

「お、プリント回ってるか?ホームルーム始めるぞ!!」

タイミングよく諏訪が教室に入って来て、真鍋は皆藤から視線を離した。

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