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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-14:フラッシュバック

PERFECT BLUE 14-03

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[2]

「石原」

あの放課後から3日。野田たちの視線を感じる中でも特に変わりなく過ごしていた中、いきなり石原は呼び止められた。
振り返らなくても分かる。きっと、1人で帰るところを見計らっていたのかもしれない。昨日も一昨日もその前も、石原は木下と帰ったり富永たちと帰ったりしていたから、彼らは近寄ってこなかったのだろう。

「………」

誰もいない昇降口。石原は、ゆっくりと顔を向けた。
そこに居たのは予想通りの、野田ら3名。

「ちょっと、付き合えよ」
「………」
「話、しようぜ」

野田は、どうせまた脅してくるだけに違いない。石原は、そう考えていた。
しかし、何を言われたって自分の意志は変わらない。

「俺は仲間になんてならないから」

木下を売ることなんて、絶対にしない。

「いいから来いよ」

近付いてきた野田が、グイッと石原の腕を引く。予想外に強い力に、細身な石原の体は引き寄せられるがままに動いた。

「言っただろ?"そんなこと言ってられるのも今のうちだ"って」
「………」
「聞き分けの悪い子には、俺たちも怒るよ?」

不敵な笑みに見つめられ、石原は腕を引かれるがまま、昇降口を出た。




「あれ?柊もう帰った?」

真鍋と購買にパンを買いに行っていた木下は、教室に残っている桜沢に声をかけた。すでに下校時間を過ぎた教室。居るのは、桜沢と、部活に顔を出しに行った富永を待っているらしき谷原のみ。

「さあ。バッグもないし、帰ったんちゃうん?」
「あ、今日柊ね、バイトだって。とっくに帰ったよ」

2人の会話を聞きつけた谷原が、後ろから声をかけてきた。

「あぁ、バイトかぁ」

谷原を振り返り、木下は頭を掻く。今日は何も予定がないので、一緒に帰ろうかと思っていたのだが。

「ま。そういうことで、俺と軽食しようや」

買ってきたパンをヒラヒラと掲げ、真鍋がにっこりと笑う。真鍋は、今面接中の浜島を待っているのだ。木下も小腹が空いたので一緒に買いに行ったのだが、真鍋の時間潰しに付き合わされることを、買い終わってから気付いた。桜沢曰く、生徒会の用事を終えて戻ってきた浜島が面接に向かったのはつい先ほど。故にここから小一時間、真鍋に付き合わされるということだ。

「なぁ。俺が頼んだホイップ入りメロンパン、買うてきてくれたぁ?」

自分の机の上に座っていた桜沢が、ピョンと飛び降りて真鍋たちが持っている袋を覗き込む。
それを眺めながら木下は、皆藤の机の上にまだ彼の荷物があることに気付いた。

「なあ、皆藤は?」
「ん?写真撮りに行った~」
「この寒空の下?外、すっげぇ寒いよ?」
「コート着て行ったで」

すでにパンの袋をガサガサやっている桜沢は、木下の話など適当に受け流し状態だ。
それにしてもこの寒さで写真とは、皆藤は本当に変わったヤツだ。木下はそんなことを考えて、思わず笑ってしまった。そして仕方なく、皆藤の席に座った真鍋と自分の席についた桜沢の間で、自分は皆藤の机に腰掛けてパンを食べ始めた。

それから木下は、真鍋や桜沢とのバカ話に花が咲き、楽しそうにそれを聞いていた谷原も巻き込んで、気付けばパンを片手に30分も盛り上がっていた。
すると、富永が部活の話し合いを終えて帰って来る。

