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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-6:彼の伝説

PERFECT BLUE 06-06

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[3]

中庭から立ち去った皆藤は、保健室で町田の仕事が終わるまで、ベッドで横になっていた。
そこへドアが開き、諏訪が入って来た。

「皆藤、居ます?バッグが教室にあるんで、ここかと…」
「居るよ~?」

諏訪の問いに、町田は返事をしながらボールペンでベッドを指した。「どうも」と礼を言い、諏訪はベッドのカーテンを少し開ける。

「皆藤」

呼びかけると、眠っていたのではないらしく、皆藤がうっすらと目を開けた。
自分が顔を向けている側に立っている諏訪を、チラリと見上げてくる。

「さっきのこと、谷原が"ありがとう"って」

諏訪がニッコリと笑いかければ、

「別に。何もしてねぇよ」

皆藤は何も知らないフリをして目を瞑ろうとする。
しかしそれは諏訪にとっては予想どおりだったので、すかさずスッと何かを彼の目の前に差し出した。それは、皆藤が落としていったレンズカバー。

「………」
「写真撮ってたんだろ?退屈してたわけじゃないよな」

そう言って、笑顔でカバーを渡す。
皆藤は無言でそれを受け取ると、体の向きを変えてしまった。
それでもめげずに、諏訪は話し掛ける。町田は、その様子をジッと見ていた。

「いいことしたのに、それをねじまげてまで悪くいる必要ないんじゃないか?」
「………」
「皆藤は、自分を悪い人間に見せようとしてる。自分がしたことが良いことでも、悪いことにしてる」
「………」
「それは、すごく悲しいことだと思うよ」
「…うるさい」

くぐもった声で、皆藤が言葉を発した。

「先公に同情なんてされたくねぇんだよ」

背中を向けたままの皆藤は、諏訪をチラリとも見ずに冷たくそう言い放つ。

「そうか」

諏訪はそれだけを答えると、カーテンを開けて出て来た。目が合った町田と苦笑いをし合い、とりあえず今回はその場を去ることにする。
しかし去り際、諏訪は皆藤のいるベッドを振り返った。
どうしても伝えておきたいことがあったのだ。

「皆藤がどう思おうが勝手だけど、悲しいっていうのは、同情ってことじゃない。俺が悲しいってだけだ。
それは、皆藤が悪い人間とは思えないからだよ。そういう風に装ってるとしか。
俺は自分の生徒のこと、信じてるからさ」

皆藤は、みじろぎもせず反論もせずに、ただ黙って聞いていた。
諏訪が発した、どこかで聞いたことのあるセリフは、皆藤には苦しみしか与えなかった。

『君は僕の生徒だから。生徒の君を信じるよ』

そう言ったのに、大事なときに信じてくれなかった、あの教師を思い出す。
『皆藤を信じてる』と言ったその口と声で、『もう嘘はやめろ』と言ってきた担任教師のあの瞳を、冷たい声を、一気に遠のいた距離と温度を、皆藤は忘れることはないだろう。

「……俺はアンタなんか信じない」

あのとき教師の言葉を信じて信頼した、愚かな自分を見たくない―――そんな思いのまま、皆藤は冷たく言い捨てる。
しかし、

「それでも俺は信じてるよ」
「………」
「皆藤が過去にどんな奴だったかとか、どうでもいい。俺は今の皆藤を信じてる。さっきのこととか、熱出した麻生を運んできてくれたこととか、そういう優しい姿を信じてるよ。それが表面的なものかそうじゃないかなんて、俺にだって分かる。
自分で分からないなら、俺が断言してやる。皆藤は、優しい奴だよ」
「………」
「俺は、そんな皆藤を嫌えない。見捨てられるわけがない」

そして諏訪は保健室を出て行った。
皆藤は無言で、諏訪に背を向けたままだった。

再び、2人きりの静かな保健室。
町田が、皆藤のベッドに近付いてきた。皆藤はすでにベッドから起き上がっている。

「なに、どういうこと?さっき何かあったのか?」

隣に座った町田が、事情が分からず訊ねてくる。

「退屈だったから、ちょっとヒーローごっこしてみただけだよ」

レンズカバーを手にベッドから降りた皆藤は、面倒くさそうにそれだけ答えながらカーテンから出ると、長いすに腰掛けた。

「ふうん……」

これ以上訊いても何も答えないだろうことを察し、町田も自分のデスクに戻った。そして、ジッと座っている皆藤を少しだけ眺めると、今の彼はそっとしておいてやった方が良さそうだと判断し、町田も自分の仕事をすることにした。

皆藤は、あの日のことを思い出していた。
久し振りに野田の顔を見て、鮮明に思い出してしまった記憶。

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