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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-13:存在価値

PERFECT BLUE 13-04

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視聴覚教室で行われている2年F組の劇は、大盛況だった。
DOQの木下と真鍋と桜沢が居ることに一瞬戸惑った生徒もいたが、それでも他のクラスメートと共に明るい笑顔で楽しそうにやっている彼らに、少し印象を変えたらしく、客の生徒たちは笑っていた。教師たちも、生き生きとしている3人の姿に、思わず驚きながらも楽しげに笑っていた。
そして2日目の今日、評判が評判を呼び、かなりの客が観に来ている。昨日に引き続き観に来た生徒もいる。
しかし、皆藤が現れる気配は無かった。2回公演のうち、もう1回目が終わってしまっている。

「来ないね、皆藤くん」

端で観ていた木下に、劇を終えた石原が近付いてきた。

「皆藤くんにも、観て欲しかったのに」
「そうだな」

木下も、俯いて答える。
朝、諏訪が必死で皆藤を説得していたのは知っていた。クラスに馴染もうとしない皆藤を諏訪がそこまで引き止めるのは、皆藤が以前のようにただ周りの人間を撥ね付けているのではなく、どうしたらいいのか戸惑っているからだと分かっているからだろう。自分の何気ない行動がクラスメートたちの窮地を救い、それによって自分への印象を変えてきた生徒たちに、彼が戸惑っているのだと。それは木下も真鍋も桜沢も気付いているし、他の生徒たちだって何となく気付いている。だからこそ、皆藤を待っているのだ。

「あと1回あるからさ。待ってみないか?」

信じて待ってみよう。木下は顔を上げて、石原にそう言った。
皆藤だって、このクラスを本気で嫌っているわけではないと、木下は確信している。最近サボりが減ったことからしても、それほど居心地悪いとは思っていなさそうだ。仲睦まじい真鍋と浜島を、呆れながらも見つめている姿をよく見かけるし、教室で富永がギターを弾いていれば、無関心を装いながらも何気にジッと聴いている姿も何度も見ている。彼なりに少しはこのクラスを"悪くない"と思っているはず。木下は、そう思えてならないのだ。
すると石原も顔を上げて、

「そうだね」

と笑顔を見せた。
周りを元気づけるその笑顔に、木下は心が温かくなって、自然と笑顔が出る。2人は笑顔で顔を見合わせた。

そんな2人の姿を、ジッと見ている人間がいた。
後ろで劇を見ていた客に紛れていた、その生徒。3年E組の、野田ら3人だった。




皆藤は屋上に居た。保健室にいても諏訪が迎えに来る事を察し、朝からずっと屋上に居たのだ。
どこも賑やかな校内で、まるで異空間のように静かな屋上。
思い出すのは、今朝の諏訪の言葉。
必死で自分を引き止める彼の瞳が、声が、頭から離れない。それが、皆藤をこの学校内に留めていた。昨日のように、さっさと帰ることが出来なくさせていた。

すると不意に、ポケットの中で着信を告げて震えるスマホ。
メモリに2人しか登録されていないスマホは、そう滅多に鳴らない。画面を見ると、そこには"宇賀"の文字。町田以外に皆藤が登録している、もう1人の人物だ。
通話ボタンを押し、無言で耳に近づける。

『あ、智司?今日は、まだ帰ってないんだね』

ロッカーに靴が残ってた。明るい声で、宇賀はそう言った。今日はバイクで来ていないので帰ったかどうか確認するために開けてみたらしい。

『昨日は、朝のホームルームで出席取った後、すぐ帰ったんだろ?靴が無かったもん』
「…勝手に開けるな」
『いいじゃん、減るもんじゃないし。それより、今どこ?あ、周りが静かそうだし、屋上かな』
「何の用なんだよ」
『ま、とりあえずそこ行く。俺午後は、係じゃないからさ』