「あ、トミー。終わった~?」

谷原が、話の輪から抜けて近付いて行く。すると富永は曖昧に頷き、そして、窓際に並んで軽食を取っている3人に、特に木下に目を向けた。

「?」

何だろう?と木下が首を傾げていると、富永が少し心配そうな面持ちでこちらに寄って来る。谷原は首を傾げつつも、そんな富永に付いてきた。

「来人…」

掛けて来た声が何だかとても真剣味を帯びていて。木下は、パンを食べる手を止めた。真鍋と桜沢も、食事をしながらもそれを興味深そうに見つめている。

「トミー…?どうした?」
「あのさぁ、さっき俺、部活の先輩に気になること聞いて……」
「気になること?」
「うん。柊のことなんだけど……」

突然出て来た、石原の名前。ここ最近、明らかに何かがおかしい石原の。
木下の表情が、サッと真剣にものに変わる。
富永も、心配そうな色を濃くしながら見つめてくる。

「柊が、何?」
「じつはね、3日ぐらい前、柊が野田先輩たち3人と中庭で話してるとこ、ウチの部の先輩が見たって言うんだ」
「え……?」

3日前。それは、富永と木下と浜島が、文化祭反省会に出席していた日だ。あの時確かに石原は、『じゃあ俺は校内探検でもしてようかな~』なんて言っていた。

「何か、絡まれてるっていう感じとも、ちょっと違ってたみたいでさ」
「どういうこと?」
「俺もよく分からないんだけど…。先輩が言うには、野田先輩たちが柊にじっくり話し込んでるみたいな感じだったらしいんだよね」
「………」

木下が思い出すのは、反省会が終わって教室に帰ったとき、ぼんやりと席に座っていた石原の姿。木下に気付いてすぐに表情を戻したけれど、決して普通ではなかった彼の姿。
野田と、一体何を話したのだろうか……?

「それでね、来人」

富永は、木下の学ランの袖をクッと掴むと、不安そうな顔で見上げてきた。

「ウチの部のその先輩、野田先輩たちと同じクラスなんだけど、あの3人、最近おかしいんだって」
「おかしい?」
「何か、いっつも3人で固まってヒソヒソ話してて、誰かを見張るかのように、教室を出て行くんだって」
「……誰か」
「先輩はそれが、柊なんじゃないかって言ってた。野田先輩たちが3日前に柊に中庭で話しかけてたのも、多分、尾けてたんじゃないかって」
「………」

富永の言葉に、木下も真鍋も桜沢も、顔を見合わせた。
野田たちが石原を狙う口実なら、多すぎる程ある。石原は、野田たちが鬱陶しく感じているDOQの木下の親友で、DOQとも比較的交流があって、手がつけられない問題児だった木下を更生させた人物。そのおかげで木下は諏訪のことを素直に信じることが出来たし、クラスにもどんどん馴染み、笑顔が増え、学校生活を心から楽しむようになたった。それを野田が、良く思うはずがない。
きっと野田は、自分には見向きもしなかった木下が、野田を潰したチームのリーダーであった皆藤にあっさりとなびき、そして親友を得て、真っ当な道を進もうとしていることを許せないのかもしれない。3人の見解は、言葉にはしないまでもそう一致していた。
しかしだからって、

「柊は関係ないだろ……」

木下は、苛立ちを抑えきれないように前髪をクシャリと掴みながら呟いた。
文句があるなら、自分に言ってくればいい。ケンカを売るなら、自分に売ってくればいい。どうして、力の弱い石原を狙うのだ?と。

「でも、きっとアイツはそう思うてへんのや」

真鍋が、ポツリと呟いた。

「来人とか皆藤とか、力の強い人間には面と向かって勝てへんから、周りから攻めるしかないんやろ。富永の先輩の推測、あながち間違うてへんかも」
「……卑怯なヤツ」

思わず漏れる、怒りの言葉。まだそうと決まったわけではないけれど、石原に話し掛けるという時点で、木下にとって腹立たしいことだ。自分たちではなく、石原に手を出そうとするなんて……。

「でも柊、大丈夫かなぁ?今日、1人で帰って行ったよ?」

黙って話を聞いていた谷原が、不意に、心配そうに口を開いた。
その言葉に、全員の表情に緊張が走った。
もし本当に野田たちが石原の動きを監視しているなら、確かに危ない。
教室の時計は、彼が下校してからすでに1時間近くが経っている。もし石原が無事ならば、バイト先に着いているはずだ。
バイトは平日はいつも17時からだと言っていたから、まだ15分余裕がある。電話をすれば、彼は絶対に出るはず―――そう思ったら、すでに木下の手はズボンのポケットに伸びており、石原へと電話をかけていた。

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