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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
1幕-6:彼の伝説

PERFECT BLUE 06-05

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「野田…?」

諏訪は、いまいちその生徒を知らなかった。3年生に不良グループがいることは聞いたことがあるが、名前までは知らなかったのだ。
すると、隣の串崎が説明した。

「3年E組の生徒だ。野田健一朗。3人とも、E組の生徒だよ。諏訪は3Eの授業もってないから、分からないだろうけどね」
「俺が最初の1年のとき、同じクラスだった。アイツが、皆藤のブリスト時代の話を撒き散らしたんだ。
俺もアイツらからグループに誘われたけど、そうやって卑怯な手を使ってでしか相手に勝てないヤツってカッコ悪りいじゃん?そもそも、勝ててもいねーと思うし。だから、"金貰ったって入らねぇよ"って断ってやったんだ。おかげで、それからは高校来る度に嫌がらせされたけどね。まぁ、相手になんかしなかったけど。
でも去年このクラスになってDOQって言われるようになってからは、アイツら俺に近付かなくなった。人数的にこっちの方が上だし、しかも皆藤がいるから。野田はブリスト時代に皆藤に一度潰されてるわけだし、真正面で立ち向かったら自分たちが負ける事、知ってるんだろ。自分たちに逆らえない相手にしか手を出さない。マジで卑怯なんだよ」

当時を思い出して、木下は顔をしかめた。木下も当時は荒れていたとはいえ、卑怯な人間を嫌うところは昔も同じだったようだ。

「俺も、隣のD組やったから、誘われたわ。"自分がルール"って感じでムカついたから、無視したったけど。そしたら、やっぱ遠回しに嫌がらせしてくんねん。まあ、俺の場合はクラスが違かったから来人ほど被害を受けたわけではなかったし、アイツらも諦めたっぽかったけど」

真鍋も、頷きながら同じように顔をしかめる。

「俺はね、先生。皆藤のことは、何考えてるやつだか分からないし、理解し難いトコあるけど。でもさ、アイツがそんなことするはずないと思うんだよ」
「木下?」
「皆藤は、自分より弱い者には絶対手を出さない。どっちかっつーと何気に助けたりとかするぐらいなんだ。影でコソコソ嫌がらせとか、卑怯なことは絶対にしない。それに、何か因縁とかふっかけてこない限り、ケンカ買ったりもしない。
そんなアイツが、理由もなく通りがかりの人間を傷つけたとはどうしても思えないんだよね。ケガさせられた人、別に酒飲んでたわけでもなかったみたいだし。本当にただ、家に帰るために歩いていただけで。そんな人に対して、アイツがそんなことするなんて……。
だいたい、アイツが近くにバイク置いて逃げるなんて、そんなミスすると思う?アイツほど賢いヤツが、そんなあからさまなヘマ……」

どうしても納得出来ないという表情で、木下は訴えてくる。まるで、今まで溜めこんでいた疑念を吐き出すように。

「俺も、来人みたいには皆藤のこと分かってるわけではないけど、アイツは、自分に害を与えないヤツには決して手を出さへんし、卑怯なこともせぇへん、堂々としてる。それは確実や。アイツがすることって言うたら、近付こうとする人間に対して噛みつくぐらいのもんやって。
だから、あんなワケ分からんミステリアスなヤツやけど、DOQとか言うたって単独主義の何の見返りのないヤツやけど、それでも俺らはつるんでるんやと思う」

真鍋も、しみじみとそう打ち明ける。
すると不意に、黙って聞いていた串崎が口を開いた。

「そう、それなんだよ……」
「え?」

隣で突然出た言葉に、諏訪が首を傾げながら顔を向けると、串崎は小さく頷いていた。

「俺、諏訪に言ったことあったろ?皆藤は俺も警戒はしてるし、本当に扱いづらい。でも、どうしても納得出来ないって……」
「あ、そういえば……」

諏訪は、始業式の前日のことを思い出す。そういえばあの時、気になるところで話が途切れてしまって、しばらく自分は気にしていた気がすることを。最近では自分が皆藤に接することにいっぱいいっぱいで、串崎の発言を忘れてしまっていたが。

「そういえばあれ、どういう意味なんですか?」

改めてあの日の話の続きを諏訪が促せば、串崎は腕組みをしながら"腑に落ちない"という表情で答えた。

「俺も、事件のことは何となく聞いてただけで、通りがかりの人を傷つけたぐらいにしか聞いてなかった。
だけど、皆藤って去年一年間、学校で一度も問題を起こしたことがないんだ。町田から聞いたんだけど、入学して以来一度も、校内でも校外でも問題を起こしたことは無いみたいなんだ。
つまりさ、あの事件だけが、まるで取ってつけたようにポッカリと残ってるだけなんだよ」
「……え…」
「木下と真鍋と桜沢も、皆藤は弱い無抵抗の人間に手を出さないって口を揃えて言うし。ウチのクラスの生徒たちもさ、皆藤とは1学期だけでも一緒の教室で過ごしてたわけだろ?皆藤のこと悪く言う奴いないんだよ。だから、ずっと俺も疑問に思っててさ。それとなく宇賀とか町田に聞いてはみたんだけど、アイツらもあんまり話したがらないんだよなぁ。
2人から聞いて分かったのは、事件は刑事裁判でも起こされてそこで実刑が下れば少年刑務所行きだったレベルのもので、被害者側も家族がけっこう大騒ぎだったらしい。でもそれは相手の弁護士が彼らを説得して、家裁のみで納めることができたみたいだ。鑑別所の判断としては、"精神的な異常は彼には無い。だが卑劣で残忍極まりない行為だった。社会生活だけでの更生は難しい"ってことになったみたいで、それで皆藤は少年院に送られたってわけだ。
事件はそういった経緯で"解決"してしまったけど、何度聞いても俺はモヤモヤが消えなくてさ。宇賀や町田が話したがらないのも、何を話してももう無駄だって思ってるからなんじゃないかなって……」

