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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
1幕-5:駆け引き

PERFECT BLUE 05-04

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「「………」」

スマホを眺めたままジ~ッと考え込んでいる串崎を、彼と1人分ぐらいの間を空けて座っている諏訪と町田が観察している。

「いま、どういう状況なんでしょうね」
「“俺はいまどういう状況なんだ”っていう状況?」
「何か、怖いですよね」
「っつうか、キモい」
「何か言ったかよ、町田」

串崎が、再び町田の毒舌に反応する。
しかし“ドS養護教諭”の名をほしいままにしている町田は、串崎に睨まれても全然怖くないとばかりに、カカカと笑った。

「ったく、そんな顔、誰にも見せらんないね。せっかくのいい男が台無しだぞ?」
「その歯の浮くようなセリフ、やめろ」
「え~、何で?知ってるか?俺と串崎と諏訪、3人セットで“妹尾学園美形教師トリオ”って言われてるんだぜ?」

それが事実であることは、諏訪も串崎も知っている。よく、生徒たちに同じことを言われるから。だが町田が言うと、どうも軽くて嘘っぽく聞こえてしまって、

「それ、言われてる本人が言うことじゃないだろ」

串崎が呆れたように言うと、町田は「俺正直だからなぁ」と、またどこまでが本気かわからない言葉で笑った。

「それにしてもさ、串刺しがそんな風に…」
「串崎。く・し・ざ・き」
「お前、そういうときでもちゃんと突っ込んでくれるのな?」
「うるせぇ。お前も俺の名前でいじるのやめろ」
「だって俺の名前も諏訪の名前も、いじりようが無いんだもん。
あ、それで、それにしてもさ、串崎がそんな風にブッス~~としてんの、久し振りだよな」
「まあ、な」
「何、久し振りに恋人とケンカでもしたか?」

相変わらず、何気に鋭い発言。そしてやっぱりバカ正直な串崎は、ビクンと反応してしまった。

「図星か…。分かり易い人だね~お前は。この間も、って言ってもかなり前だけど、それが理由で不機嫌じゃなかった?」

笑いながら、町田は呆れ顔。串崎は言い返す言葉もなく、ムッツリと顔をしかめるだけだった。

串崎に恋人がいることは、町田も諏訪も知っている。町田は去年聞いたし、諏訪もこの間3人で近くに飲みに行ったときに聞いた。
ただ、写真を見せてもらったことはないし、歳下だとは言っていたが詳しい話はしてくれなかったので、相手がどういう人かは2人とも分からない。串崎は恋人の話をあまりしたがらないのだ。
しかし、相手の人とは串崎が大学の頃から付き合っているというのだから、それなりに真剣に付き合っているのだろうと2人は思う。だいたい、ケンカしてここまで落ち込むのだから、相当串崎はその恋人に惚れきっているのだろうと。

「串崎さんも、恋人とケンカして落ち込むんですね」

諏訪はそんなことを呟きながら、妙に納得顔をした。串崎は割りと飄々としている男だから、落ち込んだ顔を見たことがなかったのだ。
町田のように時々何を考えているのか分からない男ではなく、自分と似てバカ正直な串崎は、やはり落ち込んでも分かり易い、と諏訪は思う。ドンヨリとした気持ちを、全身で表現している。

「俺だって人間だもん……」

諏訪の言葉に、拗ねたように串崎が答えた。

「そうだよ諏訪。串刺しだって生きて…」
「町田、お前少し黙ってろよ」

すると、保健室のドアがガラッと開いた。

「ん?」

生徒かと思い、コイツもノックなしかよ、と若干思いながらも町田がドアに顔を向ける。つられて、諏訪も顔を向けた。
そして、2人で同時に声が出た。

「「皆藤??」」

2人の驚いた声に、串崎もドアの方向を見る。そして、現れた人物に唖然とした。
そこに居るのは、麻生を横抱きにした皆藤。両手で麻生を抱き上げているために、行儀悪くも脚でドアを開けたらしい。

「将史……?」

串崎が、呟きながら立ち上がる。
その言葉に、町田と諏訪はやはり同時に驚いて、彼を見た。
串崎が麻生のことを名前で呼ぶなんて、初めてだ。町田も諏訪も串崎も、生徒のことをふざけてあだ名や下の名前で呼ぶことはあるが、基本的には平等に名字で呼ぶ。
それなのに、あまりにも自然に、まるで言い慣れているかのように発せられた、その呼び名。しかし、串崎はそのことに気付いていない。そして諏訪も、麻生の顔が青ざめていることに気付くとそちらの方が心配になり、慌てて長いすから腰をあげた。

