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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-13:存在価値

PERFECT BLUE 13-02

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「皆藤?!」

慌てて、諏訪は駆け寄った。

「どうした?」

彼に合わせてしゃがみ、肩に手を置いて顔を覗き込む。最近また伸びた前髪から見える横顔は、やけに青白かった。

―――そうだ。コイツ、体が弱いんだっけ

皆藤が体が弱いことは町田から聞いて知っていたが、こんな風に座り込む彼を初めて見て、諏訪は改めてそれを痛感した。今ここに居る皆藤は、必死で平気な顔を作っているものの、どう見ても辛そうで。

「保健室行こう。立てるか?」

肩を抱きながら立たせてやる。軽い貧血なのかもしれないが、教室を出て行く皆藤の姿に"孤独"を感じていたせいか、このまま消えてしまうんじゃないかという不安が諏訪の心を支配していたのだ。

「1人で、行けるから」

諏訪の手を押し戻し、皆藤は1人で歩こうとする。しかし、そう言われて"はいそうですか"と言える諏訪ではない。

「ダメだよ、心配だ。一緒に行く」

皆藤の腕を引いて、諏訪は保健室に向かった。




「どうした?」

諏訪に腕を引かれて来た皆藤の蒼い顔を見て、机で書類を書いていた町田が心配そうに近付いて来た。

「なんか、気分が悪いみたいで。貧血だって本人は言うんですけど……」

心配気な表情でいっぱいにした諏訪が、皆藤を長いすに座らせる。
町田は、向かい側の回転イスに腰掛けた。俯く皆藤の額に手を当ててみると、熱はなさそうだった。それからその手を彼の頬あたりに移動し、顔を少しあげさせた。

「少し寝かせて、様子見るか」

伏し目がちの皆藤は顔色が悪いが、確かに貧血だけのように思える。最近アルバイトの方で、納品の期限だなんだと睡眠を削って無理したせいかもしれない。少し寝ていれば大丈夫そうだと察し、町田は側で立っている諏訪に笑顔を向けた。
諏訪も、

「はい。お願いしますね」

そう言って、皆藤に「ちゃんと休みな」と声をかけると、町田に軽くおじぎして保健室を出て行った。
ドアを出る瞬間、諏訪が、少しだけ皆藤に目をやって出て行く。しかし町田は、敢えて気付かないフリをした。
先ほど、町田が何気なく皆藤の頬や額に触れたとき、隣の諏訪が息を呑んだことに町田は気付いていた。その表情を隠すように諏訪は平気な顔を作って"お願いします"と担任らしい言葉を発し、さっさと顔をそらしていた。複雑な気持ちを断ち切るように、その場を去って行った。

「とりあえず横になれ。最近ちょっと無理しすぎちゃったな」

皆藤の肩をポンと叩き、町田は立ち上がる。
ベッドのカーテンを開けて準備してやりながら、少しだけ苦笑いをした。
あのとき確かに実感した、自分の独占欲。何気なく皆藤の顔に触れた自分は、明らかに諏訪を牽制しての行動のような気がした。
そう。あの時きっと自分は無意識に、諏訪に対して小さな"見せつけ"をした。

"コイツは諦めろ"

心の中にいつも感じている気持ちが、あの瞬間少しだけ表面に出ていた気がしたのだ。


諏訪は、そのまま真っ直ぐ教室に向かって歩いていた。
しかし、ふと立ち止まり、保健室を振り返る。
町田が皆藤に触れた瞬間、自分の心に何ともいえない感覚が走った。町田は養護教諭として、具合の悪い生徒の状態を診るために触れただけなのに。それでも諏訪は、目を背けたい衝動に駆られた。
優しく彼に触れた町田の手が、何だかとても自然で。それを拒否せずにジッとしていた皆藤の、素直な態度。それは、"体調を崩した生徒と保健の先生"というシチュエーションならば、普通にある光景なのに……。分かっているのに、直視出来ない自分が居た。曲がった見方しか出来ない自分が。
その感情は紛れもなく、"嫉妬"だった。

「最悪、俺……」

町田に対してまで、そんな感情を抱くなんて……見境のない自分に、諏訪は大きな溜め息が出た。
皆藤が卒業するまでは教師として見守ろうと、彼が仮面をつけなくても生きていけるようになるまでこの気持ちは押し留めておこうと、決めたはずなのに。そんな決意などお構い無しかの如く、大きくなっていく想い。
この気持ちを昇華する術は、あるのだろうか……

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