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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
1幕-7:信じる証

PERFECT BLUE 07-09

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[3]

村山が学校に訪れることになったのは、5日後の木曜日だった。会社を早退して、わざわざ来てくれたのだ。
妹尾校長の許可を取った諏訪は、村山を保健室に連れて来ていた。この学校の職員の中には、当時の学年主任や教育指導教諭等、事件当時村山に実際に会った人間もいる。職員室に通してしまえば彼らの好奇の視線にさらされ、村山が居づらいのではないかと諏訪は思ったのだ。

「じゃあ、行きましょうか」

諏訪が告げると村山も頷き、町田も連れだって、隣の棟にある2年F組の教室に向かった。
F組の4限の授業は、数学。串崎の授業だ。串崎には事情を説明しているから、諏訪が来たらすぐに分かるようになっている。それにこの時間は、この棟のクラスはほとんどが移動教室中で、端のJ組以外は誰もいない。だからこそ諏訪は、木曜の4限を選んだのだ。
皆藤が授業をサボることも考えられたが、そこは木下たちの協力を得ることにした。木下と真鍋と桜沢にも、事情を説明していたのだ。もしも皆藤がサボるようなら阻止しろ、もし無理ならサボり場所を把握しておくようにと。


「失礼します」

教室のドアを軽くノックした諏訪がそのまま開くと、黒板に書かれた数式を説明していた串崎が、顔を向けてきた。諏訪が頷くと、串崎が皆藤の方に目を向ける。

「皆藤、ちょっとこっち来てくれ。諏訪先生が呼んでる」

その声に、窓を眺めていた皆藤が、スッと顔を向けた。諏訪の顔を見て、"何だよ"と迷惑そうな表情をしている。
木下や真鍋や桜沢が、その様子をジッと見守っていた。他の生徒たちはワケがわからないまでも、何か様子の違う状況に、諏訪と皆藤の顔を交互に見比べている。
皆藤が、静かに立ち上がって歩いてきた。そして、教室に一歩入っている諏訪の顔を見上げる。

「来人?」
「どこ行くん?」

木下がスッと立ち上がったことに気付いた真鍋と桜沢が、不思議そうに顔を向けた。しかし木下は、急ぐようにそのまま教室を出て行ってしまった。

「皆藤、ちょっと、いいか」

自分の前に立った皆藤の腕を、諏訪は軽く引く。

「何だよ」

相変わらず眉間に皺を寄せながら、皆藤は諏訪の後ろにいる村山に気付き、目をやった。

「誰」

つっけんどんな口調で諏訪に視線を戻した皆藤は、村山の隣にいた町田にも視線を向ける。
皆藤の、何の手ごたえもない反応。やはり諏訪の予想通りだった。自分が呼ばれたということはこの人物が関係しているのだろうとことは皆藤も気付いたようだが、心当たりがないことを、この表情が物語っている。
ならばそれを決定的にしようと、諏訪は用意していた言葉を出してみる。

「この人は、お前のご親戚の方だ」
「は?」
「偶然知り合ってさ。まさか皆藤の親戚とは思わなかったから、ぜひ会ってもらおうかと思って。この方も、会いたいって言ってくれたし」

そんな、あまりに唐突な諏訪の発言に、皆藤が眉をしならせた。それから、軽く鼻で笑う。

「偶然?どうせ勝手に調べて連れてきたんだろ。
…で?"ご親戚の方"が、俺に何の用?」

いつものように冷めた表情で、皆藤は淡々と吐き捨てる。
事件の補足資料から諏訪が知った、皆藤の生い立ち。皆藤を未婚のまま育てながらも男に逃げてばかりいた母は、親戚からも愛想を尽かされ最終的には実家の両親からも追い出されたようだ。故に皆藤は、親族については自分の母親とその祖父母しか顔を知らない。資料にあった、皆藤が少年院を出る際に身元引受人となってくれたという人物も、どういった知り合いかは書かれていなかったが少なくとも親戚ではないようだ。
そんな、親戚の顔を誰一人として知らない皆藤は、ここで諏訪に言われた言葉に疑問を持っていないようだった。そしてそれは自動的に、皆藤が村山のことを知らないという事実を裏付けている。
ならば、と。

「どうですか?」

間違いないという確信とともに、諏訪は村山に尋ねる。

「この声じゃない……」

諏訪と町田の予想通り、村山はゆっくりと首を横に振った。

「全然違う」

村山が吐いた言葉に、諏訪と町田は顔を見合わせ大きく頷き合う。
だが当然、皆藤には意味が分からなかった。

―――何なんだよ…

皆藤は町田にチラリと視線を預けてから、全く意図が分からないこのやり取りに内心舌打ちが出る。
すると、諏訪が口を開いた。

「皆藤、この人は、村山健治さんだ」
「……村山…健…」

諏訪の言葉にしばし考えていた皆藤が、その名前に、急に表情を固くした。
やっと、思い出したのだ。その名前の人物を。
忘れるわけがない。調査のときも審判のときも、何度も聞かされた名前。

「アンタが……?」

皆藤の声は、少しだけ驚きの色を見せていた。




断りもなく3年F組の教室に入って来た木下に、教師と生徒全員が目を丸くした。
しかし木下は気にする素振りはいっさい見せず、何食わぬ顔で宇賀の元へ真っすぐ歩いていく。真ん中の列の最後尾にいる宇賀は、顔中に疑問符を沢山浮かべて、木下を見ていた。

「宇賀」

目の前に立ち、宇賀を呼ぶ。

「何?」
「ちょっと、来い」

言うや否や、木下は宇賀の腕をグイッと引っ張った。

「え?ちょっ……何だよ??」
「先生、ちょっとコイツ借ります。別にボコるとか、そんなんじゃないから」

隣で目を丸くしている宇賀を無視して教師にそう断りを入れると、木下は宇賀をズンズンと引っ張っていった。




2年F組の教室では、言いようの無い空気が漂っている。

「皆藤、村山さんは、お前の声を確認しに来てくれたんだ」

廊下にいた村山を教室の中に入れながら、諏訪は今回の意図を打ち明けた。
ドアの付近で、皆藤と村山が見つめ合う。
町田は、ドアに凭れながらジッと見守っていた。
すると、背後で人の気配がして。振り返ると、木下に連れられてきた宇賀が居た。

「先生……?」

疑問符だらけの宇賀に見つめられ、町田は少し体をずらしてやった。顎をクイッとやって、中に促す。
町田に促されるまま木下と一緒にドアに近付いた宇賀は、目の前の張りつめた光景に首を傾げた。しかし、

「村山さんは、視力を回復したんだ」

諏訪の言葉が、"視力の回復"というワードが、宇賀に勘付かせた。

「あの人……」

呟いて、宇賀は町田を見る。町田は、無言で頷いた。

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