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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-4:ダンデライオン

PERFECT BLUE 04-04

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[2]

「ま~ちださ~ん」

授業が終わって休み時間。F組の授業へ行く前に、諏訪は保健室に寄った。

「な~んですかぁ?諏訪さ~ん」

諏訪の口調を真似て、町田が笑いながら答える。
そんな町田に諏訪も笑い、そしてふと、ベッドの方に目を向けた。
遮光カーテンは全て開いており、無人の2つのベッドが見えている。皆藤は保健室に来ていないようだ。

「何、皆藤?今日はまだ来てないよ?珍しく、今日は全部授業に出るつもりなのかね」

今日は雨かもな。笑いながら、町田がパックのコーヒーを飲む。
ベッドから目を離し、諏訪は長いすの方へ向かった。

「だといいんですけどね。次、俺が授業なんで」
「化学室?」
「いえ、今日は教室で授業です」
「ふうん。お前の授業、面白いらしいな?」
「え?」

嬉しいことを言われて、諏訪の顔がパッと明るくなった。

「お前のクラスの生徒が口揃えて言ってた。もちろん他のクラスの生徒もね」
「ホントですか?」
「うん。内容も興味持つような題材を挙げて説明してくれるし、話が楽しいってさ。お前の授業が一番面白いって言ってたよ?串崎の次にね」
「じゃあ二番じゃないですか」

鋭くつっこんで諏訪が笑う。「あ、そうも言うね」と、町田もアハッと笑った。

「俺も諏訪の授業、見てみたいな~。今度チラッと見に行ってもいい?」
「いい?って訊かれて、いいよとは言えないですよ」
「そお?じゃあ今度、不意打ちするよ」
「それも嫌ですよ」
「分かった分かった。行かないということにしておくよ。恥ずかしがり屋さんだね~、諏訪ちゃんは」
「その言い方、絶対来るつもりですよね」

相変わらず天邪鬼な町田に諏訪は"やれやれ"と思いながらも、嬉しい情報を流してくれた彼に少しだけ感謝した。さりげなく、元気になる言葉をくれるのが町田という人間だ。そういうところ、養護教諭に向いていると諏訪はつくづく思う。

「学校の授業ってさ、つまんねぇのばっかじゃん?教科書どおりっつうかさ。少なくとも俺にとっては、そうだったんだよね。どんな風にしたら楽しい授業になるわけ?聞きたいな」

今日も麦茶を淹れてくれた町田が、コップを渡しながらそんなことを訊いてくる。諏訪は、"ん~"と首を傾げた。

「どうなんでしょうね。俺も分からないんですけどね。ただ、串崎さんに言われたんです」
「串崎?」
「はい。串崎さん、大学時代に家庭教師のバイトをやっていたみたいで。生徒がどうしても理解出来ない内容をどうすればいいかとか、いっつも考えてたみたいなんですよ」
「ほお」
「で、自分が大学の講義を受けていて面白いと思うときって何かなって考えて。それを授業に取り入れたらしいんです。そしたら皆が興味を持ってくれて、理解してくれるようになった、って……」
「なるほどねぇ」

大きく頷いて、町田が相槌を打つ。"串崎もやるじゃん"なんて思いながら。

「それ聞いて俺も、そうか!って思ったんですよね。で、自分が学生時代にどんな授業を面白いと思ったか、自分たちがどんな先生の授業を面白いと思っていたのか、考えてみたんです。それが、身近なものに例えたり置き換えたりして説明することなんですよね。そうすると、小難しい単語よりも頭に入りやすかったんですよ」

しみじみと話す諏訪の声を聞きながら、諏訪や串崎が生徒に好かれる理由が改めて分かるな、と町田は思った。
いつでも2人は、生徒と同じ視点で物事を考える。こうやって授業ひとつにしても、自分が生徒だったら何を望むか、自分が学生時代に何を教師に望んだか。それを踏まえた上で、今現在教師である自分たちは生徒にどうすればいいのか、どうしてやりたいのかを導き出す。

「諏訪は、太陽みたいなタイプの奴だな」

自然と、そんな言葉を漏らした。

「え?」

目を丸くして、諏訪が顔を向ける。

「自分に正直で、飾らない。明るくて元気で一生懸命で、真っすぐで純粋なんだ」

初めて会った時と変わっていない諏訪の印象を、町田が話す。

「その輝きを失わなければ、きっと諏訪は良い教師になれるよ。だからさ…」

言いかけて、町田は言葉を止めた。

"だから、皆藤のことを見捨てないでやってな"

