FC2ブログ

「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-18:矛盾と混乱の心

PERFECT BLUE 18-02

 ←PERFECT BLUE 18-01 →PERFECT BLUE 18-03
皆藤は裏庭にいた。昼食の時間ではあったが、あまりにも見事な雪景色に、気が付けばカメラを手に外へ出ていたのだ。
空にカメラを向け、絶え間なく降る雪を撮る。
すると……

―――…っ

不意に、ファインダー越しの景色がグニャリと歪んだ。

"まただ"

思いながら、皆藤はカメラから視線を外す。
いつだって自分自身に嘘をついている自分を見透かすかのように、ファインダー越しの世界は歪みを作る。心の中にいるもう1人の自分が、"嘘つき"となじってくるように。

「………」

皆藤は、溜め息混じりに空を見上げた。
灰色の空からは、何も見えない。全ての真実を隠すように。
それはまるで、今の自分の心のようだと思った。
自分の中に渦巻く疑問、その全てに蓋をしている自分のようだと。

「……風邪引くよ?」

不意に声がして、顔を向けると、そこには宇賀が居た。
宇賀は昼食だからと皆藤を迎えに行ったのだが教室には既に居らず、保健室では諏訪が寝ていた。消去法で、外だろうかと思って来てみたのだ。

「コートが濡れてるじゃん」

傘を持ち、皆藤の上に差してくる。
しかし皆藤は立ち上がり、宇賀の手ごと傘をそっと戻した。

「お前の方が、風邪引いたらヤバいだろ」

宇賀は、大学入試を間近に控えている。今いちばん、健康に気をつけないといけないのだ。

「優しいね~」
「泣けるだろ?」

ヘラッと笑った宇賀に、皆藤はぶっきらぼうに言い返して歩き出す。昔のように冗談を冗談で返すようになってきたのも、皆藤の変化のひとつだということ、それを皆藤本人は気付いていない。自分への態度がまた親しみ深くなってきたことに笑みをもらし、宇賀は彼の後を追って隣を歩き出した。

「写真撮ってたんじゃないの?」
「もう終わった」
「付き合うけど?」
「いい。腹減った」
「じつは俺も。学食行こ」

彼の言葉を深く追求せず、そう言って宇賀は皆藤と一緒に校舎に戻った。
自分がここに来たとき、皆藤が無言で空を見上げていた横顔が何だか気になったが。近い場所で立ち尽くしてそれを見つめていた宇賀にも気付かないほどにぼんやりとしていた彼の表情はとても気になったが……宇賀は、自分にはどうすることも出来ないことのような感じがしていたのだ。どうせはぐらかされて終わりのような。どんなに追求しても教えてくれない、そんな感じを、彼の表情から読み取っていた。そしてそれは、有耶無耶のままがいい、とも。
皆藤の心に広がり始めた波紋は、きっと自分には、不利なもの。知りたくない―――宇賀は、強くそう思った。

『このままアイツを手離すつもりもない』

先週、諏訪に断言した言葉。
しかしそれは、諏訪に対してというよりも、自分自身に言い聞かせる言葉だったと、今になって思う。
急速に変化を始めようとしている皆藤との関係を、繋ぎ止めるための。




諏訪が目を覚ましたのは、放課後近くだった。
どうやら自分は、時間にして2~3時間ほど眠っていたらしい。薬が少し効いたのか、熱もさっきより下がっているように感じる。もともと健康体だから、抵抗力もあるのだろう。
ベッドから起き上がった諏訪がカーテンを開けると、町田が気付いて顔を上げた。

「あ、起きた?」
「はい」
「あの薬、すんげぇ眠くなるだろ」
「はい。おかげでずい分寝ちゃいました。でも、少し楽になったみたいですよ」
「そ?良かった良かった。
あ、串崎がね、午後の授業のクラスには自習にするように声掛けたらしいから、大丈夫だよ」
「はい。でも、串崎さん忙しいのに、迷惑かけたかな」
「いいんじゃん?アイツだって、お前に同じことしてもらったことあるんだしさ。それにあの時間はヒマしてたみたいだし。
それよりお前、今日はもうこのまま帰ったら?」

せっかく少し良くなったんだし、こじらす前に。町田はそう言って、ペンで壁の時計を指した。もう、6限の授業も終わって帰りのホームルームの時間だ。今日は特に会議もないし、確かにこのまま帰っても問題は無いかもしれない。
だが、諏訪は"ん~"と考えてから言葉を返した。

