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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
2幕-15:カウントダウン

PERFECT BLUE 15-07

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「野田が、全部吐いたんだよ」
「……え…?」
「2年前の事件は自分が主犯で実行犯だって。その経緯も、お前を騙したってことも、洗いざらい言ったそうだ」

聞いてもいないのにね、言ったらしいよ。諏訪はそう続けた。そして、皆藤を見てニッコリ笑う。

「お前には、償いきれないこと、たくさんしたってさ。警察も弁護士も言ってたけど、捕まってからずっと、アイツは泣いていたそうだ」
「………」
「この間、石原のことがあって彼と接見してきたとき、俺にもそう言ってた。それを本気ととるか演技ととるかはお前次第だけど。
野田はね、お前が再審請求するなら、応じるって。それで償えるなら、そうしてほしいと。お前についた傷を、今からでも遅くないなら消させてほしいって。
野田の発言で、警察も動かざるを得ない状況みたいだし。恐らくお前には正式に謝罪が来ると思う。そしたら再審請求を…」
「それはいい」
「皆藤?」
「いいよ。そんなつもりでアイツに言葉をかけたわけじゃない。俺はただ…」
「更生してほしかったんだよな?」

まるで分かっていたように諏訪は言葉を繋げた。きっと皆藤はその言葉を言わないだろうから、言う前に口を閉ざしてしまうだろうからと。
皆藤は何も言わない。諏訪はそれを、肯定と捉えた。

「そう言うんじゃないかと思って、野田にはそう言っておいたよ。恐らく皆藤はあの事件を掘り起こすつもりはないだろうって。だから、皆藤にかけられた言葉をちゃんと胸にしまって、今度こそ更生しろって」

そしてそんな経緯を石原にも諏訪は説明したのだ。その結果石原は、野田を訴えず示談に応じる結論を出した。

「野田は、親に頼んで退学するって言ってた。定時制高校にでも入って、もう一度、高校生活を1からやり直したいらしい」
「………」
「お前が自分にくれたあの日の優しさと、こんな自分でも更生を望んでくれている今の優しさと、それからあの頃の自分を思い出して。怖がらずに自分自身を見つめたい、って」

微動だにせず無言で聞いている皆藤に、諏訪は優しくそう言った。
皆藤と野田の出会いは、諏訪はあの後、木下から聞いていた。だからこそ、野田が言っていた言葉を、きちんと伝えたいと思った。皆藤の言葉に、野田が大切な何かを思い出したことを教えてやりたいと。

「他の2人はね、石原の言うとおり、結局野田に反抗できなくて一緒に居たわけだろ?アイツが急にそんな風になって、混乱してるみたいだ。
でも、とりあえずこの学校にはもう居られないって言ってて、退学するらしい。1人は親が店をやってるからそこを手伝うらしくて、もう1人は、野田と一緒で、別の定時制高校に通いなおしするかもしれないらしいよ」
「……そう」
「うん。で、野田は、両親と一緒に田舎に引っ込むってさ。父親の方の田舎にね。だから、皆藤の前にも二度と姿は現さないし、それがお前へのせめてもの償いなんだって」

『アイツには、きっと一生かけても償えないようなこと、したんだ』

野田はそう言っていた。自分を助けた人を忘れ、その人をたくさん傷つけた。もしも彼があのまま人を信じず、孤立したままの人生を送るとしたら、それは自分の責任だ、と。

皆藤は、無言のまま俯いていた。諏訪の温かくて優しい瞳が苦しくて、顔を上げることも出来なかった。
諏訪を筆頭に、みんなが自分をそんな瞳で見る。それを受け止めることが出来ない自分。受け止め方を知らない自分。

「……皆藤は、優し過ぎて、悲しいね」

彼の横顔がとても悲しくて、諏訪はふと、そんな言葉を漏らした。

「そうやって、自分にも優しくすればいいのに」

自分に優しくなれない皆藤。優しくしないんじゃない、優しくする方法を知らないのだ。だから悲しいのだと諏訪は思う。

「放っとけ」

フンと悪態をつく皆藤は、やっぱり彼らしくて笑えた。だから、諏訪も少し言葉を明るくして言った。

「そういえば、"2年前の事件"ってので思い出したけど。お前、村山さんと連絡取り合ってるらしいな」

つい先日、年末の挨拶も込めて皆藤の近況を報告しようと諏訪が村山に連絡をしたときに、そんな話をされたのだと。
村山は、2年前の事件の被害者男性。諏訪と町田の説得によって、皆藤にかけられた冤罪を証明してくれた人だ。
すると皆藤は少しだけ眉を寄せながら久しぶりにこちらを見た。