残念そうに、串崎が溜め息を吐く。
諏訪は、そんな彼等の言葉を整理して、皆藤の行動を考えた。

タンポポの花を優しく見つめていた皆藤。
麻生と串崎の件では諏訪とのキス写真を渡し、2人に対して対等をアピールした皆藤。
不良に絡まれた谷原を助けた皆藤。桜沢のことも、去年助けたことがあるらしい。
教室で熱を出して倒れた麻生を抱えてきてくれた行動だって、無闇に人を傷つけるような人間がすることとは絶対に思えない。
本当に、理由もなく、通りがかりの人間を傷つけたのだろうか……なんて。深く考えなくても分かること。
皆藤は、やっていない。それが自然な答えなのではないだろうか。
彼はハメられただけなのだという宇賀の言い分が、真実なのではないだろうか。

そんな思いが、諏訪の心にふつふつと沸き起こっていく。
すると、

「昔の皆藤くんは……違う人だったらしいんです」

ふと、黙っていた谷原が遠慮がちに口を開いた。
全員の意識が、谷原に向けられる。
一斉に顔を向けられて谷原は少々驚いたらしいが、その全員から話を続けるように視線で促され、ポツリポツリと話し出す。

「俺今、映画館でバイトしてるんですけど、そこの社員さんが昔の皆藤くんを知ってて。3年ぐらい前に初めて来て以来、皆藤くんは映画館の常連だったらしいんです。
当時から皆藤くんはヤンキーっぽくはあったみたいだけど、でも笑顔が少年らしくて、無邪気な感じだった、て。優しそうな印象で、スタッフからも密かに人気があったぐらいだって……」

谷原の言葉に、聞いていた全員の顔が"え?"という表情に変わる。
すると串崎が、話の流れで思い出したのか、口を開いた。

「そう言えば、ウチのクラスの生徒も言ってたな。皆藤は確かにいつも無口だったし浮いてはいたけど、話し掛ければ答えてくれたし、宇賀と居る時は楽しそうな笑顔も見せてた、って。だから、校内で流れてた皆藤の過去の噂も、他の生徒たちほど気にして恐れていたわけではなかったらしい。
みんな言うんだ。皆藤は今みたいな、あんな奴じゃなかったって……」
「じつは俺もさ、皆藤が笑ってるの、見たことあるんだ」

木下までもが、そんなことを言いだす。

「それまでも皆藤とすれ違ったり駐輪場でかち合ったことはあったけど、アイツは別に普通っていうか。浮いてはいるけど、睨みきかせて歩いてるわけでも、近づくなオーラまき散らしてるわけでもなかったんだよ。当時の俺とかナベよりも寧ろ大人しかったんじゃねぇかってぐらい。マチルダ先生の言うとおり、アイツ学校内で問題起こしたことねぇんだよ。起こしてたのは大抵、俺かナベか、野田の一派。
そんで、最初の1年の時……廊下ですれ違った時にさ、宇賀とアイツが並んで歩いてて。何の話してんのかは知らないけど、すげぇ楽しそうに笑ってた。ああコイツってこんな顔もするんだ…って、そう思ったの覚えてる」

しかしその笑顔を見たのは、後にも先にもあれきりだったのだと、木下は言った。
諏訪は、その言葉に唖然としてしまった。
木下の証言に、谷原はうんうんと頷いている。

「まさに映画館でウチの社員さんが見たのは、そういう皆藤くんだったみたいです。ヤンチャだけどいい子、って感じの子だった、って」

あの時は信じられないと思っていた井口の話が、木下や串崎の証言を聞いて確信に変わったようで、そこに何かヒントがあるのではと、谷原は言葉を重ねてくる。

「でも、一昨年の秋ぐらいにいきなり来なくなって、去年の春ぐらいから、また来るようになったらしいんですけど。その時にはすでに、今みたいな感じだったらしくて……」
「事件があったのは、一昨年の9月やで」

真鍋が、木下に「そうやんな?」と確認する。木下も頷いた。

「確か、夏休み明けすぐ。新学期入った途端って感じ。
それで、少年院を出たのが、去年の3月だよ。4月に新学期入ると同時に、アイツも復学した気がする」

そこに居た9人の頭の中は、確認はし合わないまでも、恐らく同じだった。
あの事件が、皆藤を変えてしまったのだと。
皆藤は、もしかしたら本当に無実なのかもしれない、と―――

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