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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
2幕-12:幼馴染と邪魔者

PERFECT BLUE 12-03

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「失礼します」

職員室に聞き慣れた声がして、諏訪は顔を向けた。
担任や部活を持つ教職員はみんな自分のクラスや部の文化際準備で席を外しており、そういった担当を持たない者はさっさと帰って行ったため、職員室はガランとしている。諏訪の他に居る教師は、2人だけ。その彼らも、諏訪とは机が離れている。

「先生、何ですか?」

頃合を見て準備から抜け出してきた浜島が、諏訪に近付いてきた。ホームルームの後に諏訪が、『時間が出来たら職員室に来てくれるか?』と言っていたのをきちんと覚えていたらしい。

「ん?ちょっと、ここ座って」

自分の隣の机の椅子を目の前に置き、ポンポンと叩く。浜島は、首を傾げながらもそこに座った。

「あのさぁ、浜島」
「ん?」
「ずっと訊いてみたかったんだけど…」
「何ですか?」

しかし、諏訪はそこで口をつぐんだ。
本当に訊いていいものか、何となく躊躇われたのだ。何も知らないで訊くのはどうかと。
だが、浜島は諏訪のその表情で気付いたらしい。

「ナベのこと?」

少し淋しそうな顔をして、浜島は微笑う。諏訪も、正直に頷いた。

「うん。ずっと気にはなってたんだけど、最近特にな。ほら、お前たち今、文化際で同じ班だろ?それ見てて、何か、自棄に心配になって」
「………」
「お前たち、幼なじみだよな?」
「……はい」
「ケンカでもしてるのか?」
「してません」
「でも……」

真鍋と浜島の間に流れる空気は、どう考えても"不穏"以外の何物でもない。
最近は大分くだけてクラスにも馴染んできた真鍋が、浜島の前では以前と変わらず冷たい態度をとる。彼を無視する。浜島のことになると過剰に顔色を変える。"険悪ムード"というよりも真鍋が一方的に避けているような……とにかく見ているこっちが心配になるほどの嫌な空気があるのだ。

「俺は、ナベのこと嫌いやないし、今でも変わらず、すごく信頼してます」

浜島は、やっぱり笑っていた。
しかし、とても淋しい瞳。笑っていても泣いているような顔だ。

「でも、きっと俺のそんな気持ちが、ナベを離れていかせたのかもしれへんけど」
「どういうこと……?」
「俺、小さい頃、いじめられっ子やったんです。それで、俺のこと助けてくれたのがイッコ年上やったナベで。それ以来ずっとナベの後ろにくっついてて。おかげで俺も段々友達とか出来たし、明るくなれました。ナベのおかげで変われたんです。
だから、彼が東京に行ってしまって、その後俺も東京行くことになって、偶然家が近所で、偶然同じ中学に転校することになって。それってものすごい確率でしょ?俺は、ナベと一緒にまた楽しい毎日送れるって、呑気に喜んでました」
「でも違ってた」
「はい。たったの1年が、俺たちにとっては大きかったんです、きっと。
離れてる間に、ナベには違う友達ができて生活環境もガラリと変わって。変化に追いつくのに必死で、もしかしたら大阪に居た頃のことは忘れたかったのかもしれないのに。ナベは、あまりいい理由で東京に来たわけではなかったから。
それなのに俺が近付くいていくから、ナベには鬱陶しかったんかも……」

浜島の話を聞きながら諏訪が思い出したのは、2人が東京へ引っ越してきた理由。真鍋は確か、中学2年生のときに親が離婚して、母親に引き取られて東京へ来た。そして浜島はその1年後、父親の仕事の都合で家族で東京へ来ている。
真鍋が非行に走ったのは、もしかしたらこの1年間のことだったのかもしれない、と諏訪は思った。
浜島の話ぶりでは、大阪にいたころの真鍋は、普通の少年だったように思える。思春期に親が離婚したことが、そのせいでたくさんの友達と別れて見知らぬ街に来なければならなかったことが、彼にとって大きな打撃だったのだろう。
寂しいのに強がるように暴れることでしか有り余ったエネルギーを発散できず、そうすることで自分を忌み嫌う人間たちをさらに攻撃し、結果的に周囲の中でどんどんと浮いていったのではないだろうか……諏訪には、そんな気がしてならなかったのだ。
だが、

「それでもお前は、この高校を選んだんだよな」

しばらく考えてから、諏訪はそう言った。

「え?」

俯いていた浜島が、ゆっくりと顔を上げる。

「そんな風に思いながらも、アイツと同じ高校を選んだんだよな、浜島は」
「はい……」
「それは、どうして?」
「だって、俺の知ってるナベは、あんなヤツやないし……。
今はだいぶ丸くなってきたけど、俺が入学するときは、ホンマに悪くて。どうしても、そんな姿、見てられなくて」

浜島は、真鍋をどうしても見捨てられないのだ。"お前なんて友達じゃない"と切り捨てることは、出来ない。

「それに、ナベが心配なだけやなくて、俺にとって、やっぱ必要な存在なんです。大事な友達なんです。
だからこのまま違う学校に進んだら、今度こそ離れ離れになる気がして……ナベを、失いたくなかったんです」

聞いていて、諏訪は何だか無性に切ない気持ちになった。
友人を引き上げてやりたい、このまま道を外れていくのを見たくない。それは自分のためでもある、友人を失いたくないのだ。そんな浜島の気持ちが、諏訪にはとても痛々しくもあり、そして眩しくも感じる。

「ゴメン。なんか、言いたくない事、無理に言わせたかな」

落ち込む浜島の姿を見ているうちに自分が苛めてるような気分になってきて、諏訪は彼の髪を撫でた。

「大丈夫です。俺も、先生に聞いてほしかったから……」

今度の進路面談のときに、話してみようと思ってた。浜島は、そう続ける。
きっと浜島は、諏訪の予想以上にこのことを悩んでいるのであろうと、諏訪は感じていた。浜島にとって、真鍋の存在は果てしなく大きいのかもしれないと。

「真鍋は、いいヤツだよ。俺、すっごい好き、アイツの性格。だから俺もアイツを見放すつもりないから、それだけは浜島、安心してくれな?
きっと真鍋はさ、お前のことが嫌いで無視してるわけじゃないと思う。大阪時代のこと忘れたいからって大事な友達の存在まで無しにするような、そんな奴じゃないと思うし。だいたいさ、もし迷惑だとか思ってるなら、アイツの性格上ちゃんと正面切って言ってくると思わないか?言いすぎるぐらい何でもはっきり言う奴じゃん、真鍋って。
だから絶対、何か大きな理由があるはずだ」

諏訪に言えることは、それだけだった。"大丈夫だよ"とか、その場しのぎの慰めは、浜島にとって何の意味もないだろうと思ったのだ。

「2人がこのまま卒業するのは、俺は絶対嫌だから。ちゃんと解決しよう。
でも今はもう少し、様子みようか」

俺も、俺で良かったらいろいろ相談にのるから。そう言うと、浜島も小さく頷いて微笑ってくれた。

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