皆藤が訊いている事に対して、宇賀は用件を話さない。本当に屋上でのんびりするつもりのような口ぶりだが、その裏にある意図が、皆藤には分かるから、

「劇なら、観に行かねぇぞ」

先手を打って言うと、

『あ、分かった?』

やっぱり相棒だね~なんて、呑気に答えてくる。嘘でも否定しないあたりが宇賀らしい。言っても皆藤に見透かされると分かっているのだ。

『俺、どうしても観たいんだけど。すっげー面白そうじゃん。俺昨日は、ずっと係してたから行けなくってさぁ』
「だったら1人で行け。俺を巻き込むな」
『冷たいなぁ。まあ、それならそれでいいから、とにかくそっち行くから待ってて。俺の相手してよ』

言うだけ言って、宇賀は強引に電話を切った。
しかし、そんなことを言っていたって、何がなんでも誘ってくるに違いないことぐらい、やはり皆藤には分かる。
宇賀には、諏訪とは違った"強引さ"があるのだ。諏訪のように真っ向から必死で引っ張ろうとするのではなく、素っ気ない振りを装いながらもさり気なく強引に手を引いてくる。気がついたときにはすでに遅く、彼のペースに巻き込まれている。そんな、したたかな強引さが。
彼がここに来る前に去るしかない。そう考えた皆藤は、スマホをポケットにしまうと立ち上がった。
しかし、

ガチャ。

ドアに手をかけようとした瞬間、勝手に開く。そこに現れたのは、

「待っててって言ったじゃん」

にっこり笑った宇賀だった。

「ここで電話してて良かった」

右手に持っていたスマホを目の前に掲げながら。
どこも騒がしい校内で皆藤が居られる場所など、宇賀にはお見通しだったらしい。目が"逃さないよ?"と笑っている。こんなところも、彼の強引さなのだ。
大きく溜め息をつきながら、皆藤は腕時計をチラリと見た。
F組の午後の発表5分前。朝のホームルームで何度も諏訪が言っていたから、開演時間は覚えている。きっとそれが自分に向けて言っているのであろうことなど、正直者の彼の視線で十分感じ取れていから。

「ったく、どいつもこいつも…」

皆藤は頭を掻きながら、宇賀を通り過ぎて屋上から出た。

「智司?」

宇賀が、首を傾げて振り返る。
皆藤は立ち止まり、顔だけ振り返った。

「行くんだろ?」
「え…」
「どうしても観たいんじゃねぇの?」

そしてまた、どんどんと歩いて行ってしまう。
表情を変えずにあっさりと答えた皆藤に宇賀は一瞬戸惑ったが、

「そうだね、急ごう!」

すぐに笑顔になると、皆藤を追いかけた。




2年F組の最後の発表。今回も客が溢れ、立ち見状態だ。昨日は仕事の都合で書類整理に忙しかった町田も観にきており、串崎と一緒に後ろで立っている。
だが、やはり皆藤の姿はない。舞台裏で諏訪は、大きな溜め息をついた。
室内を暗くして舞台だけにスポットライトをつけるために、木下と真鍋が電気を消しはじめる。
すると電気を消し始めた瞬間、入口に人影が現れた。
一瞬だけ期待を胸に、彼らが視線を向ければ、

「あ、ギリギリ間に合った」

現れたのは宇賀だった。少し小声でF組の生徒たちに笑いかけてから、後ろを振り返る。入って来たのは……

「あ」

クラス全員が小さく声を出した。諏訪も、目を丸くする。
現れたのは、皆藤だった。
彼は音響担当の席には来なかったが、宇賀と共に後ろの方へと向かう。どうやら、観客として来たようだ。
皆藤に気付いた客の生徒たちの中には思わず顔を強張らせてヒソヒソと話をする者もいるが、宇賀は全く気にせずに皆藤の腕をぐいぐいと引っ張っていく。皆藤も、自分を見て緊張の表情を見せた客の生徒たちなどあっさり無視して、平然とした表情で歩いていく。そして、2人は町田と串崎の隣に立った。
生徒と諏訪に、瞬時にパッと笑顔が溢れた。たとえ客としてでも、彼が来てくれたことが嬉しかった。

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