そう言おうと思ったのだが、そんなこと養護教諭の自分が言うのはどうかと思ったのだ。校内では、皆藤と自分はあくまでも"保健室のせんせい"と"常連生徒"だけの間柄なのだから。
それに……言わなくてもこの教師は、皆藤を見捨てない気がしていた。自分の信念に真っ直ぐで意外にしぶとそうで良くも悪くも頑固な諏訪には、自分のクラスの生徒を見捨てるなどということが出来ないのだろう。諏訪と出会って数週間、彼と話していて、町田は諏訪という人間をそう分析している。

「だから、何ですか?」

諏訪が、町田が不自然に言葉を止めたことに首を傾げて訊ねてきた。

「え?あ、いや、だからね、頑張れよってことかな」
「え?ああ、はい。頑張りますよ?」

どこか腑に落ちない気持ちがありつつも、諏訪は頷きながら笑った。もともとミステリアスな町田だ。意味深な言葉をいちいち追っていたらきりがないと思ったのだ。
麦茶のコップを町田に返し、授業のために立ち上がる。そしてふと、窓に目をやった。
4~5日前までグラウンドの花壇の脇で綺麗に咲いていたタンポポの花が、もう綿毛になってしまっている。

―――もう、タンポポの時期も終わりか……

そんなことを思いながら、ふと、諏訪は1週間前のことを思い出した。
裏庭で1人、ポツンと咲くタンポポの花を写真に収めていた皆藤の横顔。そっとその花に触れ、見たこともない優しい表情をしていた彼。
あの日以来、彼のあの表情は諏訪の脳裏に焼きついて離れない。
相変わらず冷ややかで刺々しくて、まるで薔薇のような皆藤。諏訪のことも無視をするし、それでも強引に話し掛ければ、誘惑するような真似をしてくる。しかし諏訪は、あの日見てしまった皆藤の表情が見間違いだとは思えないのだ。

「町田さん……」

窓を眺めながら、町田に話し掛ける。

「ん~?」

デスクで仕事を再開しようとしていた町田が、再び顔を上げた。

「相手の本当の姿を見極めるのって、どうすればいいんでしょうね」
「……え?」

何の脈略もなく投げかけられた問いに、町田は諏訪の横顔を見つめる。
諏訪は、ジッと何かを考えるように窓の外を眺めたまま。
町田は、頬杖をつきながら、同じように窓に目を遣った。

「……難しいな」

フッと、笑う。

「強いて言うなら、自分がそうだと思う方じゃない?」
「自分が?」

諏訪が、窓の外から視線を外して町田に向く。町田は、諏訪に大きく頷いた。

「そう。相手の本当の姿なんて、たとえ本人が"こっちが本当の自分だよ"って言っても、きっと納得できないじゃん?だから、自分が"コイツの本当の姿はこっち"って思う方でいいんじゃない?」
「でも、それはどうやって分かるんですか?コイツの本当の姿はこっち、って」
「それは、直感でしょ」
「直感…」
「そう。自分を作ってる人っていうのはさ、必ずどっかで本当の顔を見せる瞬間があると思うんだよね。人間なんてみんな完璧じゃないんだから、完全に作り上げるなんて無理なんだよ。だから、そういう瞬間さえ見逃さなければ、きっと本当の姿を見ることが出来ると思う。そんで、その姿を見たとき、直感でわかるっていうか、第六感ってやつ?が反応すると思うんだよ」
「……町田さんは、そういうこと、あったんですか?」

何となく疑問に思って、諏訪はそう訊ねた。全てが町田の推測なのか、それとも実際に自分でそういう経験をしたからそういう理論を立てられるのか。どっちなのだろうと。
すると町田はニッコリ笑い、

「うん、あったよ」

きっぱりと答えた。
それは、諏訪にとって、とても心強い答えだった。だから、町田の理論を、自分も信じられる気がした。

諏訪が見た、皆藤のあの表情。普通の17歳の少年に見えた、優しいあの表情。あれは目の錯覚なんかじゃない。
そしてやはりあれが、彼の本当の姿ではないかと、諏訪は思うのだ。理由なんて無いけれど、第六感がそう言っている気がする。
だから、信じてみよう。彼のあの表情を信じてみよう―――諏訪はそう思った。

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