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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-9:決意の夏

PERFECT BLUE 09-02

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「何、お前、"その前"って。……もしかして、告る前に麻生を襲ったとか?」
「力ずくで麻生の気持ちを自分に引き寄せたんですか?」
「それで、アイツが自分から逃げられないことを確認して告ったんだ。サイテー!」
「バッ…、ちっげーよ!」

何を勘違いしているのだと串崎は慌てて否定するが、火がついた2人の非難は止まらない。

「見損ないましたよ、串崎さん。いくら衝動的とは言え……」
「だからお前は串刺しって言われんだよ」
「言ってんのお前だけだよ」
「麻生のハートに放って射止めた、とでも言いたいんですか?」
「それ言うなら"矢"だろ。ハートに放たれんのは矢だろ」
「うわ、串刺しそんなファンタジーなこと信じてんの?」
「信じてねぇよ。諏訪が変なこと…」
「お前そういうとこあるよな。プーさんはハチミツ食べて太るって信じてるし」
「別に信じてるわけじゃな…」
「串崎さん、あれぬいぐるみですよ?矛盾に気づきましょうよ」
「マジトーンで諭すな俺を」

いちいち脱線する会話。今の串崎にとっては若干ありがたいところだが。
少しホッとしかけている串崎に目ざとく気づいた町田が、

「で?"その前"に何してくれたんだよ」

しっかりと話を戻してくる。そこで諏訪も気づき、串崎に再度詰め寄ってきた。

「お前、麻生襲ったんだろ?吐け」
「吐きましょう串崎さん。ネタは上がってんすよ」
「だから違うっての。俺がアイツにそんな酷いことするわけねーだろ」
「串崎ならやりかねないじゃん」
「思い詰めると、人間なにやらかすか分からないですからね。あれだけ麻生に惚れ切ってる串崎さんなら、それぐらいのこと……」
「だから、違うってば!俺はそんなに非道なヤツじゃない!キスだよ、キス!」

言ってしまってから"マズイ"と思ったが、もちろん遅かった。
町田の顔が"引っ掛かったな"という笑みを浮かべている。諏訪はノリで町田に合わせていたのだろうが、町田の方はしっかりとした意図があったことを、その笑顔が物語っていた。
大げさなことを言って、真実を話させる。そのやり口が本当に上手いのが町田だ。
今回もやられてしまったと、町田の手口に性懲りもなく引っ掛かった自分が悪いのだと観念して、串崎は素直に話すことにした。

「キス、したんだよ。何つーか、フィーリングっていうのかな。
でも好きじゃないのにキスしたわけじゃねーよ?俺はアイツのこと好きだったよ。でも、アイツは俺のことそんな対象で見てないと思ってて。そもそも俺自身もさ、好きは好きだけど、何か半信半疑っつーか。だってアイツ、そん時中2だぜ?俺がその直前まで付き合ってた彼女、20歳とかだよ?俺だって混乱するっつーの」
「中2?!串崎さん、それ犯罪ですよ」
「うるせーよ。大人っぽい中学生も居るんだよっ」
「ああ、それはそうかもな。確かに、大人と同じぐらい魅力的な中学生もいるからね。みんながみんなガキくさい体とは限らないよな」

頬杖をついて、町田が頷く。
皆藤と始めてセックスしたとき、彼も当時14歳。学校に通っていれば中学2年生だった。しかも皆藤においては、町田とする前に、すでに女経験があった。
…といっても、皆藤は学校に行かずに夜の街で生きていたのだから、他の中学生とは違うような気もして、町田は麻生と同じ土俵に皆藤を出した自分に内心苦笑いをした。
そんな町田の思考など当然知る由もない串崎は、弾劾を受けるかのごとく、告白を続ける。

「とにかく、いろいろ考えてたから、ずっと言えなかったんだよ。アイツが振り向くわけないって思ってたから。
でもある日、不意に目が正面で、しかも至近距離で合って。無言で見つめ合っちゃってさ。そのとき何となく、あぁ同じ気持ちだな、って思ったんだ。それで、キスしたの」
「お前から?」
「そうだよ!」
「何だよ、キスも串崎さんからなんじゃん」
「だからぁ、同じ気持ちだって思ったからしたんだろ?で、後日改めて気持ちを伝えたんだよ」
「その後すぐじゃなくて後日ってのがお前らしいな」
「だってっ!キスしたらぎこちない雰囲気になっちゃって、言える雰囲気じゃなかったんだよ。その後カテキョで会っても、何となく気まずい感じだし。でも、いつまでも微妙なままは嫌だし、からかってるとか思われたら最悪だから、はっきり"好きだ"って言ったんだよ。"ちゃんと付き合おう"って」
「そうかそうか、よく分かったよ」

結局全部吐いてしまった串崎に、町田は満足そうに笑う。
諏訪も、ようやく串崎から体を離して「なるほどねぇ」としみじみ呟いた。
人を本気で好きになるということは、それだけ大変な事なのだと、改めて諏訪は思う。
串崎と麻生だって、いろいろ悩んでいたのだろう。結果的には良い方向に向いたけれど、同性で、麻生は当時中学生で、自分は家庭教師という立場で、そんな障害に串崎だって苦しんでいたはずだ。絶望的な恋愛に、何度も胸を痛めていたはずだ。そう考えてみれば、串崎があそこまで麻生を大切にしている理由が、諏訪には納得出来た。

