FC2ブログ

「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
1幕-7:信じる証

PERFECT BLUE 07-01

 ←PERFECT BLUE 06-08 →PERFECT BLUE 07-02
【7:信じる証】

[1]

固く心を閉ざした人間に、自分がその人を信じていることを分かってもらうには、一体どうしたらいいだろうか。

「失礼します……」
「ああ、諏訪先生」

考えて出した結論は、"証明する"こと。

「校長、お願いがあるんです」
「ん?」

たった1つでもいい、何かひとつ、証明できるものを。

「2年前の事件のこと、詳しく調べたいんですけど」
「え?」

その心の扉を開く鍵が、きっとそこにあるはずだ―――




「2年前の事件?」

諏訪の突然の発言に、妹尾校長は切れ長の目を丸くして驚いた。
妹尾和摩(セノオ カズマ)はこの高校の第一期生でもあり、30代前半の若き校長である。昨年までは教頭を兼任しながらも教諭として串崎らと共に教鞭をとっていたが、理事長業務に専任することになった父に代わり、今年から2代目校長に就任した。
父の背中を見ながら教職業に憧れ情熱を燃やしてきたという彼は、考え方も先代校長を引き継ぐものが多く、この高校の理念どおり比較的柔軟な思考の持ち主だと諏訪は思っている。だからこそ、こうして直談判に来た。学年主任やら教頭やらを通そうものなら、校長に届く前にもみ消されるのがオチだと思ったのだ。

「2年前の事件、って……皆藤智司君が起こした事件のこと?」
「はい。まだ校長は教諭をされていた頃だと思いますけど、でもご存知ですよね?」
「もちろん。で?何をどう調べたいわけ?」

期待通り聞く耳を持ってくれているらしき妹尾に、諏訪は淡々と答えた。

「僕は彼が、無罪だと思うんです」
「……え?」
「だから、それを証明したいんです」
「諏訪先生???」

妹尾はさらに目を丸くした。
いつも冷静で頭の回転も早く穏やかな妹尾とはいえ、あまりの唐突さに驚いたらしく、豊富な知識を物語るような知的な顔は疑問符でいっぱいになっている。

「あの、諏訪先生。君は、どうしてそう思うの?君がこの高校に来る前の事件でしょう」

小さな子供に質問するかのように、妹尾はゆっくりとした口調で諏訪を諭す。
だが、寧ろ諏訪の方が妹尾を諭すかのように、自分の考えをゆっくりと打ち明けた。

「僕はこの2ヶ月、担任として、彼と近くで接してきました。確かに問題の多い生徒だとは思います。頭が良い分、こっちがしてやられてるところもありますし、誰も近づけようとしない。近付こうとしても、撥ねつけられる」
「うん。そうだね。僕も彼には手を焼いた。会話が一切成立しないからね、彼とは」
「はい。でも、決して他人に害を与えるようなことはしません。彼の引いたラインを超えて近付こうとする者には鋭い刃を向けてきますけど。僕も向けられている1人ですけど」
「気の毒に…」
「でも、実際に傷つけるようなことはしないんです。彼はきちんと、一歩手前で踏みとどまります。本気で傷つけるようなことはしないんです」

諏訪が思い出すのは、皆藤の自分に対する数々の言動。

『これ以上のことされたくなかったら、下手なお節介はやめろ。仲良しごっこは他の生徒とやりな』

自分にキスをして、そう言った彼。

『俺に近付くと、酷い目に遭うよ?』
『自分の身は、自分で守りな』

そう言って、冷たく微笑んだ彼。
あんなに冷たい瞳で言われるから本気にしてしまうものの、冷静になって考えてみると、実際に皆藤はそうするつもりは無かったのではないかと、諏訪は思う。実際、そんなことを言われてもしぶとく粘る自分に対し、皆藤が実行に移してきたことは一度も無いのだ。
皆藤にとって、言葉の意味などどうでもいいのではないだろうか。ただ相手を遠ざけるための武器として、冷たい微笑みを、恐ろしい言葉を吐いているだけなのではないだろうか。諏訪はそう思うのだ。

『今日はキスだけじゃ済まないよ?』

あの日、中庭で迫ってきた時もそう。今考えてみれば、その後にとる諏訪の行動なんて、皆藤には完全に見えていたような気がする。
それに……

「それに、本当は優しい生徒です」
「……え?」

諏訪が発した一言で、妹尾の顔色が変わった。先ほどまでは"何を言い出すんだ"という表情で困惑していた彼だが、急に、真剣味を増して諏訪を見てきたのだ。

「続けて?」

完全に受け身状態だった妹尾が一転して身を乗り出し、話を促してくる。諏訪は、小さく頷いた。

「彼は、何気ない風を装って、困っている人間を助けます。見て見ぬフリを決してしない。彼に助けられた生徒が、ウチのクラスにも居るんです。それは1人だけじゃない。僕も実際、それを見たことがあります」
「本当に?」
「はい。だから僕は、皆藤を信じようと思うんです。
そして、彼には知ってもらいたいんです。彼を信じている人間も居るんだってことを。
そのために、この事件の真相を調べたい」
「どういう意味?」

理由になっていないのではないかと、妹尾が首を傾げる。

「この事件がきちんと解決されなかったのは、周りの大人が彼を信じなかったからです。警察も弁護士も当時の担任教師も、それから校長をはじめとする学校側の皆さんも、犯人は彼だと決めつけたんじゃないですか?バイク1台、たったこれだけの証拠で」
「………」
「僕なりに新聞記事を追って調べましたけど、事件の翌日に彼が逮捕されて、"解決"するまでの期間が短すぎる。この事件は、きちんと調べられないままになってしまった可能性が高いと思います。"先入観"という厄介なものが、彼を犯人に仕立てあげた気がします。
だって、彼が無実なんじゃないかって考えてる人、居るんですよ?もちろんこの学校にも。ご存知ありませんか?」
「………」
「皆藤がどうして"自分がやった"と言ったのか、それは僕には分かりません。でも、よく言うじゃないですか。容疑者は、たとえ自分が無実でも、追い詰められると自分のことなどどうでも良くなって、やってもいない罪を認めることがあるって。僕は、彼がそうだったんじゃないかという気がしてならないんです。
僕のクラスの生徒たちは、彼が無抵抗の人間に害を与えるようなヤツじゃないって、口を揃えていいます。僕は自分の生徒を信じてますから、その言葉も信じてるんです」

『皆藤は、自分より弱い者には絶対手を出さない。
影でコソコソ嫌がらせとか、卑怯なことは絶対にしない』

木下と真鍋と桜沢が、口を揃えて言った言葉。真剣に、諏訪に訴えていた言葉。あの瞳に、嘘はなかった。

「とにかく、この事件と実際の皆藤の間には矛盾が多い。彼を知れば知るほど、納得できないことだらけです。だから、真相を知りたいんです。きちんと納得の出来る結果が欲しい。
そしてそれが、僕が彼を信じているという証拠になると思うんです。君を信じているからこそ、僕はここまで必死で調べたんだよ、と。そうやって形で表さないと、彼のように心を閉ざしている人間は納得しません。これが、最終手段なんじゃないかと思うんです。
僕は、間違っていますか?」

必死で訴えてくる諏訪を、妹尾は無言で見つめていた。
やがて、考え込むように俯く。頷くでも首を横に振るでもなく、ただジッと何かを考えているようだ。

関連記事
スポンサーサイト



↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ  3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【PERFECT BLUE 06-08】へ
  • 【PERFECT BLUE 07-02】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【PERFECT BLUE 06-08】へ
  • 【PERFECT BLUE 07-02】へ