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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-17:三つ巴

PERFECT BLUE 17-07

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宇賀は、廊下をスタスタと歩いていた。その顔には、すでに笑みはなかった。
皆藤が諏訪と関係をもつようになってから、自分と彼の"そういう意味"での約束は激減した。
そしてその体に触れる度に気付く、皆藤の心の変化。諏訪との関係を知ってしまったあたりから、宇賀は皆藤のこの変化に敏感になってしまっている。
それが、今まで気付かなかっただけなのか、それとも皆藤が実際にその時期から急速に変わり始めてきたのか、そこまでは分からない。
ただ、いずれにしろ皆藤の変化に諏訪の存在が大きく関係していることは確かで。その中で、皆藤が"体のコミュニケーション"というものに対しての意識を変え始めている。

「あ、宇賀」

階段を降りきったところで、目の前の人物と目があった。諏訪だ。

「今までお前のクラスに居たんだよ。次の授業、自習だか……」

笑顔で宇賀に話し掛けた諏訪だが、宇賀が真剣な瞳で自分を見ていることに気付いて言葉を止めた。

「宇賀?」
「……ねえ、先生」

静かに、言葉を発する。

「何?」
「あのさ」
「うん」

「智司は、先生だけのものにはならないよ?」

諏訪から一瞬にして笑顔が消えた。

静かだけれどハッキリとしたその口調に、諏訪の思考回路は一瞬混乱をみせた。
だが、宇賀が自分と皆藤との関係を知っているのだと気付くのに、そう時間はかからなかった。いつでも笑みを見せる宇賀には珍しい程に真剣な瞳が、それを物語っている。
固まってしまった諏訪を真っすぐと見つめながら、特に表情を変えずに宇賀が距離を詰めてきた。

「先生、俺が何で知ってるのか、知りたい?」
「………」
「簡単だよ。先生の香水、あれ、俺も一度だけ買ったことあるんだ。あれけっこう高価なやつだから、仄かな香りのわりに、相手の服とかに移ってずっと残ったりする。特にそれが毎日洗うものではない場合なら、余計に。学ランとかね」
「………」
「もちろん、普通の距離からだと分からないぐらい仄かなものだけど。鼻がつくぐらい近づけば、すぐに分かる」
「え……?」

諏訪はその言葉に、違和感を感じた。
そんな微妙な香りを、どうしてこの生徒が知っているのかと。鼻先が触れるほど近づかなければ分からない香りなんて、鼻先が触れるほど密着している必要があるということ。親友といえど、そんな距離感など……
そう考えて、諏訪はハッとした。
授業の始まりを知らせるチャイムが鳴っている。しかし、2人には何も聞こえなかった。

「宇賀……、お前」
「そう。分かった?」
「だって、親友だ、って……」
「親友だよ。アイツは、俺の相棒。
でもね先生、これにはいろいろと理由があるんだよね」
「いろいろ……?」
「詳しくは言えないけど、親友だからこそアイツとする必要があったの」

この理由は、自分たちだけにしか分からないこと。だから宇賀は、理由を教えなかった。自分たちがどこまでの関係があるのかは、逆に言えばどこまでしか許されていないのかは、悔しいからわざと言葉を濁した。
親友だからこそ自分は、皆藤に手を伸ばした。彼が生きていると確認して、教えてあげたかった。周りはそんな自分の行為を非難するかもしれない。しかしあの時自分が出した手段が間違っているとは、宇賀は今でも思ってはいない。並大抵のことじゃ、あの時の皆藤が生きていることを証明できなかったのだから。一番敏感に互いの熱や息を感じる手段として、ああすることが一番だった。その結果として、自分の心にこんな感情が芽生えてしまっただけのこと。

「どんな風にだって、恋愛は始まるよ。俺は、アイツが好き」
「………」
「自分だけのものになるとは思ってない。それぐらいはね、俺も分かってる。でも、このままアイツを手離すつもりもない」
「………」
「先生のことは1人の人間として尊敬するし大好きだけど、そこだけが難点だね」

小さく苦笑して、宇賀は諏訪の横を通り過ぎていった。
諏訪は、彼を振り返る。だが、宇賀は決して振り返らずにさっさと歩いて教室に入ってしまった。

宇賀も皆藤の相手だった。そして、彼も皆藤を愛している―――その事実が、諏訪の頭を駆け巡る。
どんな理由で、どんな言葉を交わして2人が始まったのかは分からない。しかし何か大きな理由で関係を持ったのであろうことは、宇賀の言葉で分かる。その中で、宇賀の中に愛情が生まれたことも。
それが純粋な愛なのか歪んだ愛なのか……
どちらにせよ、彼は決して引かないだろうと諏訪は思った。宇賀の意思の強さは、この9ヶ月で何度も感じてきたのだ。自分だけのものにならないと分かっていて、それでも手離さないと断言した彼は、皆藤が誰かのものになったとしても手を引かないかもしれない。18歳でそこまで考えてしまうような人間なのだから。
あからさまに行動を起こさない町田が"静"ならば、自ら宣戦布告というような大胆な行動に出る宇賀は"動"だろう。町田とは違った意味で、宇賀は強力な存在らしい。それがわかった諏訪は、その場で頭を抱えたいほどのダメージに心が震えた。




放課後、1時間ほどで仕事を終えた諏訪は、そそくさと帰り支度をして職員室を出ると足早に廊下を歩いていた。廊下に出てすぐ彼に電話を掛けたスマホを握り締めて。
待ち合わせ場所には、皆藤はまだ居なかった。電話を掛けたときに彼がどこに居たのかは把握できなかったが、『今から行く』という諏訪の言葉に『…分かった』と呟いたのだから来るはずだろう。柱に背を凭れ、彼を待つ。

「………」

視界の端に何かを捉え、諏訪は顔を向けた。
コートのポケットに両手を突っ込んだ皆藤が立っている。
きちんと現れてくれた彼に笑みを見せ、諏訪は彼に近づいた。

「行こ」

そっと肩に手を置く。
皆藤はその手を振り払うこともなく、頷くこともしない。そして無言のまま歩き出した。
諏訪も、彼に続いて歩き出した。

午前中の休み時間、宇賀から知らされた、彼と皆藤との関係。
しかしもう、あの時の衝撃は諏訪から消えていた。
この先どんな相手が現れようと、もう引き返せない、引き返すつもりなどないことは、確かだったから。


第18章へ進む

ついに3人が土俵にあがり、睨み合いってところでしょうか。
諏訪と町田の友情も、今後大きなキーワードになってくると思います。互いに気を遣い合っていては何も進展はないし、かといってあんまり身勝手な手段を使えば友情は壊れます。友情を取るのか愛を取るのか、それとも"恨みっこなし"で勝者には潔く手渡して友情も守るのか……難しいところですね。

皆藤と一線を越え、町田がライバルと気付き、宇賀の立ち位置にも気付き…何だかいろいろ開き直ったっぽい諏訪、何気にグイグイ行きますね。これまで尻込みしていたのが嘘のように、かなり積極的にアピールしてます。行くと決めたら一直線、というのが諏訪先生ですからね。

さあ、3人が争奪戦に名乗りを上げ、波乱必至の第3幕がはじまりました。
主役の1人のくせに第2幕では中盤あまり出番のなかったマチルダ先生でしたが、再びまた出まくります。

次回第18章は12/15(火) 6時からスタート予定です。


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