「串崎さんは、諦めようと思ったりしました?」

叶うはずないと思っている恋を、どうして串崎は諦めなかったのだろう。諏訪はふとそんなことを思い、気づけば口を開いていた。

「え?」

串崎が、首を傾げて諏訪を見る。町田も、諏訪に視線を向けた。

「だって、振り向いてくれるわけないって思ってたんでしょ?」
「そうだけど…」
「どうしても欲しいという気持ちだけじゃ、どうにもならないことってあるじゃないですか」
「諏訪?」
「好きでも、どうしようもないことってあるでしょ?串崎さんも、最初はそう思ってたわけじゃないですか」

さっきとは違って真剣な顔をしていることに、諏訪は気付いていなかった。
それぐらい、これは諏訪にとって、冗談で話せる会話じゃなかったのだ。町田のように、ジョーク交じりで本音を話すことが出来るほど、諏訪は器用な人間ではない。

「…俺は、何度も諦めようと思ったよ」

諏訪が何を考えているのかまでは分からないが、自分に答えを求めていることは分かったので、串崎も真剣なトーンで答えた。

「何度も、諦めようとした。家庭教師をやめようかとも考えた。
でもさ、結局、人間って自分の欲望に正直じゃん?届かなくてもいいから、振り向いてくれなくてもいいから、傍に居たくて。辞めることなんて俺が出来なかったわけ。アイツが高校合格すれば俺の役目は終わりだって分かってたから、余計にね。
だって、アイツが風邪とか引いて一週間休んだりするだろ?そうすると、会いたくて会いたくて仕方なくなって。メールとかじゃ顔見えないし、それで結局、"生徒想いの良い先生"装って見舞いに行ったりして。顔見れて嬉しくなったりしてんだよ。
そんなことして"何してんだよ"って思う反面、"ああ俺マジなんだ"って思って。そんな気持ちを、簡単に消そうとしてた自分がバカだったって分かるんだ」

その気持ちは、今の諏訪には手に取るように分かった。
まさに今の自分は、皆藤に会いたい気持ちでいっぱいだ。しかし諏訪の場合、担任の自分が生徒の家を訪問する理由が無いし、学校に提出されている電話番号は皆藤の身元引受人のものだ。本人の携帯番号やメールアドレスは知らない。他の生徒は彼らの方から教えてくれたが、皆藤が教えてくれるわけがない。仮に知っていたとして、連絡したところで不審がられて終わりだ。
そう。諏訪と串崎の決定的な違いは、そこにある。串崎は当時から麻生に懐かれていたが、諏訪は皆藤にとって、信じられる存在ではないのだ。

「それで串崎さんは、諦めるのやめようと思ったってことですか?」
「やめるっつーか、このままじゃ諦められないだろうなって思って。
叶わないなら叶わないでさ、ちゃんとその気持ちと向き合おうって決めたんだ」
「向き合う…?」
「そう。好きになった気持ちを強引に消すとか、相手に失礼なんじゃないかなって思ったんだ。相手のためとか何だとか理由つけたところで、実際のところはさ、傷つきたくない自分への保身が大きいわけじゃん?相手からすれば、自分を理由にするなって感じだろ。
だから、一緒に居られる間は、アイツのことちゃんと見て、そこから生まれる気持ちにも真っすぐ向き合おうって決めたんだよ。無理に消そうとしないで、自然に任せようって。気持ちを告げるか告げないままかは別問題として、自己保身の言い訳で諦めるのだけはやめようってね」

自分の想いが相手に届かなかった理由は立場や年の差のせいだったのだと、決して自分に原因があったわけじゃないのだと、そんなカッコ悪い言い訳だけはしたくなかった。と串崎は言った。
それはまるで、

"好きになってはいけない相手なんて、きっといない"

そう言っているかのようで。

「ちゃんと……か」

諏訪はぼんやりと、口に出してみた。
諦めなければいけない恋でも、無理をして消す必要はないと、それこそが失礼なのだと、彼は言うのだろうか。好きになる相手の立場や年齢にリミッターをかける必要はないし、もしかけたとして、そこを超えて誰かを好きになったのなら、しっかり向きあうべきだ、向きあっていいのだと。
確かに諏訪は、皆藤を好きになったことを後悔はしていない。少しずつ自分に心を開こうとしてくれている彼の新しい一面を見る度に、幸せだと思えるから。
しかし、諦めるつもりでいることも確かだ。届くはずのない気持ちなど、引きずるだけ哀しいから。そしてそれが自己保身だと串崎は断言しており、諏訪もグサリと図星を刺された気分になった。
そうだ。自分は自己保身が原因で、今こうして苦しんでいるのかもしれない……そんな答えが浮かんだ瞬間、

「でも諏訪、何でいきなりそんなこと言い出すの?」

串崎が、今度は諏訪を覗き込んだ。いきなり真剣に質問してきた諏訪のことを、ずっと不思議に思っていたのだ。

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