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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-13:存在価値

PERFECT BLUE 13-01

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【13:存在価値】

[1]

「あ、だから違うって~」

芝居稽古中の教室内、隣で段取りを間違えた武藤に、富永が笑いながら突っ込む。
11月に入って1週間が過ぎ、文化際も間近。それでもこのクラスには緊張感はなく、和気あいあいとしたムードが漂っている。富永に突っ込まれた武藤を他の出演者たちが笑いながら責めれば、武藤も「ゴメンゴメン」と、反省の色がない。

「アホやな~、アイツ……」

皆藤の隣に座っている桜沢が、ポツリと言葉を漏らしながら笑った。
諏訪と共に舞台設置班の皆藤と桜沢は、今もまだやることがない。それなら舞台装備品作りの班を手伝えばいいのだが、皆藤にはもちろん、桜沢にもそういう判断は皆無だ。机を全部両脇によけてしまっている教室で、窓際の自分たちの机にそれぞれ腰掛けて、ボンヤリとしている。桜沢に関しては、まるで遊んでいるだけのような劇の練習を眺めたり、忙しそうな舞台装備品製作の班を眺めたりしている。
皆藤は、窓を眺めることにも本を読むことにも飽きて、自分の近くに居る製作班にチラリと目を遣った。製作班は、個人個人に分かれて作業をしている。4人で一緒にやるよりも、それぞれで分担した方が早そうなのだ。しかし、背景画担当の藤崎は1人では無理そうなので、劇の練習を終えた諏訪が途中から入って2人で作業をしている。
そんな中で、浜島は1人、小道具を作っていた。一見一番楽そうだが、実際は細々したものばかりで面倒臭い上にややこしい。しかもどうも手際が悪いのか、中々作業が進まない。委員長のときも現在の生徒会でも作業は迅速で好評なのだが、こういう図画工作的なものは弱いらしい。先ほどからずっと手の動きがぎこちなく、カッターやハサミを持っていると危なっかしいとすら感じる。

「アイツはドン臭いなぁ……」

思わず、桜沢も言葉を漏らす。ならば手伝ってやればいいのだが、明日からの肉体労働に向けて、なるべく体を動かしたくないのも本音。それに、自分から手を差し伸べたりしたら、真鍋にすごい視線をかけられそうだ。いつもクールに決めている真鍋だが、意外と独占欲が強かったりするのを、最近まじまじと感じさせられているのだ。
クラス内でも、浜島と真鍋の関係は、じつはバレバレである。それは意外にも真鍋が原因だ。本人は表情にも行動にもそこまであからさまには出していないつもりのようだが、今までの態度からの変化が突然すぎる上に、何よりも表情が違う。クールで毒舌ぶっていても、浜島を前にすれば隠し切れない"何か"が漏れ出す。それがただの幼馴染同士とは、誰がどう見ても思えない。それでも木下や桜沢が冷やかすようなことを言えば怒るのだから、扱いにくい。しかしそれが何だかとても微笑ましくも思え、周りは彼らを見守っている状態にあるのだ。もちろんそれは、担任・諏訪も然りである。
今も、すでに自分の作業を終えて休憩モードに入っていた真鍋は、誰を手伝うわけでもなくすっかりくつろいでいながらも、浜島のぎこちない仕草を見ている。どう考えても"危険ですので真似しないでください"というような危なっかしいカッターの使い方をしている姿に、真鍋は形の良い眉を寄せて"おいおい…"という表情。そして、ついに見るに見かねたのか何気なく近寄った。

「トロすぎやで。しかも危ない」

苦笑しながら、浜島の傍に座る。言われた浜島も苦笑した。
そして真鍋は、まだ殆ど片付いていない備品のひとつを手に取った。

「これ、リンゴやろ?形整えて色塗ればええの?」
「あ、うん。そう」

浜島が頷くと、真鍋は無言で素早く作業を始めた。そんな姿を、浜島も"嬉しい"という気持ちを顔中に出して笑っている。
それから真鍋は、浜島のカッターの使い方に眉を寄せて、ツッコミを繰り返しながら何やら指導を始めた。そんな2人は愉しげだ。他の生徒たちは、2人の仲睦まじい姿に慣れてきたのか、チラリと見て微笑んだだけで自分たちの作業を続けている。桜沢も、"やれやれ"という表情で笑った。皆藤は、"勝手にやってろ"という表情で視線を逸らす。