「ああでも、一応ホームルームだけは顔出してきます。ちょっと、連絡することあるし」
「そう。んじゃま、お大事に。あったかくして良く寝な」

まるで子供に言うような言葉を返すと、町田は諏訪に手を振って見送った。諏訪も軽く手を上げて保健室を出た。

保健室を出た諏訪は、町田からもらったマスクをつけると、そのまま教室へと向かって歩いていた。
本当は、生徒への連絡事項などない。ホームルームに出たいのは、皆藤の顔を見たいからだ。朝のホームルームでも会ったのだが、今日はF組の授業もなかったし、帰る前にどうしても会いたかった。

「ホームルームするぞ」

ドアを開け、中に入る。
真っ先に視線がいったのは、窓際の最後尾。いつものように、皆藤が居た。窓に顔を向け、しんしんと降る雪を眺めている。彼の姿が見えただけで、心がホッとした。

「先生、朝より声が変だよ」

武藤が、掠れている諏訪の声を笑う。秋本も「大丈夫~~?」と言いつつも笑っている。

「うるせーよ」

皆藤から視線を外し、諏訪も彼らに笑顔を返した。
ゆっくりと、皆藤が前を向いて本を開く。そこで諏訪は、ふと彼の違和感に気付いた。
雪の白さと教室内の光の反射で彼の顔がよく見えなかったのだが、はっきり見えたその顔は、眼鏡をかけている。

『俺、こっちの目が尋常じゃないくらい悪いから』

秋頃だっただろうか、左目を指差してそう言った皆藤。だから、コンタクトをしているのだと。今朝は眼鏡をかけていなかったので、途中でコンタクトを外したのだろう。初めて見る、彼の眼鏡姿だ。
縁なしの細いタイプの眼鏡は、彼の顔を一層近寄り難い、現実味のないイメージに作りだしている。だが……
自分の眼鏡姿を初めて見たことで少し目を丸くしている諏訪に、皆藤が不意に小さな笑みを見せる。
そこには、彼の顔にきちんと表情があることを示していて……思わず諏訪も、笑みが出た。
彼の新しい一面をまた見た気がして、そして笑ってくれて、それがとても嬉しかった。やっぱりホームルームに出て良かったと思えた。

「やっぱ諏訪ちゃん、ビックリしたみたいやね」

皆藤を振り返って、桜沢が笑う。クラスメートたちは皆藤の眼鏡姿を去年も見たことがあるからあまり驚いていなかったのだが、2年生になって皆藤は学校で眼鏡を掛けたことがなかった。コンタクトも1日使い捨てタイプのものだから滅多に外すことはないのだが、今日は昼過ぎ、目の中にゴミが入ってこすったときに、コンタクトが落ちてしまったのだ。

「でも皆藤、これからずっと眼鏡かけた方がええかもよ?ヤンキーっぽさが抜ける」

やはり今日も、桜沢はひと言多い。しかし皆藤はもう睨みつけることも疲れ、適当に無視をしておいた。

関連記事
スポンサーサイト



↓ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL恋愛小説へ

総もくじ 3kaku_s_L.png SS
総もくじ 3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ 3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ 3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ 3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ 3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ 3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
総もくじ  3kaku_s_L.png SS
総もくじ  3kaku_s_L.png Turning point(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 悪魔たちの狂想曲(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 立ち入り禁止(誠×風)
総もくじ  3kaku_s_L.png Old flame(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛2(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 最愛(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png COOL(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 女は災い(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png 交差点(実×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋人たちのクリスマス(ミックス)
総もくじ  3kaku_s_L.png Hide-and-seek(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 直感(春×歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png Assist(春&歩)
総もくじ  3kaku_s_L.png 一時停止(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Engagement(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png アゲイン(陸×千)
総もくじ  3kaku_s_L.png Beyond Silence(W大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛プロセス(拓×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 満月の夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 痴話喧嘩(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 白い恋人(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png reward(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 君と見る空(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 極夜(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png シンクロニシティ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png Stranger(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png その先へ(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 優しい嘘(直×大)
総もくじ  3kaku_s_L.png 【あとがき・雑記】
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【PERFECT BLUE 18-01】へ
  • 【PERFECT BLUE 18-03】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【PERFECT BLUE 18-01】へ
  • 【PERFECT BLUE 18-03】へ