「すごいので思い出してくれたな」

呆れたように、しかし少しだけ笑う。それはバカにしたように鼻で笑うようなものではあったが、何故かそこに邪気や冷たさは決して感じられず、寧ろ親近感を感じて諏訪はまた嬉しくなった。

「しょうがないだろ、本当に思い出したんだから。それはいいとして、村山さんにちゃんとお礼の手紙、出してたらしいじゃないか」
「手紙じゃない、葉書だ。それに、お礼とかじゃない、ただの暑中見舞い。しかも取り合ってなんてない。その1回こっきりだ」
「ああ、そういえば暑中見舞いとか言ってたかなぁ。ああそれで、村山さんと話してた内容の中で、お前に伝言があるんだ」

そう言いながら、諏訪はポケットに入れていたメモ帳を広げる。

「えっと……ああ、そうそう。お前がくれたその葉書のさ、写真がすごい気に入ったらしいんだよね。村山さんてグラフィックデザイナーやってるらしくて、元上司って人が興した会社で働いてるらしいんだけど、あの葉書を作ったのが皆藤なら、ひとつ仕事を手伝ってもらいたいって」
「……は?」
「会社のホームページ上で、今度素材の無料サービスを始めるらしい。写真素材の特集の時に、お前の写真を使わせてもらいたいんだってさ。3月の特集として予定してるらしくて、2月中旬ぐらいまでに素材を集めたいらしい。いま何人かに声をかけてるみたいなんだけど、そのうちの1人として参加してもらえないかって。
そういう用件をわざわざ手紙で送るのは重すぎるし、でも皆藤の電話番号わからないし、そもそもこういのって保護者の許可が必要かもしれないって思ったらしくて、それで、学校に連絡くれたんだ」

そして諏訪はメモをちぎり、皆藤に渡した。

「これ、村山さんの電話番号。自宅と携帯。本人の許可もらってるから大丈夫だよ。なるべく早めに連絡してやって」
「………」
「村山さんね、"いい腕してる"って何度も言ってたよ。何より写真が素晴らしいし、編集の力も、まだまだ粗削りではあるけど悪くないって」

『これも縁だと思うんです。ぜひ、彼と仕事をしてみたい』

村山はそうも言っていたのだと、諏訪は教えてやった。

「袖振り合うも他生の縁、だぞ。皆藤」
「は?何だそれ」
「何だよ、みんな知らないんだな」

このクラスに初めて来た4月の放課後、木下とそんな会話をしたことを思い出して諏訪は笑った。驚異的な偏差値を持つ皆藤でも、知らない言葉もあるのかと。そう思えば更に笑えてくる。

「ここで諏訪先生が国語の授業してやってもいいけど、もうあんまり時間ないし、自分で調べてみな。その方が覚えるし」

そろそろ授業終了の時間だと気づいた諏訪は、学食が混み始める前に昼ご飯を食べに行こうかと桜沢の机から降りる。

「村山さんの連絡先、それ失くすなよ?落としたら個人情報流出だからな。
それから、皆藤さぁ、さすがに携帯の番号ぐらい教えてくれないか?何か用があるとき、いっつも捕まらないんだもん。今回の件では木下が一緒だったから何とかなったけど、これから進路のこととかでいろいろと連絡が必要になるんだからさ、自宅にいつも居るとは限らないだろ?」

このクラスで、唯一携帯番号を教えてくれないのが皆藤だ。諏訪も生徒たちも、彼以外の人間はみんな互いの番号を知っている。

「ちなみにこれは、俺の番号ね」

先ほどのメモ帳に書いて破り、皆藤に渡す。
皆藤はそれを無言で受け取ると、本の間に挟んで立ち上がった。

「皆藤?」
「腹減ったから、食いもん買ってくる」

振り向かずに言って、皆藤は教室を出て行った。
残された諏訪は、皆藤の机の上にある本を何気なく開いてみた。文学青年らしき皆藤は、いつも絶えず本を読んでいる。いったい、どんなものを読んでいるのだろう、と。本にかけられたカバーは、諏訪が夏休みに彼とバッタリ会ったあの本屋のものだ。

「へ……?」

思わず、間の抜けた声が出た。
広げた本は、洋書だった。分厚い本の中は、びっしりと英文で埋め尽くされている。

「うっそ……」

これでは、皆藤が読んでいる本がどんな内容かも分からない。

「さすが、偏差値80オーバー……」

無意識に漏れる言葉

―――そういえば、英検1級とか言ってたっけ……

生徒データを思い出して、そんなことを考える。

「でも第一志望は"フリーター"なんだよなぁ……」

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