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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-18:矛盾と混乱の心

PERFECT BLUE 18-04

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[2]

「おっはよ~~。ホームルーム始めるぞ~」

数日後、すっかり風邪が治った諏訪は、今日も元気にホームルームに現れた。昔からかなりの健康体で体力にも自信のある諏訪だけに、治りも早かった。

「麻生と……、今日は浜島も休みなんだよな」

呟きながら、出欠表を広げて空席を見る。
麻生は、インフルエンザで2日前から欠席している。そして今日は、浜島も風邪で欠席だ。朝、諏訪の元に浜島本人が電話を掛けてきた。

「風邪流行ってるなぁ。みんな気をつけろよぉ?」
「ちょっと先生、声がデカイ。頭に響くから」

風邪が流行っているこの時期に気合いを入れようと諏訪が元気に言うと、後ろで机にうつ伏せていた木下がムクリと起き上がってそう訴えてきた。どうやら彼も、風邪らしい。いつもの、シトラスの香りでもしそうな爽やかさが影を潜めている。

「さすがの王子も、風邪には勝てへんかったか」

隣の真鍋が、ニヤリと笑いながら木下を見る。すると木下は一瞬悔しそうに顔を向けたものの、すぐに意地悪な笑顔を見せた。

「俺、賢いからさ」

当然真鍋は返しに詰まって「ムカつく奴よのぉ」と悪態をついた。

「それにしても、ハマもさぁ、誕生日に風邪引くなんて、ついてへん奴やなぁ」

2人の会話に入って来た桜沢が、前の浜島の席を見ながら苦笑する。
浜島は、昨日からずっと熱っぽかったらしく朝からフラフラしていた。そして結局、諏訪が授業のない時間を使って車で送り、午前中の内に早退した。今日も熱がまだあるから休むと、真鍋にも入っていメッセージがきた。最近一緒に学校に行っているため、朝のうちに知らせてきたのだ。

『熱下がったか?放課後ちょっと寄るから、ちゃんと寝とけよ』

真鍋は、こっそりと浜島にメッセージを送っておく。だが自棄に視線を感じて顔を向けると、それをしっかりと見ていた木下と目が合い、ニヤリと笑われてしまって。真鍋は思わず、木下にケリを入れた。

「ホラホラ、何病人イジメてんだよ」

目ざとく見つけた諏訪が、笑いながら真鍋を窘める。

「俺、足が長いんで、当たってもうたんよ」

フフンと笑って、真鍋はそっぽを向いた。だが、顔を向けた先の皆藤も真鍋の行為を見ていたらしく、真鍋がまだ手にしたままのスマホに視線をチラリと向けられる。そして"バカだな"とでもいうかのように呆れ顔をした皆藤は、手にしていた本に顔を戻してしまった。

「アハッ。悔しいね~、ナベ」

木下が、楽しそうに小声で笑った。




放課後、皆藤はまた裏庭にいた。
先週、何だかんだと3日も振り続けた雪は止んだ後も曇り空が続いていたが、夕方近くになって晴れの兆しを見せ始め、今は灰色の空から太陽が見えている。もうすぐ夕方だし、少し赤味がかった陽の光だ。それでも温かさを感じるその美しい光景を、皆藤はしっかりとフレームに収めた。
だが、すぐにその景色は、再び歪みを見せて―――

「………」

カメラから目を離し、そのままガクンと腕を下ろす。そして、壁を背にしゃがみこんだ。
太陽の温もりを求める自分と、それを否定しようとする自分。否定すればするほど景色は歪み、かといって、求める自分に対応出来ない。何かに縋ってしまいそうになるそんな自分が、怖いと思う。
先週、ここで見上げた空は、自分のようだと思った。全ての問題に蓋をしてしまう、自分の中に何も起こっていないのだと装う、そんな自分に良く似ていると。だから、少しだけ晴れ間を覗かせたこの空を見上げれば、何かが分かるかもしれないと思ってここに来たのに。
だが、今の自分に感じるのは、取り残されたような感覚。何も見い出せないでいる自分を置いて、この空は光を見つけてしまったようだ。

そっと、地面の雪に触れてみる。凍りつくほどの冷たい雪は、陽の光で少しだけ上がった気温のせいで表面が溶け、キラキラと輝いている。
しかし、輝いているのは、溶けているから。周りに"綺麗だ"と言われても、いつかこの雪たちは太陽に溶かされ、姿も形もなくなるのだ。そして周りも、すぐに雪の存在など忘れてしまう。
自分も、この雪と同じかもしれない……皆藤はそう思った。
生きていれば、何かと周りの興味を引いているかもしれない。たとえそれが"良くない興味"でも、自分の存在は、そこに確かに在る。だが、もし消えてしまえば、きっと自分には何も残らない。そのまま消えていく。
太陽は、どの生物にも必要なもの。だが雪は、雪だけは、太陽とは共存出来ない。太陽が昇れば、その存在は消滅する。決して、同じ世界では生きることのできないもの同士なのだ。

皆藤にとって、諏訪は太陽のような存在だ。
明るく笑い、周りを照らし、温もりを与える。純粋に、真っ直ぐに、自分自身の全てを曝け出す。だから、雪のような自分とは、共存出来ない。それなのに……。
太陽の温もりを求める自分は、何を望んでいるのか。触れれば溶かされて消えてしまうのに、自分は何を望んでいる?
迷い込んだ迷路。自分からたくさんの行き止まりを作った迷路。出口が見つかりそうになるとまた新しい壁を作ってしまう自分。自分に優しくないんじゃない、自分を痛めつけているんじゃない。ただ単に、自分と見つめ合えないだけなのだ―――
そんなことを考えているうちに、皆藤は急に太陽の光が怖くなった。


諏訪は、校舎を出て駐車場に来ていた。特にすることはないし、マンションで授業の準備でもしようかと思ったため、今日は帰ることにしたのだ。皆藤はホームルームの後すぐに帰ってしまって、どこにいるか分からない。

「うわぁ……」

駐車場に出て空を見上げると、綺麗な夕焼けが地面を照らしていた。雪と夕焼けが作り出した景色は、とても綺麗だ。写真を撮るには、絶好の景色。
皆藤も、写真を撮っているのだろうか……ふとそんなことを思い、気がつくと諏訪の足は裏庭へと動いていた。裏庭を通って中庭に出られるし、どちらかにいるかもしれないと思ったのだ。だが、

「あ、そうだ。マフラー…」

マフラーをまだ返していないことに気付き、諏訪は駐車場へと引き返した。
ここ最近、風邪を伝染すわけにもいかずに皆藤と2人きりで会わなかったために、ゆっくり話す機会もなければ、かといって生徒の前で返すわけにもいかず、ずっと持ったままだったのだ。電話は何度かしたが、いつも皆藤との会話に夢中でうっかりマフラーのことを忘れてしまっていた。
車に戻り、後ろのシートに置いてあったマフラーを出す。そして改めて、裏庭に向かって歩き出した。もし彼がまだこの校内に居るなら、一緒に帰ろうと思いながら。

案の定、皆藤は居た。裏庭の、校舎の壁に背をつけて。
だが……

「………?」

少し、様子がおかしいと思った。

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