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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【連載中】」
3幕-19:卑怯者の言い訳

PERFECT BLUE 19-01

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【19:卑怯者の言い訳】

[1]

2月。

「おはよ~」

いつものように元気にホームルームに現れた諏訪は、小さな違和感に気付いた。
皆藤の姿が無い。
久々に遅刻だろうか……そんなことを思いながら、出席を取り始めた。

「皆藤……は、まだか」
「あ、先生。皆藤ね、熱出して休みだって」

宇賀から伝言を受けた木下が、「あっ」と気付いて報告をする。風邪が流行中のこの時期、体の弱い皆藤はやはり風邪を引いたようだ。

「そっか」

呟いて、諏訪は皆藤の欄に欠席のチェックをした。




化学室で諏訪は、次の授業で行う実験の準備をしていた。
教卓の椅子に腰掛け、スマホを手にとる。電話帳から皆藤の登録を呼び出し、通話ボタンをタップした。
寝ているかもしれないが、家に1人で大丈夫だろうかと考えると、どうしても気になってしまって。声だけでも聞きたいと思ったのだ。


皆藤は、自室でベッドに潜り込んでいた。
昨日あたりから微熱があり、夜になるとかなり上がっていたので町田が病院へ連れて行ってくれた。インフルエンザではなかったのだが、久しぶりに高熱を出したせいか体中が重くてだるく、本を読む気にもなれずにぼんやりと過ごしている。
すると、ベッドサイドに置いてあるスマホが着信を示して震えた。
欠席のことは町田が宇賀に伝えておいたらしく、彼からは朝すぐに電話が来た。この時間宇賀は授業中だし、町田も、さっき電話をくれたばかりだ。
きっと彼だろう……そう思いながらスマホを手に取ると、画面には予想通りの名前が出ていた。


諏訪は、皆藤が出るのを待っていた。
すると数回のコールの後、音が途切れた。


電話に出た皆藤が、無言で耳にあてる。

『あ、皆藤?』
「………」
『大丈夫か?』

電話越しでも分かるほど、心配が色濃く出ている声。思わず、笑みが出た。


「皆藤?」

何も答えてこない皆藤に不安になって、諏訪は声を掛ける。声が聞こえないと、状況が分からない。

『先生は、元気だな』

聞こえてきたのは、少し笑みを含んだような声。風邪のせいか掠れているものの、どうやら笑みを漏らす余裕はあるらしい。そのことに、諏訪は少しホッとした。


『酷い声だなぁ。ちゃんとメシ食ってるか?食欲なくても食わないとダメだぞ?』

心配そうな声が、皆藤の耳元で響く。感情を剥き出しにする彼の言葉には、いつでも心を惑わされる。
それにしても、"病院行ったか?"ではなくて"メシ食ったか?"と訊くあたりが、自称"病院知らず"の諏訪らしいと思った。また、笑みが漏れた。

「大したことないから」
『病院は?』
「昨日のうちに行った。風邪だってさ」
『そうか。じゃあまあ、この土日もしっかり寝て、早く良くなれよ?』
「はい、どーも」
『おい、ちゃんと聞いてんのかぁ?』

適当に受け流す皆藤を、諏訪が笑いながら叱ってくる。あまりにも和やかな空気だと、皆藤は思った。自分には似合わないほどに。
すると……

『お前の元気な顔、早く見たいからさ』

不意に真剣な声で、諏訪が言った。
思わず、皆藤も言葉を失う。直球で投げられたその言葉は、やはり皆藤の心を貫いた。
優しい声に、言葉が出ない。口を開けば何を口走るのか分からないほど、混乱する。

『会いたいけど、無理はしないでほしいから。しっかり休んで』
「………」


皆藤が無言になってしまったことには気付いていたが、諏訪は敢えて言葉を止めなかった。
皆藤に会いたい気持ちは大きいけれど、具合の悪そうな彼を見るのは辛い。本当は自分が行って看てやりたいのだが、もしかしたら町田が居るかもしれないと思うと、勇気がしぼむ。町田が居れば、皆藤だって開けてすらくれないだろう。そもそも彼を困らせてしまう。ならば、ちゃんと治して、元気な顔を見せて欲しい。
そんな願いを込めて諏訪は言葉をかけたのだが、電話の向こうの皆藤は、無言のまま。
しかし少ししてから、フッと笑った声が聞こえた。

「皆藤?」
『クサいよ、先生』

誤魔化すようにはぐらかしてくる。だが、その声が少しだけ優しくなったことが、電話越しからも分かって。

「そう?」

アハッと笑い、諏訪も言葉を返した。

「また電話する」

そう告げると、

『じゃあな』

皆藤は諏訪の言葉には何も答えず、電話を切った。


電話を切った皆藤は、スマホを元の位置に戻し、再び布団にもぐりこんだ。
諏訪の発言ひとつひとつが、自分の胸にじんわりと温もりを作る。
真っ直ぐに愛を囁き、そこに確かな温もりを込める諏訪。自分には重過ぎると思っていた、彼の真っ直ぐな気持ち。
愛なんて、必要なかった。だからずっと、受け流してきた。だけど……
諏訪のような直球系は苦手なはずなのに、彼の純粋な気持ちや温もりは自分には重過ぎるのに、それでもそんな言葉を求める自分もどこかに居て。それで気付いてしまった、本当の自分の叫び。諏訪と体を重ねたことで気付いてしまった、自分の願い。
本当は、言葉や温もりが欲しかったのだと―――

誰からも、愛されないで生きてきた。町田と出会って初めて他人の優しさや温もりに触れて、彼だけのために生きようと思った。それがどんな感情からくるものかはよく分からないが、自分が初めて"情"を抱いたのが町田だったし、それはその後出会ったノブや宇賀に対して抱いたものとは違う、運命共同体のような特別な感情でもある。そしてその思いは今でも同じだ。
だが、恋愛なんて言葉は、そんな"情"は、信じたことなかった。そんな感情でわが子すら捨てる母親を見てきた皆藤には、信じられるわけがなかった。"恋愛"などという言葉は皆藤にとって、酷く薄っぺらで愚かなものに思えていた。
だからきっと自分は、無意識のうちに感情と行為を完全に切り分けたのだと皆藤は思っている。セックスは"合法的かつ体ひとつで得ることのできる快楽"、恋愛はそれを得るための"表面上の言い訳"なのだと。それは町田との行為にも当てはまること。そもそも町田とのかけがえのない絆を、"恋愛"などというチープな言葉で汚したくなかった。
それなのに、そんな思いを真っ向からぶつけてくる諏訪。初めてそんな人間と出会って気付いてしまった、恋愛に羨望を抱いていた自分の姿。
人が人に恋焦がれるなどという感情を軽蔑する一方で憧れ、"愛ある言葉"が欲しかったこと。セックスに、意味が欲しかったこと―――自分の気付かない心の奥底で、凍りつかせたその中で、本当はそれらを望んでいた自分がいたことに、皆藤は気付いてしまったのだ。諏訪慎という、1人の人物と関係を持ってしまったことで。

「ヤな奴……」

いつでも自分勝手な自分に、皆藤は嫌悪感が募る。
何も欲しくないなんて無欲を装いながら本当はとても欲張りだった自分。気付かないなら気付かないままでいればいいものを、今さら気付いてしまうなんて……
どこまで自分は、周りを振り回してばかりいるのだろう。

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