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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-18:矛盾と混乱の心

PERFECT BLUE 18-06

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朝メッセージを入れたとおり、真鍋は浜島の家を訪ねた。
自分と母が住むマンションから歩いて7、8分。住宅地に並ぶ広い一軒屋が、浜島の家だ。
インターホンを鳴らすと、『はい』という声。浜島の声だ。

「俺やけど…」

モニター画面で確認は出来ているだろうが形式的にそう答えると、『うん、ちょっと待っとって』という答えと共にガチャリと切れる。それから間もなくドアが開き、Tシャツにパーカーを羽織り、下はスウェット姿の浜島が顔を出した。

「風邪、どう?昨日は相当辛そうやったけど」

整った顔を心配そうにしかめて、真鍋は浜島の額に手を当てる。

「ああ、熱はな、下がったから。昨日、先生が送るついでに車で病院連れて行ってくれたし。インフルエンザやとマズいからって。ウチの親が帰り遅いって知っとったみたいで」

のほほんと笑う浜島だが、まだ少し、熱はあるみたいだ。

「オジさんもオバさんも、今日も遅いんか?」
「この時期はどっちも忙しいみたいやからね。昨日もオカンは深夜やったし、オトンは朝方帰って来たし」
「そっか。もしかして、ここ最近ずっと1人やったん?」
「ん~まあね」
「なら、昨日言うてくれたら、行ったんに。ウチもオカンが昨日は友達と飲みに行ってて遅かったから、俺も夜中まで1人やったし」
「昨日の状況でナベを呼んだら伝染してまうやんか。ま、とりあえず上がって」

玄関で立ち話もなんだからと、浜島は真鍋を家の中に促した。そのまま、自分の部屋へと誘う。
2人の関係が修復してから、真鍋は何度も浜島の家を訪れている。大阪時代の経験を活かし東京でも出版社で雑誌編集者として働いている母親は毎日忙しく、1人でいることの多い真鍋は、バイトの無い日は年中浜島の家で夕飯をごちそうになっているのだ。歩いて数分の距離のため、朝も、バイクであれ電車であれ、通り道である浜島の家の前まで迎えに行くのが真鍋の日課になっている。
浜島の父親は大阪では名の知れた商社で働いていたが、3年前に東京の企業に引き抜かれる形で転職をした。会計士の母は東京に来てからは専業主婦をしていたが、生活に慣れたことと仕事に戻りたいという思いから、昨年から近くの会計事務所で働いている。2人とも、仕事は硬いが、息子の浜島同様にとても気さくで穏やかな親だ。真鍋のことも可愛がってくれる。息子と真鍋が再びこうして交流を持つことになったことを、彼の両親は心から喜んでくれている。真鍋にとって、ここが自分の第2の家だ。

「何か飲む?」

浜島は真鍋の脱いだコートを掛けると、ベッドに腰を下ろした彼にそう訊ねた。
しかし真鍋は、その腕をグイッと引き寄せ、自分の足の間に座らせる。そして、そのまま後ろから抱きしめた。

「ナベ…?」
「誕生日、おめでとう」
「え…?あ、ありがとう」

深夜0時にメッセージはくれたのだが改めて言葉をくれた真鍋に、浜島は嬉しそうに、しかし少し照れ臭そうに言葉を返した。

「プレゼント、今日渡したくて」

そう言うと、真鍋は横に置いてあるバッグから小さな包みを出す。

「え~、何やろ。ウケ狙い系?それとも真面目系?」

受け取った浜島が、冗談交じりに笑いながら真鍋を振り返る。関西人の悲しい性なのか、どうもムードを作れない自分たちに真鍋もフッと笑った。

「ん~、ウケ狙い系?」
「うわ。楽しみやわ」

"やっぱりか"と楽しそうに笑ってそれを開けた浜島だが。一瞬で、言葉を失った。
そこに現れたのは、シルバーリングだった。

「な?ウケるやろ?」

真鍋の声は笑いを含んでいるのに、言葉はしっかりと"本気"で。言葉を失っている浜島の右手の薬指に、それを嵌めた。
話題の中で何気なく訊いた、浜島の指輪のサイズ。真鍋の記憶は間違っていなかったのか、それは綺麗に彼の指に嵌まった。

「郁人…?」
「………」
「何か、言うてくれへん?俺、めっちゃ不安になるやん」

無言を貫く浜島の表情が見えなくて、真鍋は少し不安気に言葉をかける。
すると、浜島がボーっとしたまま口を開いた。

「嬉しすぎて、言葉が出えへん」

自分の気持ちを、ダイレクトに表すその言葉。何の飾りもつけないその言葉が、真鍋にはとても嬉しかった。

「なあ、郁人」

囁くように呟いて、彼の首筋にチュッとキスをする。
浜島の肩が、ビクンと震えた。
その反応に真鍋は少し落ち込んだものの、ここまできて引き返すわけにもいかない。あまりにも可愛らしい発言をされて、そのままでいられるわけがなかった。

「…なあ、ええか?」

付き合って3ヶ月。ずっと、言えずにいた言葉。彼を大切に思うあまり、言えなかった言葉。
もちろん浜島だって、真鍋のそんな気持ちには気付いていた。だが、その一歩が怖くてどうしても踏み出せなかった。そしてそれを真鍋も分かっていたからこそ、彼を待っていたのだ。

「やっぱ、嫌?」

不安になって小さくなってしまう声。しかし、浜島はゆっくりと首を横に振った。

「俺、言うたやん?ナベになら何されてもええって…」

自分を抱きしめてくる真鍋の手に、そっと手を重ねる。怖い気持ちもあるけれど、真鍋ならばいいと思った。

「良かった」

ホッと安堵の息を漏らした真鍋が体の向きを変え、浜島の体はゆっくりと倒される。間もなく、優しいキスが降りて来た。
そして2人、見つめ合う。

「あ、でもナベ、風邪伝染るで……」

浜島は自分が風邪を引いていたことを思い出し、再び自分にキスをしてこようとした真鍋の肩を慌てて押して少し離した。しかし、真鍋はすんなりとそれを制した。

「そしたら、看病してくれるんやろ?」

彼らしい発言。
浜島も、思わず笑った。

「それにな、風邪引いてるときは、セックスするんが一番ええねんで?汗で、体の熱を追い出すんやて」
「誰から聞いたんよ」
「オカン」
「相変わらずオモロいね」
「いらん知識だけは豊富やからね」

当たっているかどうかは分からないが、真鍋の母親は必要ないような知識が豊富だ。諏訪との出会いで変化するにつれ、真鍋は母親とも昔のように会話ができるようになったのだが、その度に、いつもどうでもいいような知識を教えてくれるのだ。恐らくそれは、彼女が得意とし主に担当している雑誌が女性誌系だからなのかもしれないが。

「でも、ヒョンなとこで役に立つもんやな」

笑いながら呟き、真鍋は続きを再開した。

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