「見てへんで手伝え」

桜沢の笑顔に気付き不機嫌そうに近付いてきた真鍋は、呑気にしている彼に命令口調で言いながら頭をはたく。どうやら桜沢は、笑ってしまったがために、自分は作業の手伝いに巻き込まれたようだ。皆藤に助けを求める視線を送るものの、皆藤はどこ吹く風で知らん顔だ。"お前が悪いんだろ"と、その横顔が言っている。

「ほな、舞台設置のときは手伝えよ」

仕方なく、桜沢は机からピョンと飛び降りた。
文句を言いながら、桜沢は真鍋と浜島の手伝いを始める。
しかし、桜沢も相当の不器用のようで。

「お前、そこ違うってば。左右逆やろ」

と真鍋が言えば、

「ええねん、これで」

と桜沢は強引に作業を続行。いつも仲良いが故に(?)ケンカし合う2人は、やはりここでもド付き合いが勃発している。

「アカンって」
「ええねん。あ、お前もそこ違うやんか」
「ええねん、これで」
「何やねん、お前も俺と一緒やん」
「違うわ。お前はホンマに間違ってんねん」
「お前もやろ。どう考えても、紫のリンゴなんてあるか」
「毒リンゴやからええねん」
「紫色しとったら誰も食わへんわ。どっからどう見ても毒リンゴやん。どんなアホでも疑うわ」
「色弱の白雪姫やねん」
「どういうことやそれ」
「っさいのー、お前」

傍から見れば面白いようにしか見えない言い合いを始める桜沢と真鍋。そんな中に、

「ちょっと、2人とも間違えんといてぇや」

浜島が笑いながら間に入る。しかし、

「紫のリンゴはアカンよナベ。他の色にして」

なんて窘めるものだから、

「「いやいや、赤やろ?」」

と2人から同時に突っ込まれている。大声で言い合うそんな3人に、周りも思わず笑ってしまった。
真鍋が浜島との関係を取り戻してから、この3人は、何かと一緒に居ることが多い。桜沢と浜島も、関西人同士すっかり打ち解けてしまった。そしてその度に、こんな漫才のような会話を繰り広げている。

「お前ら、トリオ組んで芸人になったら?」

じつはかなり息の合いそうな関西トリオを、諏訪が笑いながら茶化した。
DOQは、クラスに確実に馴染み始めている。木下はまだしも、今まで皆藤と同じようにクラスに威圧感を与えていた真鍋と桜沢が、素顔を見せ、溶け込んでいる。クラスメートたちと打ち解け合っている。生き生きとし始めている。いつの間にかクラスの生徒たちも彼らを"くん"づけで呼ばなくなり、"来人""ナベ""留加"と愛称や下の名前で呼ぶ人間も増えてきた。

そんな中で、やはり単独主義なのは皆藤だ。彼だけは唯一呼び名が変わることもない。
今も、盛り上がる教室内から逃れるように、彼はその場をスッと離れた。
それに気付いた諏訪は、笑みを止めて顔を向けた。さっきまで言い合いしていた3人も、皆藤が出て行ったことに気付いて視線を向けている。一緒になって笑っていた木下も、出て行く皆藤を見て、苦笑混じりに俯いた。
皆藤は周りの視線に気付いていたが、振り向かずに教室を出た。少しだけ眩暈を感じたことも確かなのだが、何よりも、この場に自分は相応しくないと思ったのだ。
周りは、そんな皆藤を無言で見送ることしかできなかった。
しかし諏訪は、やっぱり放っておくわけにはいかなくて。咄嗟に後を追っていた。

「皆藤」

廊下で呼びかけると、渡り廊下付近に居た皆藤が立ち止まって振り返る。

「お前も、手伝ってくれない?」

何とか彼を引き止めたくて、笑顔で声をかける。このまま皆藤がクラスに馴染めないままではいけないし、今の皆藤の後ろ姿には"孤独"の色が濃かったのも切なかった。
だが、

「……悪いけど、俺いま、具合が悪いから」

あっさりとそう言って顔をそむけると、皆藤は歩きだしてしまう。
小さな声が、何となくあからさまな嘘にも思えず、諏訪は追うことを躊躇した。
すると、その場で皆藤が急に立ち止まって。ふらりと体が揺れたかと思うと……そのまま壁にもたれてしゃがみ込んだ。

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