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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
2幕-16:賽は投げられた

PERFECT BLUE 16-02

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「な~にやってんだか、アイツ……」

マンションに帰って1人で夕飯の弁当をつつきながら、町田はポツリと呟く。シンとした部屋に音が欲しくてつけたテレビも、面白いものはやっていなくて。

―――やっぱり、宇賀、かな……

宇賀が今日は学校に来ていないことなど知らない町田は、そんな結論に至っていた。
この時間まで帰らないということは、その可能性が一番高いと。

「なんなんだかなぁ~……」

宇賀が皆藤に本気だと勘付いてしまってから、皆藤が彼と会うことを、どうしても今までのように冷静に構えていられない。今までだって、自分以外の人間と皆藤が関係を持つことは嫌だったが、自分たちの関係上そんなことを言える立場ではないし、宇賀も皆藤との関係割り切っているのであれば、とりあえずは譲歩しようとしていた。
宇賀の場合、皆藤とそこまで深い肉体関係を持っていないことだろうことは分かっている。皆藤の体を抱けば、その体が他の人間とつながりがあるかどうかぐらい、経験豊富な町田には分かる。そして皆藤が、宇賀を相手にそんな風に一定のラインを引いている理由も、町田には分かる。分かるから……困るのだ。
皆藤にとって、それなりの位置づけにある、宇賀という存在。その彼が本気だというのなら、穏やかな気持ちではいられない。例え皆藤が本気ではなくても、いつか皆藤がその関係を終えようとしたとき、宇賀は容易には離れないはずだ。そして皆藤も、宇賀のことは簡単には突っぱねられないだろう。

「はぁ~~……」

ずい分とややこしいことになってきて、町田は頭を掻いた。
ただつけているだけのテレビでは、放送していたバラエティー番組がエンディングトークに入っており、出演者の中で仕切りを担当していたタレントが声をあげる。

『え~、明後日12月14日は、我らが安藤大河の誕生日で~す』

その声が、町田の耳にスッと入ってきて。

「あ……」

そういえば、とふと思い出した。
今日は、諏訪の誕生日だ。

『俺は、3日後の12日ですからね~』

つい3日前、麻生の誕生日だからとさっさと仕事を済ませて帰ろうとしていた串崎を2人で冷やかしていたとき、諏訪がそう言ったのだ。
皆藤が諏訪の誕生日など知っていたはずはないが、あのクラスのことだから何かしらお祝いをやっただろうとも思える。
もしかして……

「……んなわけねぇか」

頭をかすめた嫌な予感を、町田はすぐに打ち消した。
いくら何でも、それは考えすぎだと。




諏訪は、隣で眠る皆藤の後ろ姿を見つめていた。
情事の直後までは熱を帯びて赤味のあった肌は、すでにいつもの色に戻っている。目の前にある背中は、男にしてはずいぶんと華奢で頼りない。それは、腕も脚も腰も首も、全てに言えること。
たとえば町田のように"後ろ姿はどこぞのスーパーモデルの女にしか見えない"とはいかないまでも、"10代20代の頃のキーラ・ナイトレイにしか(自分には)見えない"とはいかないまでも、皆藤の体は細くて華奢で、どこのラインもしなやかで美しい。そして何より、見た目以上に頼りなさを感じる。抱いている途中、何度も"折れてしまうのではないか""消えてしまうのではないか"という感覚に襲われた。それは彼の持つ空気や背負う傷の大きさからくるものなのだろう、と諏訪は思う。だからこそ、優しく抱いた。
そんな危うい皆藤だからこそ、彼が心の余裕を持てるまで、諏訪は自分の気持ちは伝えないつもりだった。確率はゼロに等しいかもしれないけれど、卒業を迎えた彼がもし自分の気持ちを受け止めてくれたら、そのときは思い切り抱きしめたいと思っていたはずなのに……結局、彼の誘惑に勝てなかった。大きくなりすぎて持て余した愛情を、抑えられなかった。

「智司……」

小さく囁いて、髪を優しく撫でる。出会った頃とあまり変わらないヘアスタイルは、彼の顔立ちにバッチリと合っていて、癖のないその髪が枕に広がっている様が美しい。まるで目の前には絵画が置かれているかのようだ。そんな、性別を超えた美と存在感が、皆藤にはある。
しかし、もちろん女とは違う。柔らかい部分などひとつもないし、豊かな胸もないし、女にはないモノがきちんとある。
それでも、諏訪には全く気にならなかった。"皆藤智司"という存在があるだけで、十分だった。それだけで、全てが狂おしいほどに愛しかった。

時々、カメラのファインダー越しに見える景色が歪んで見えると言った皆藤。そんな今の彼が、自分を愛しているわけがない。彼はきっと、誰も愛していない。
ならば何故、皆藤は自分と関係をもったのだろう。諏訪はぼんやりと、そんなことを考える。諏訪が皆藤を生徒以上に思っていることに気付きながら、そして日に日に皆藤に嵌まっていることに気付きながら、どうしてあんな風に誘ったのだろうと。
からかう気持ちだけで、こんな関係を持つことは出来ない。皆藤は自分に、何を求めたのだろうか……
快楽の相手?自分に対して叶わぬ恋をしている男への同情?……何も分からない。
ただひとつ、諏訪に分かっていること。それは、少なからず自分は、もう皆藤から抜け出せないということだ。
彼と体を繋げて、更に溺れてしまった自分がいること。彼をもっともっと、深く愛してしまった自分がいること。それだけは、諏訪は確信していた。

『俺は、たったひとつのために生きてる。それがなくなったら、死ぬのなんて怖くない』

先月の面接で、皆藤はそう言った。それが何なのかは分からない。確かなことは、彼が自分自身のためには生きていないということ。諏訪は、皆藤の生きる理由に入っていないということ。
それでもいい、と諏訪は思う。
自分なんて、皆藤の生きる理由じゃなくていい。それでも彼を大切にしたい。切ないぐらいに優しい彼を、自分自身に優しく出来ない彼を、その分自分が優しくしてあげたい。

「全て失っても、俺が居るから……」

諏訪は、皆藤に囁く。

「死ぬのが怖くないなんて、言うなよ……」

そして願うように、その髪に優しくキスをした。
それからもずっと、諏訪は皆藤の後ろ姿を見つめていた。

背中越しに諏訪の言葉を聞いていた皆藤は、ふと目を開けた。
さっきからずっと、眠ってなんていなかった。
それは、先の見えない思考を、ずっと巡らせていたから。
どうして自分は、諏訪を誘ったのだろう―――と。
諏訪とセックスすることは、町田のために生きている自分には何の利益も意味もないこと。それでも誘ってしまったのは、何故だろう。宇賀との行為のように、自分は、自分が生きていることを確認したかったのだろうか。だから、今日は宇賀が居ないから、自分に想いを寄せているであろう都合の良い諏訪を誘ったのだろうか。それとも、諏訪の言葉や瞳、全てが自分をずっと混乱させていたから、思い余ってあんな行動に走ってしまったのだろうか。
……何も分からない。全てが有り得そうで、有り得なさそうで。考えているのに、途中で何故か躊躇ってしまう。
もう何も考えたくなくて、皆藤はまた目を閉じた。

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