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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-14:フラッシュバック

PERFECT BLUE 14-09

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そのまま腕を後ろに回されるまでは本当に一瞬で、皆藤もまた、警察に取り押さえられた。
しかし次の瞬間、

「違いますっ!!」

倒れこんでいた石原が、声を振り絞って叫んだ。
木下は、思わず石原を凝視する。皆藤も、石原を見た。

「彼は、違います。僕のクラスメートです。彼ら2人で、僕を助けに来てくれたんです」

木下の腕を引っ張り、そう訴える。木下も頷いた。

「そうです。ちゃんと見てくださいよ。コイツだってケガさせられてるでしょ」

無傷の3人を見れば皆藤が無抵抗だったとわかるはずだと。必死でそう告げると、警察も納得したのか皆藤を離した。
野田たち3人だけが、連行されていく。

「てめぇっ!!」

連行されながら、野田が悔しそうに皆藤を見て叫んだ。最初から皆藤は自分に手を加える気など全く無かったのだと、分かったのだ。全て、彼の計算だったのだと。警察が来るまで、野田たちをここに留まらせておくための時間稼ぎだったのだと。
皆藤は、何も言わずにそれを見送っていた。だが、

「野田、お前にひとつだけ言っておくよ」

不意に、そう口を開いた。
怒りの表情でいっぱいにしていた野田が、眉を寄せる。皆藤が何かを言いたそうなのを察し、彼を連行していた警察も、少しだけ歩みを止めてやった。

「俺は、ブリストに居た頃、そんな風になる前のお前と一度だけ話をしたことがある」
「……は?」
「その時お前が俺に聴かせたハーモニカ。あれだけは忘れてない」
「……ハーモニ……」

皆藤に言われて、昔のことを頭に浮かべた野田が、次の瞬間、顔色を変えた。
思い出したのは、ある夜の出来事。
自分がブリリアント・ストリートに来たばかりの頃、自分の窮地を救ってくれた人物に一度だけ聴かせたハーモニカ。
忘れるわけがない。自分が他人に聴かせたハーモニカは、後にも先にもあの人物だけ。

「お前…だったのか?」
「………」
「あれは、お前だったのか?」

顔はよく覚えていなかった。深夜の暗がりで、帽子を目深に被ったあの人物の顔など、全く見えなかったから。

「なんで……だってお前、そんなこと一言も…」
「お前に再会したとき、お前はすでに他のグループに居た。俺を倒すことに必死だった」
「………」
「だから俺も、お前はあの街でそういう人間になったんだって理解して、お前のケンカを買ったんだよ。
お前ほど、あの街に似合わない人間は居なかったのに」

何の感情も見せずに語る皆藤だが、そこにはハッキリと悲しみの表情があった。初めて見たその顔に、野田も言葉を無くした。
あの日、初めて来たブリリアント・ストリートで、新入りの野田は多くの人間に絡まれた。ケンカの術も知らなくて、体格だって当時は決して良いとはいえないかった野田には、絡まれたところでどうにも出来なくて。
その中で、いきなり現れて自分の手を引いてくれた人物。
路地裏まで自分を引っぱって行き、誰も来ないことを確認すると、彼は言ったのだ。

『お前には、この街は似合わない。早く帰れ』

その言葉は、今でも野田の記憶の中にしっかりと残っている。ぶっきらぼうで冷たかったが、優しかった。
だからどうしても彼にお礼がしたくて、野田はあの日、得意のハーモニカを聴かせた。彼は黙って聴いてくれていた。
そして去り際にもう一度、

『二度とここに来るんじゃない』

念を押して、風のように去って行った。
それでもあの街に行ってしまった自分。突っ張るだけで親に反抗し続けた結果、家で居場所を失い、学校でも友達が出来なくて、あの街に居場所を求めてしまった。自分と同じような境遇の人間がたくさんいる、あの場所へ。
そして自分は、そこで仲間を作り、変わっていってしまったのだ。彼の言葉を、彼のことを忘れようと決めて。気が付けば、あの街で"一番"になることだけを考えるようになっていた。

「皆藤……」
「お前は、俺があの街で出会った人間たちの1人に過ぎない。お前みたいなヤツ、たくさん会ってきた。
だけど…あの音色だけは、決して忘れてなかった。良い音を奏でる奴だと思った。だからお前のこと覚えてたんだ」
「………」
「さっさと行け」

吐き捨てるように言いながら皆藤は野田から視線を外すと、木下と石原の元へ歩いて行った。
警察が、再び野田を連行していく。野田は、何度も皆藤を振り返っていた。しかし皆藤は振り返らなかった。

「今、すぐ救急車も来るからね」

警察の1人が皆藤たちに告げ、その場を去っていく。3人は、その場に取り残された。

「皆藤……」

先ほどの皆藤の言葉に胸を打たれた木下が、彼を見つめる。しかし、皆藤の表情はすぐに冷静で淡々としたものに戻っていた。

「俺より今はコイツだろ」

言われて、木下もハッと気が付く。
とはいえどうしたら良いのか分からず、血が目に入って痛そうにしている石原の顔を、優しく拭ってやるしか出来ない。そんな木下の隣で皆藤は、手際良く応急処置をしていた。

「………」
「お前は、元ヤンのくせに傷の手当ても出来ねぇのかよ」

呆然と皆藤の手順を眺めている木下に、皆藤は溜め息まじりに呟く。木下は苦笑いし、石原に視線を戻した。
痛々しい、息も絶え絶えの石原に、木下の胸は締め付けられる。自分のために、身を危険に曝した石原。自分は、彼に守られてばかりだ。

「ゴメンな、柊。俺がもっと早く、気付いていれば……」
「何…言ってんの」

弱々しい声で、しかしニッコリ笑い、石原は木下を見上げた。

「こうなったのが、来人じゃなくて俺で良かったよ……」

その言葉は、木下の今までの緊張感を一気に壊した。無意識の内に、涙が零れていく。

「ゴメン。ホント、ごめんな…柊……」
「来人……泣かないでよ。俺、来人の笑ってる顔が見たいよ……」

優しく、木下の頬に流れる涙を拭ってくれる石原の手。木下はその手を握ろうとしたのだが、石原の手が不意に、パタリと落ちた。

「柊?」

ハッとして、木下が呼びかける。しかし、石原の瞳は固く閉じられていて。

「柊っ!おい!」
「バカッ、動かすな!」

取り乱して石原の体を揺すろうとした木下を、皆藤が即座に制する。木下はまた、皆藤の大きな声を聞いた。

「大丈夫だ。痛みで意識失っただけだから」
「……でも」
「いいから、動かすんじゃない。そのまま待てよ」

きつい口調でピシャリと言われて、木下はやっと我に返って動きを止めた。
やがて、救急車の音が2人の耳に届いた。


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