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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
2幕-16:賽は投げられた

PERFECT BLUE 16-10

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「ゴメン。ちょっと遅くなった」

皆藤に軽く手をあげて、町田がヘラっと笑う。すると皆藤は、特に気にしていないように無表情のまま、壁に背中をつけていた体を起こした。
そして2人は、駐車場へと歩き出す。今日は時間も早いので、ノブの墓参りにも行く予定だ。

「昼、何食う?」
「別に、何でもいいけど」
「じゃさ、たまにはちょっと遠出しない?ノブの墓参りと兼ねて」
「いいんじゃない?」
「もし今すぐメシ食いたいなら、ドライブスルーとかでもいいけど」
「いや、いい。どっか入ろ」

サラリと言葉を返し、皆藤はそれを拒否した。遠いならば学校の人間に見られることもないし、そもそもファーストフードはどうも好きになれないのだ。それを町田も理解し、ニッコリ笑った。

「そういえばお前、今回も体育と音楽以外はオール5だそうで。テストも殆ど100点だって?」
「そうだったかもな。覚えてないけど」
「じゃあ、相変わらず、つまらない成績表ですか?」
「…まあね」

町田の言葉に笑いながら答える、皆藤の口調。それが少しだけ、今までと違うことに気付いた。

「何、見せてよ」
「つまんねぇってば」
「いいじゃん。見して見して」
「何だよ。いっつもそんなこと言わねぇじゃん」
「ちょっと見てみたいんだってば」

町田がふざけて笑うと、皆藤はバッグの表面のポケットに雑に入れてある成績表を渡した。
それを開いて、町田は眺める。
去年の成績表と違ってビッシリと、しかもかなり内容の濃い文が書かれている、担任からの備考欄。今回初めて町田は諏訪からの成績表というものを見たが、やはり彼らしい言葉で埋められている。彼のクラスの生徒たちが7月ごろ、自棄に成績表を見せ合って愉しんでいたのを思い出した。こういうことだったのか。

"皆藤は、チョイ悪な良いヤツです。落ち着きがあってシャイなせいか、いつもドライでクールな感じに振る舞うけれど、その奥の優しさや強さは、俺もクラスの皆も分かってる。勉強には全く問題がないので、何か熱中出来るものを見つけるといいかもしれない。
写真とか英語とかデザインとか、皆藤の今現在の得意分野をもっと伸ばしていくのもいいね。
最近はきちんと授業にもホームルームにも出るし、そういう少しずつの変化が、皆藤の視野を広げられると信じています。
ちなみに、この時期に外へ出るときはコートを着ましょう。 諏訪より"


ユーモアを交えつつ、きちんと正直な言葉を書く諏訪の文。7月の欄にもいろいろと書いてあるし、皆藤の変化を的確に捉えている。
これが、今、皆藤の発言を変えた元なのだろう。町田はそれを痛感した。
諏訪の努力の影響で最近皆藤が取り戻しつつある生気を素直に喜ぶ自分と、その諏訪の存在に自棄に焦る自分。そのせいか、自分でも驚くほど大胆な発言を、町田は諏訪の前でしている気がする。
そしてあの宇賀も、冷静な笑顔を装いながらも、心が焦っているのは十分感じられる。
そんなこと、隣に居る皆藤は全く気付いていないのだろうけれど。

「智司」
「ん~?」

呼べば必ずくれる返事。それは変わらないし、町田がその先の言葉が言えないのも変わらない。

―――ホント、罪なヤツ

心の中で苦笑しながら、町田は不安をかき消すように、思わず皆藤にキスをした。駐車場には誰も居ないし、ここはちょうど、校門からも死角だ。見えるとすれば、先ほどまで皆藤が待っていた、あの場所からぐらい。あそこには自分と皆藤しか居なかったのだから、町田は誰にも見られていない自信があった。

皆藤も、同じように誰にも見られていないという自信から、町田のキスを素直に受け入れた。
何となく、今の彼は突き放せなかったというのもある。
皆藤には、町田がいつものようにふざけているようには思えなかった。何を不安がっているのかまでは分からないが、自分とキスすることでそれが拭えるならば、そうしてやろうと思ったのだ。
町田のキスは、確実に深くなってくる。いつだって、どんなものでも、彼とのキスは刺激的だ。
きっと彼とは、唯一自分が何の疑心もなく、快楽を追うことが出来るからかもしれないと皆藤は思う。町田が与えてくれる刺激を、素直に受け入れられるからかもしれない、と。

「……なんか、昼メシ前に腹ごしらえしたい気分」

唇を離し、町田がイタズラに微笑んだ。

「でも、ノブに怒られちゃうか」
「そうだよ。"昼間っから何してんだ"って」
「だな。じゃ、夜のお楽しみにしとくよ」
「っつうか、寒いから早く開けてくんない?」
「おお、ゴメンゴメン」

ずい分と車の前で長居した気がして、町田は慌ててドアのロックを開けた。
皆藤もいつものように助手席に乗りこみ、そのまま町田はエンジンをかけて走り出す。去年買い換えたばかりのブラックパールのミニバンは、颯爽と駐車場を抜けて走り去った。



