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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-13:存在価値

PERFECT BLUE 13-06

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「アイツ、やっぱりフケやがった」

舞台装備を片付けながら、真鍋が不機嫌そうに呟いた。
文化祭が終了し、帰りのホームルームを視聴覚室で行った後そのまま後片付けを再開したのだが、皆藤は現れなかったのだ。

「ったく、ホンマにあの野郎は……」

ブツブツと文句を言う真鍋だが、言葉とは裏腹に、そこには笑顔が浮かんでいる。他のクラスメートたちも笑顔だ。皆藤が本番に参加しなかったことは残念だが、それでも舞台を観に来て、そして少しでも笑顔を見せたことが、何よりも嬉しかったのだ。

「ま。後で俺がみっちり説教だな」

諏訪も、笑いながらそう言った。

『待ってるから』

その言葉に彼が応えてくれたことが、嬉しくて仕方なかった。
彼を信じて待っていて良かった―――誰もがそう思った。
それからはまたワイワイと騒ぎながら、生徒たちと諏訪は片付けを終えた。





「なぁ、宇賀」

2人でベッドに横になっていると、ずっと黙っていた皆藤が不意に声をかけてきた。

「ん?何?」

自分から声をかけてくることなど滅多に無くなってしまった皆藤だけに宇賀は少し驚いたものの、そんな本心は見せずに普通に返事をしてやる。仰向けで天井を見上げていた顔を、皆藤の方へと向けた。皆藤は、天井を見上げたままだ。

「何で、俺が生きていることを確認したいんだ?」

唐突な、質問。その表情からは、彼の感情は読み取れない。

「……何で、って?」
「俺が生きようが死のうが、お前には何の支障もないだろ」

諏訪といい、クラスメートといい、この宇賀といい、どうしてそこまで自分に拘るのか皆藤には分からない。自分のことなど、彼等の人生には全く関係ないことなのに。どうしてそこまで、自分の存在を欲しがるのか。

「……何言ってんだよ」

皆藤の発言に少しムッとして、宇賀は皆藤の上に覆い被さった。
噛み付くようなキスをお見舞いしてから、真っ直ぐに皆藤を見下ろす。皆藤は、特に感情を見せないまま宇賀を見上げている。

「俺は、お前が生きててくれなきゃ嫌なんだよ。お前がどう思ってるか知らないけど、俺にとって智司は、一番の親友だから」
「………」
「どんな時だって、智司以上に俺のこと分かってくれてるヤツなんて居ないよ」
「………」
「俺はお前の相棒で、お前は俺の相棒で。だから、どっちか片方を失うことなんて出来ないんだよ」

宇賀の真っ直ぐな視線が、皆藤を捉えて離さない。
堪りかねて、皆藤は宇賀から視線をはずした。
しかし、背けた顔を再び正面に向かせられる。

「お前が生きてる理由に俺が入ってなくても、俺はお前が生きててくれないと辛い。お前だけは、失いたくない」

視線を合わせてこない皆藤に、必死で訴える宇賀の声は、少し震えていた。
皆藤は、何も言えなかった。
宇賀は、確かに自分の親友だった。今だって、彼を以前のように信じきることは出来なくなったとはいえ、それでもスマホのアドレスに町田以外で唯一登録を残すぐらいには、他の人間とは違う存在だと思っている。変わり果てた自分を変わらずに必要としてくれている彼を、自分の無罪を信じ続けた彼を、信じていないわけではない。大切じゃないと思っているわけではない。
しかし、もし宇賀を失ったとき、自分は辛いと思うだろうか。こんな風に、声を震わせて悲しめるだろうか。"失いたくない"と思うのだろうか。そう考えたとき、即答できない自分が居て。そしてそんな自分を皆藤は、酷く冷たい人間だと思うのだ。

「信じない……」
「……智司?」
「お前らにそんな風に思われる資格ない俺が、そんな言葉信じられるわけない」

自分が生きている理由に、宇賀は入っていない。諏訪も、クラスメートも、入っていない。
そんな自分を、大切だと思わないで欲しい。失ったら辛いなんて、思わないでほしい。

「いいんだよ、智司」

先ほどの怒ったような瞳を優しい笑みに変え、宇賀は今度は優しいキスをした。

「見返りが欲しいなんて、思ってない」
「………」
「それに、俺にはお前の気持ち、ちゃんと届いてるから」

皆藤が、自分をそれなりに"相棒"として認めてくれていること。親友としての宇賀を、彼なりに思ってくれていること。戸惑いながらも、少しは信じてくれていること。宇賀には分かる。

「敢えて言葉にするなら、それが"見返り"かな?」

少し陽気な声で、宇賀は笑った。

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