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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
2幕-12:幼馴染と邪魔者

PERFECT BLUE 12-09

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[3]

「おい」

翌日、登校してきた皆藤にすかさず近寄り、彼の机に腰掛けた真鍋は、話を持ちかけた。声をかけられた皆藤は、いつも通り平然と真鍋を一瞥してくる。

「お前、知ってたやろ、俺のコト」

何を、かは言わずに、真鍋は断定的に訊ねる。
そして皆藤はその言葉の中にある意味をきちんと理解したらしく、白けたような視線を寄越してきた。

「隣の席で、あんだけアイツの後ろ姿見てりゃあな。嫌でも視界に入ってくるんだよ」

皆藤の口調は、真鍋に対し"今ごろ気づいたのか"とでも言うように、淡々としている。

「お前が最近あからさまやったんは、俺が行動に出るように挑発してただけなんか」

皆藤に自分の浜島への気持ちを気づかれたことを本人から認めさせた上で、真鍋はその疑問点についても確認しようとしたのだが、

「そんなの、お前が考えろよ」

そこまで教えてやるつもりはないとばかりに、皆藤は冷たく突き放してきた。その顔も視線も、すでに真鍋から離れ窓に向いている。

「……そこ重要やん」

一番訊きたかったことを答えてもらえず、真鍋はボソリと呟く。
すると、皆藤も同じく呟くように言った。

「ただな、真鍋」
「……?」
「俺には、男を抱く趣味はない」

その言葉から、真鍋が思い出すのは、数日前の皆藤の言葉。

『アイツなら、抱ける気がするし』

あの言葉には何にも意味がなかった。そういうことだろう。
あの言葉と共に彼が見せた無感情のガラスの瞳は、それを物語っていたのだ。あのときの真鍋は恐怖と焦りしか感じなかったが、あの瞳が意味していたものは、"嘘"だからこその"無"だった。それをやっと、真鍋は理解した。

「そっか……」

真鍋は、ミステリアスな皆藤らしい荒治療だったとしみじみ思いながら、ずい分と前からそうされていたことにも気付き、自分の鈍感さに苦笑した。

「俺は、上手く乗せられたワケや……」

参ったね。髪を掻きながら、真鍋は笑う。彼には完全に、してやられたわけだと。
皆藤という人間を、真鍋は少しだけ理解出来た気がした。
彼はいつでも無関心そうで何も見ていないフリをしながら、本当は周りを見て様々な変化に気づいている人間なのかもしれないと。特に、諏訪の力で変化を始めたここ数ヶ月は。
本当の皆藤は、とても優しいのかもしれない。ひどく照れ屋で、ひどく不器用なだけなのかもしれない。真鍋はそう思えてならないのだ。

そんな真鍋を尻目に、皆藤は内心大きな溜め息をついた。
この男にも、こんな風に"良いキャラ"に見られた自分は、どうしても居心地が悪い。
そんな風にみんなして、優しい瞳で見ないでほしい。別に自分は、良い人だなんて思われたくない。好かれたいとも思わない。そんな人間だとも思っていない。

「目障りなんだよ、隣であんな顔されてると。理由はそれだけだ」

窓を眺めたまま冷たく言い捨てると、皆藤は席を立った。

「畑の違う優等生を堕としたいなら、もっと上手くやれ」

真鍋を通り過ぎながら、更に捨て台詞。こんなことを言っていないと、ペースを崩されそうで嫌だったのだ。
自分のペースを崩そうとする人間は、諏訪だけで十分だ。彼に対応するだけで、いっぱいいっぱい。そう大勢で見られたら、確実に自分のペースは崩れてしまう。

教室のドアを出ようとした皆藤は、入って来た浜島とかち合った。
またもや浜島は、前を見て歩かずに皆藤とぶつかりそうになっている。

「あ、おはよ……」

慌てて立ち止まり、浜島が笑顔を投げかけてくる。
一見いつもと変わらない人懐っこい笑顔のようで、少しだけ変化した、浜島のそれ。眩しいほどに晴れやかな笑顔だ。
そんな彼の姿は、笑顔は、

『智司くんて、タンポポみたいだね』

やっぱり…

「お前、やっぱり似てるな」

どうしても、面影を重ねてしまう―――

「え?」

言われた方の浜島は訳が分からずに訊き返すが、皆藤はそのまま教室を出て行ってしまった。
浜島はポカンとしたまま、そんな彼をしばらく見つめていた。

「どうしたん?」

心配した真鍋が、隣にやって来る。
浜島は、ぼんやりとしながら、真鍋へと少し顔を向けた。

「似てるって、言うてた……」
「誰が?」
「俺」
「誰に?」
「知らん」
「はあ?何やねんアイツ」

真鍋が、眉を下げて呆れて笑う。
しかし浜島は笑えずに、まだ皆藤の後ろ姿を見ていた。

「でもなんか、懐かしそうやった」
「え?」
「皆藤くん、めっちゃ懐かしそうな目ぇしとった」

自分を通して、誰かを見ているような。一瞬、誰かと浜島を重ねたような。眩しそうな瞳で、皆藤は自分を見たのだ。
そしてそれは、限りなく穏やかな表情だったと浜島は思う。

「あんな皆藤くん、初めて見た。全然怖いと思わへんかった。寧ろ優しさを感じたわ…」
「……」
「誰かを思い出したんかなぁ」

浜島の言葉に導かれるように、真鍋も皆藤の後ろ姿を眺める。
しかし、歩く皆藤の背中は、既にいつもの飄々とした印象。何の感情も感じさせない。

「ホンマ、ワケわからんヤツやわ……」

降参とばかりに溜め息をつき、だが少しだけ、真鍋は微笑んだ。ワケの分からないヤツだと思うのは今も変わらないが、しっかりと目を凝らして彼を見つめれば、そこには美しいものが存在している気がした。

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