「嘘……」

全ての行動を見つめていた諏訪は、車が走り去った後、壁に背を向けたままズルズルとその場に座り込んだ。

「何だよ……今の」

皆藤が、町田と待ち合わせしていた。
2人が、キスをしていた。
それは、どう見ても恋人同士のような、熱いキスーーー

「好きな人……」

『自分の好きな人に恋人みたいなのが居たら、諏訪はどうする?
恋人同士ではないけど、ヤることヤっちゃってる、みたいな?』

町田のあの言葉が、再び甦る。
そして、諏訪は気付いた。
それまでの町田の話すべてに、皆藤が当てはまることを。

『俺は、伝染ったんだけどね』
『誰のですか?』
『好きな人の』

椅子で回る癖を指摘され、そう答えた町田。皆藤にも同じ癖があることを、この間知った。そして、

『ライバルが俺のダチでさ』

と笑っていた町田。"俺のダチ"町田は確かに、そう言っていた。恐らくそれは、自分のことだと諏訪は思った。
そしてそんな言葉の意味は、町田が諏訪の気持ちに気付いているということなのだろう。

『ライバルは、どうするんですか?友達なんでしょ?そのこと知ってるんですか?』
『知らないだろうね』
『じゃあ、もし知られたら……』
『それが厄介だよね』

諏訪のそんな質問に、そう答えた町田の苦笑い。今考えれば、あれが全てを物語っている気がする。
そして、

『俺の好きな人は、多分、俺だけのものにはならない』

そんな風に思う理由は、皆藤が恋愛を知らない人間だからだろうか。
どんなに好きでも、自分のものにはならない。それでもいいから、皆藤との関係を続けたいと。なぜなら……

『俺には愛があるから。だから、それでいいの。たとえ一方的でも、愛があるなら、それは愛のあるセックスだろ?』

町田も、皆藤を真剣に愛しているのだ。自分と同じように。
諏訪にとって、尊敬する先輩であり、大事な友人でもある町田。よりによって、同じ人間を、真剣に愛してしまった。
もしも皆藤とこうなる前に、町田と皆藤の関係を知っていたなら……と、諏訪は考える。
もしも自分が知っていたら、こんなことにならなくて済んだのだろうかと。
そしてその答えは、簡単に出た。

―――いや、無理だ

きっと、同じ結果を招いていただろう。皆藤の誘惑に魅せられて、きっと同じ道を辿っていたはずだ。
そして、すでに皆藤のすべてに捕まってしまった自分には、このまま諦めることなどできない。例え相手が町田でも、自分が引くことなど―――

「マジかよ……」

頭を抱え、出るのは震える声ばかり。
自分が抜け出せない迷路に嵌まってしまったこと、ゴールにたどり着くには誰かが泣かなければなれならないこと、しかしこの愛において自分がその役割になるわけにはいかないこと、それを競う相手は大切な友人であること―――その事実に一気に直面した諏訪は、しばらくそこを動けなかった。

町田だけが気付いていた、静かなつむじ風。
それはついに大きな嵐となって、上陸しようとしていた。

To be continued in third part.


第3幕(第17章)へ進む


第2幕、終了しました。
諏訪が町田先生の秘密に気づき、宇賀が諏訪と皆藤の関係に気付き、ついにビッグウェーブ到来ですね。
皆藤本人がどこまで認識あるかはまだ不明ですが、諏訪先生に心を乱されているのは確かなようで。これがのちに修羅場と化すのか、それとも静かな闘いが続くのか、はたまた誰か脱落者が出るのか……第3幕へと続いていきます。

串崎先生も久々登場。彼の場合はもともと出番少ないですがw
教師トリオの雑談シーン、"要らない"とか言われそうですが、個人的な趣味で入れさせてもらってます。重いテーマのお話を書いていると、どうしても緩いシーンが欲しくなるものでして。みなさまも、彼らの雑談シーンやF組の関西トリオのド付き合い等で少しお休みいただけていると嬉しいです。皆藤もちょいちょい冗談を言ってはいるんですけど、彼の場合テンションが低いので、いまいち空気を変えられずじまいですね。

そしてメインシリーズがちょこっと顔を出しましたが、お気づきでしたか?
16章で町田が観ていたテレビの中で、大河のお誕生日祝いしてました。何歳になったんでしょうねぇ~。メインシリーズの好きな時期、好きなカップリング(直大、実大、拓大、W大)に当てはめてください(^^)
今後も、いやらしくない程度に、メインシリーズとコラボできたらいいなぁと思ってます。
ちなみに、諏訪と大河の誕生日が近いのは、単純に偶然です。

連載開始からすでに8ヶ月になるPERFECT BLUEシリーズ、ようやくBLらしくなってきましたが、お楽しみいただけているでしょうか。
泥沼化してきた恋愛模様ですが、教師トリオやら2年F組の生徒やらの明るさと騒がしさ、そして2組の爽やか(?)カップル(ナベ×ハマ、王子×柊)で、何とかお茶を濁し…ではなく乗り切っていきたいと思います。

最後に、第2幕のタイトルについてですが……
第1幕(蒼い薔薇)が皆藤を指しているのはお気づきかと思います。他にいませんしね、蒼い薔薇っぽい奴。
ですが、第2幕のタイトル(変革と共鳴)については、皆藤と諏訪の関係性だけでなく、真鍋と浜島、木下と石原、野田と皆藤の関係性についても示しているつもりです。
関係性の変革と、互いを想う感情の共鳴って感じで。野田と皆藤については、出逢ったときに互いに感じた好印象の共鳴ですかね。それを思い出したことで野田は、自分の更生を心のどこかで願い続けてくれていた皆藤の想いに気付くわけですので。
皆藤と諏訪のバトルがメインだった第1幕に対して、第2幕は様々な人物たちの視点から書かせていただいているので、こういったタイトルになりました。
以上、ちょっとしたタイトル解説でした。

第3幕(第17章)は12/4(金) 6時からスタート予定です。


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