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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
1幕-4:ダンデライオン

PERFECT BLUE 04-05

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「あれ?今日は谷原と藤崎だけだったの?」

部活に少し遅れて来た諏訪は、グラウンドで写真を撮っていた2人に声を掛ける。すると、少し離れた場所でそれぞれ写真を撮っていた2人が、諏訪に気付いて近付いてきた。

「はい、1年生は今、研修旅行に行ってるんで」
「3年生は週末に模擬試験があるから部活どころじゃないみたいだし」
「へえ、そっか~。そういえばそんなこと言ってたかな」

諏訪は、ベンチに腰掛ける。谷原と藤崎も隣に腰掛けてきた。
部員5名と諏訪の呼びかけが効果を出し、写真部には1年生が7名ほど入部し、廃部の危機は免れた。12名と言えば、この学校では1クラス分の人数にあたるわけで、それなりに賑やかにもなった。
しかし当然、毎回部員全員が揃うわけではない。生徒にもそれぞれバイトやらデートやらの私情があるわけで、諏訪もプライベートは大いに愉しめという考えだから、うるさく言わないのだ。写真というのは、撮りたいと思うときに撮る、それでいいと思っている。だから、一応週に2回の活動日を設定しているが、他の日にも写真を撮っている生徒もいるし、活動日でも写真を撮る気になれなければ、諏訪や部員達と話だけして帰る生徒もいる。

「で?2人とも何撮ってたの?」

諏訪が、2人のカメラを覗き込んだ。

「陸上部の練習写真です。フォームを見たいから撮ってくれないか、って頼まれたんです。ちょうど今、一人一人のフォームを撮り終わったとこなんですよ」

諏訪の隣に座っていた谷原が、目の前で走っている陸上部の数名を指差した。

「俺は、体育館。周りの夕焼けがすっごい綺麗だな~って思って」

谷原の隣に腰掛けていた藤崎が、体育館を指差す。確かに、綺麗な夕焼けが体育館を照らしている。

「へえ。いい感じじゃん、2人とも。片や活動的な写真で、片や静かな写真で。おもしろいね」

諏訪が素直な感想を述べると、2人も「そうだね~。正反対だ」と互いに顔を見合わせて笑った。

「今日は、まだ撮ってくの?」
「いえ、俺は帰ります。これからバイトなんで」
「俺も帰ります。バイトじゃないんだけど、中学時代の友達と遊ぶ約束してて」
「そっか。じゃあ俺も帰るかな」

諏訪もグッと伸びをしてそう言うと、谷原と藤崎と一緒に立ち上がった。

2人と別れて職員室に戻った諏訪は、カバンを持って再び職員室を出た。
駐車場へ向かおうと渡り廊下を歩いていた時、中庭に見慣れた人影を見つけた。

「あ……」

そこに居たのは、紛れも無く皆藤だった。
中庭のベンチに座り、カメラを横に置いて缶コーヒーか何かを飲んでいる。
諏訪は、目的地を駐車場から中庭に変更した。



「まだ残ってたんだな」

辿り着くなり、いつも通り、にこやかに話し掛ける。
そしていつも通り、皆藤はチラリと諏訪を見ると、無言で視線を逸らした。

「あれ?皆藤って写真好きなの?」

本当は先週見たのだから知っているが、何も知らなかったのを装って隣に座る。それでもやはり、皆藤は無言のままだ。
しかし、

「あれ?これ自前?すげーな」

皆藤の横に置いてあったカメラに視線を映し、手を伸ばそうとすると、

「触るな」

それだけ言って、皆藤はカメラを反対側に置いた。相変わらず冷たい。
しかし、諏訪はメゲなかった。
信じることにしたのだから。先週自分が見た、皆藤の優しい横顔が彼の本当の姿だと。

「皆藤は写真が趣味なのか。俺も写真部の顧問だけど、何せ今まで何も知らなかったからさ、教えられてばっかなんだよね。でも、けっこう写真って面白いよな」

まずは一方的に、会話を広げてみる。しかしやはりというべきか、皆藤は隣で無言のまま。
それでも何かしら諏訪が話を振ってみようとしていると、不意に立ち上がって、その場を去ろうとした。

「待てよ」

後ろ姿に、諏訪は呼びかける。
皆藤は、立ち止まりはしたが振り向いてはこない。

「少しぐらい、俺と喋ろうよ皆藤」
「………」
「お前がどんなに俺を拒絶しようが無視しようが、俺は諦めないからな」
「………」
「お前の本当の姿は、そんなんじゃないって思ってるから」
「………」
「なあ、皆…」
「アンタ、面白いこと言うね」

無言を貫いていた皆藤が、振り返って笑った。
冷たい微笑み。
しかしすぐに無表情になり、

「俺の本当の姿って何?アンタに何が分かんだよ」

淡々と、抑揚のない声で吐き捨てる。
だから、諏訪も負けずに言い返した。

「何がって、何も分からないよ、皆藤のこと。皆藤は俺と会話しないから、俺が交流をもとうとしても逃げるから、俺は皆藤のこと何も分からない。
だから、分からないから、たくさん話したいと思うんだろ。自分の生徒のこと、知りたいと思って何がいけないんだ。俺が間違ってるのか?だったらどう間違ってるか教えてくれ。どんなことでもいい、皆藤が何を考えているのか、ちゃんと言葉に出してくれよ」

必死で、訴える。たとえ否定的な言葉であってもかまわない、それが皆藤の本心なら聞きたいと諏訪は思うのだ。
皆藤は、何も言い返さなかった。ただ無表情のまま、諏訪を見ていた。
そしてしばらくの沈黙の後、皆藤が不意に諏訪の方へ歩きだした。
諏訪の目の前で立ち止まって、座ったまま見上げてくる諏訪を真っすぐと見下ろしてくる。

「俺と、話したい?」
「………」
「俺のこと、知りてぇの?」

冷たくて美しい顔に真っ直ぐ見下ろされ、諏訪は言葉が出ないまでも強く頷く。
すると皆藤が、呆れたようにスッと目を細めて、

「自分の身を守りたいなら近付くな、って言ったのに……」

わざとらしく溜め息交じりに言ったかと思うと―――突然、諏訪の上に乗り上げてきた。

「……え?」

諏訪の体の両脇に立てひざをついて、背もたれに両手をついて。おかげで諏訪は逃れることが出来ない。
皆藤の顔が、近付いてくる。
唇が触れ合う一歩手前で、その顔がピタリと止まった。

「ここでこの間みたいなことしたら、ヤバいよな」

唇を諏訪の耳元に移動させ、皆藤が囁く。

「か、皆藤……」
「それでもアンタは俺とお喋りしたいの?」
「……」
「今日はキスだけじゃ済まないよ?」

諏訪の全神経を刺激する、甘い囁き。まるで悪魔が囁くように、皆藤が諏訪を誘う。

「やめろ……」

誘惑に精神を支配されそうになった自分を否定するように、諏訪は皆藤の体を自分から離そうと、彼の肩に手を置いた。
しかし皆藤の力はやはり強くて、中々逃れられない。

「皆藤!!」

ありったけの力をこめて、諏訪は皆藤を引き離した。

「何考えてんだっ!!」

その言葉と共に、パンッと乾いた音がして。
自分の手に痺れが走ったことで、諏訪は勢いで皆藤の頬に平手を食らわせていたことに気が付いた。

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