皆藤が、無表情で無言のまま麻生をベッドに下ろした。
下ろされた麻生は、大人しくベッドの上に腰掛けている。

「先生、コイツ相当熱があるみたいだから、頼むわ」

町田にチラリと視線を寄越した皆藤が、そんな風に声を掛ける。
諏訪は、自分たちには決して反応を見せない皆藤が町田に普通に話し掛けるのを見て、やはり皆藤は町田にだけは心を開いているようだと実感した。
それは町田が、養護教諭として才能があるからなのだろうか。町田は、どんな生徒でも心を開かせるテクニックを持っているのだろうか。ふと、そんな考えが諏訪の頭をよぎる。
諏訪がそんなことを考えていると、少し前に立っていた串崎が、具合悪そうにグッタリとしている麻生に駆け寄ったことに気付いてまた意識をそちらに向けた。
町田も諏訪も、串崎の反応に驚きを隠せない。

“コイツら、こんなに仲良かったっけ?”

そんな、同じ疑問が、2人の心に生まれた。
皆藤は、そんな4人の構図をジッと見つめている。

「大丈夫か?ずいぶん熱があるな。無理しちゃダメだろ」

ベッドに腰を下ろす麻生の両脇に手を置いた串崎は、麻生の額に手をやりながら、心配顔で覗き込む。周りの空気に、全く気づいていない。
先に気付いたのは、麻生だった。

「先生……」

呟きながら、串崎に目配せをする。そこで串崎も気付き、不自然に表情を戻すと、立ち上がった。
諏訪は、串崎の反応がおかしいことには気付くものの、その理由が分からずに唖然としていた。反して勘の良い町田は、正確に分かってしまった。今の2人を見ていれば、麻生の表情を見れば、串崎の慌てぶりを見れば、何となく分かる。しかしここでも町田は、敢えて何も言わなかった。
だが皆藤は……

「アンタ、相変わらず危機管理がなってねぇな」

呆れたように、ボソリとそう呟いた。
皆藤の言葉に、串崎と麻生はビクリと肩を揺らす。
そんな2人を一瞥した皆藤は、それ以上は何も言わず立ち去ろうと踵を返したが、

「ちょっと待て」

串崎が、皆藤の腕を掴んで引き止めた

「先生……」

串崎の腕を掴んで、麻生が“やめてくれ”という表情をする。しかし串崎は、はっきりさせておきたくて、その手を優しく下ろさせた。
立ち止まった皆藤が、ゆっくりと振り返る。

「どういう意味だ」

串崎の問いに答えず、皆藤は無言で彼を見る。何も透さないガラスの瞳で。

「皆藤」
「………」
「なあ、どういう…」
「ここで言ってほしいわけ?」
「……え?」
「俺が言ってる意味、アンタなら分かるだろ?言っていいのか?」
「………」

今度は、串崎が何も答えない。追い詰められた鼠のように、しかし特に何か弁明するつもりもないのか、ただただ険しい表情をしている。
しかし皆藤には、そこで言葉を止めてやるという情けはなかった。
ここまで言わせてしまったのは串崎で、ここまで言ってしまった以上は全部言ったようなものだろうと。
だから、

「隠そうとしてるんだか隠すつもりねぇんだか分かんねぇって意味だよ」

高揚のない声のまま、淡々と、

「立場上隠したいのかもしれないけど、それならもっとうまくやったらどうだ?
俺は誰と誰がイチャつこうが気にしねぇけど、気にしてチクる奴も出てくるぞ、そのうち」

皆藤の発言に、麻生と串崎は、自分たちの関係をどこかで目撃されてしまったのだと気付いて愕然とした。
串崎と麻生の反応にひたすら驚いて唖然としている諏訪も、さきほどの串崎の反応で薄々気付いていたせいか腑に落ちたように納得している町田も、ただただその光景を見つめるしかできない。いずれにしろ、この状況に動揺を隠せないでいた。
その中で唯一冷静な皆藤は、冷ややかな目で串崎を見つめたまま、

「まあでも、なかなかお似合いだぜ、先生」

小馬鹿にしたように、最後は鼻で笑ってそう言った。
そして、茫然と立ち尽くす串崎を尻目に踵を返すと、そのまま保健室を出て行った。

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