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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-14:フラッシュバック

PERFECT BLUE 14-08

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「お前は、石原の傍にいろ」

皆藤はそれだけ告げると、自分が野田の前に歩み寄った。
木下もとりあえずその場を皆藤に任せ、石原に歩み寄る。
傷だらけの石原を動かすのは躊躇われ、木下は傍にしゃがみ込むだけしか出来なかったが、それでも石原は木下を見て安心したような息を漏らした。その姿に、木下の胸は再び激しく痛んだ。

「皆藤、お前は懲りないヤツだな」

野田が、強張る表情を努めて冷静に保ちながら、吐き捨てる。他の2人は、皆藤の存在に怯えて手も足も出ないのか、黙ってそれを見つめている。
木下も、2人をジッと見つめていた。

「お前もな」

皆藤が、フッと笑みを漏らす。それは、あまりにも冷たくて、美しさが不気味だった。野田たちの顔はますます引き攣った。

「カニの裏側みてぇな顔して、よくもまぁ、いろいろ考えるよなお前も」

こんな緊迫した状況の中でも、皆藤は5月のあの日のように冷静で、口調は軽い。とはいえ木下は、さすがにこの状況下では笑えなかったのだが、

「確かに…」

今度は、あの日笑うのをこらえていた石原が、小さく呟きながらフッと笑う。血だらけの姿で笑う余裕などないはずだが、良くも悪くも空気を読まない皆藤に可笑しくなったようだ。
だが、冷静なのは皆藤と石原だけのようで、言われた野田本人は反論もせず、むしろこんな空気の中でそんな言葉を吐く皆藤に対して更に不気味さを感じたように眉を寄せた。
皆藤が、一歩、野田に近づく。

「まあでも、お前の言うとおり、俺も大概懲りない奴だと思うよ」
「………」
「またお前にハメられるかもしれないのに、よく来たもんだ、って……」

その言葉で、反論しない野田の態度で、木下も石原も"やっぱり"と確信した。
2年前のあの事件。あれはやはり、野田の罠だったのだと。宇賀の言うとおり、皆藤をハメたのは、野田だったのだと……。

「たださ、お前は昔っからオリジナリティがねぇんだよ」

呆れたように溜め息をついて、皆藤がさらに一歩近づく。野田は思わず、一歩下がった。

「やることも溜まる場所も、何かの真似事みたいなものばっかりで。どんな媒体に影響されたのか知らねぇけど、ダセぇんだよ。どこの国の何つー映画観たら、そういう奴出てくんだ?」
「なっ……そ、その罠にハマったお前が言うんじゃねぇよ」
「そうだな。ちょっとあのときは感覚鈍ってたわ。
でも、あれのおかげで俺も勘が戻ったよ」

冷たい笑みを崩さず、皆藤は野田の至近距離まで一気に近付き、後ろに下がろうとした野田の肩をグッと掴んで動きを制する。

「だから、これがたとえお前の罠でも、それならそれでいいと思ったんだ」
「……ど、どういう意味だよ」
「2年前の仕返しも含めて、てめぇをブチ殺してやろうかなってさ……」

久し振りに聞く、皆藤の冷ややかな言葉だった。
何の感情もない、全てを撥ね付ける、そして近付く者に刃を向く、皆藤のガラスの表情と言葉。
野田が、ヒュッと息を呑む。

「俺、言ったよな?少年院なんて、1回入れば2回も3回も変わらないって」
「……お、お前をハメたのは、俺だけじゃない。シンもだろ?!」
「アイツはあれっきりだろ?お前だって1回で止めときゃいいものを、懲りずに何度も何度も邪魔しやがって」
「………」
「俺が呼ばれていた"レクター"って名前は『羊たちの沈黙』のレクター博士からきてるって、彼がどんな殺人鬼だったかなんて、お前バカだから知らないだろ。
観たことないだろうから教えてやるけど、レクター博士は、人間を利用して見下す奴や嘘つきが嫌いなんだ。彼の殺害対象はそういう奴らばっかりだ。他人を思いやれて敬意を払える人間には、彼は寧ろ好感を持ち、その相手に敬意を払う。精神異常者だから殺人に走っただけで、彼はある意味、性別も身分も関係なく公平に人間を見ることのできる人間だ。
そしてお前は嘘つきで、人を利用して見下している。俺はお前が大嫌いだ。
大人しく出来ない子には、きちんとお仕置きしねぇとな?」
「……っ」
「安心しろよ。俺は精神異常ではないから、食ったりはしな…」
「ふ、ふざけんなっ!!!」

言葉と同時に、思い余った野田が、思いっきり皆藤に拳を振り上げた。

「皆藤!!」

木下は、思わず叫ぶ。
華奢な皆藤の体は床に叩きつけられ、大きく倒れこんだ。
しかし、皆藤は何事もなかったかのようにすんなりと起き上がる。表情を、少しも崩すことなく。氷のような微笑みをたたえ、彼は再び立ち上がった。

「クソッ……」

皆藤が抵抗しないことを悟り、野田がまた拳を振り上げる。
だが、皆藤が素早くその腕を掴み上げた。
そして、口元から流れた血を拭おうともせず、自分より少しだけ背の高い野田を見つめる。皆藤の整った顔と滑らかな肌に浮き上がる口元の傷と血が、彼の氷の表情を際立たせ、人間とは思えないほどの美を造り上げていた。

「野田。お前は本当にバカだなぁ。ブリスト時代は周りに助けられてたんだな、ホント」
「……なっ…」
「正当防衛って言葉、知らねぇの?」
「………」
「お前が先にかかってきた以上、俺がどれだけお前をボコボコにしても、それは"犯罪"じゃない。あくまで"過剰防衛"だ。
それとも、そのぐらい俺にこてんぱんにやられたいのか?お前やっぱドM?いいぜ?やってやっても」

張りつめた緊張感が、広い倉庫内に響きわたる。
そして―――
次の瞬間、耳をつんざくような高い音が、その静寂を破った。
それが警察のパトカーのサイレンだと気づくのに、そう時間は掛からなかった。

「お前……」

野田の顔が、一層歪む。
皆藤は野田の腕を掴んでいた手をスッと離すと、再びニッコリと微笑んだ。

「残念。ここまでだわ」

そして、学ランの胸ポケットに入れていたスマホを掲げる。

「俺が木下に遅れて来たこと、もっと疑うべきだったんじゃねぇの?」

皆藤が木下を先に行かせた理由は、警察を呼ぶためだった。
やはり皆藤にはきちんと考えがあったのだと、木下は理解した。警察に倉庫の場所を伝え、自分の仲間がリンチに合っているとでも告げたのだろう。中の光景も見ずに。野田の容赦ないやり方を知っているからこそ、そうしたのかもしれない。諏訪からの電話が、皆藤に現実を教え、その行動に走らせたのだ。

「お前らっ!!何してるんだ!!」

ドアから駆け寄ってくるなり、入って来た数人の警察が叫ぶ。
出口を完全に阻まれ、野田たちは逃げる術もない。あっさりと3人は、取り押さえられた。
そして警察の手は、彼らと対峙していた皆藤にも当然のように伸び、その腕を掴み上げられる。

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