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「★PERFECT BLUE:別シリーズ【完結】」
3幕-19:卑怯者の言い訳

PERFECT BLUE 19-03

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「ただいま」

手っ取り早く仕事を終えて帰宅した町田は、真っ直ぐに皆藤の部屋に向かった。

「智司」

ドアを開けて声をかけると、ベッドに寝ていた皆藤が顔を向けてくる。そして、ゆっくりと起き上がった。

「具合、どうだ?」

ベッドの端に座り、彼の額に手を当ててみる。どうやら、熱はだいぶ下がったらしい。今回はこじらせずに済んだと、ホッと息を吐いた。

「昼メシ、作っておいたやつ食った?」

町田の質問に、皆藤はうんともすんとも言わない。

「食ってねぇな」
「……」
「メシ食わないと体力つかないだろ」
「薬は飲んだ」
「あ~、声はずい分掠れちゃって、痛そうだな」
「寝てたから乾燥してただけだよ」
「うん、まあでも、あんまり喋らない方がいいぞ。とりあえず、飲み物もってくるから。で、メシ作るから食え」

皆藤の頭を軽く撫で、町田は寝室を出る。そしてキッチンに向かった。
皆藤は季節の変わり目や流行時期になると必ず風邪やインフルエンザにかかる。3年前にノブと出会った時のようにこじらせて肺炎にかかって入院したときもあるし、扁桃腺が腫れて1週間ぐらい高熱が下がらなかったときもある。その度に看病してやるのも、町田の年中行事みたいなものだ。
2年前は彼が少年院に居たために看てやれなかったのだが……なんて、思わず余計なことを思い出してしまってわずかに苦笑いをすると、町田はマグカップに牛乳を注いで蜂蜜を少し入れ、それをレンジで少し温めたものを持って部屋に戻った。

「ほら、とりあえずこれ飲め」

マグカップを皆藤に差し出す。彼にこれを作ってやるのも、出会ったときから変わらない。熱を出しているときにはこれが一番だと、当時既に医学への道を歩み始めていた親友・榊から聞いたのだ。そして町田が熱を出したときには、皆藤が同じようにしてくれる。そんな小さなことの全てが、町田にとっては大切で、皆藤にとってもそれは同じ。
2人で過ごす他愛ない日常。それがずっと続くと信じていたい。これからもずっと……

「来週の健康診断までには治さないとな」

町田は、心の不安を打ち消すようにニッコリ笑った。




木下と石原は、借りたDVDをリビングで観ていた。しかし、どうやらこの作品は外れだったらしく、ずいぶん前から2人は退屈モードに突入している。

「外れたね」
「だな」

話題作のわりに、ずい分と内容がありきたり。これじゃあ、観ながら語ることもない。ずい分と盛り上がらない映画だ。そういえば谷原が、この作品が映画館で上映されていたとき、『あれは期待して観ない方がいいよ』と言っていたことを2人は思い出した。

「止めよっか」
「うん」

木下の言葉に石原も頷き、映画鑑賞は1時間で終了した。
時計は、まだ21時。しかし金曜のこの時間は特に面白いテレビ番組はない。

「俺の部屋で、ゲームでもする?最近あんまり買ってないけど。それか、録画してた番組いろいろあるから、何か観る?」

何かすることはないかと考えている石原だが、木下はそれには何も答えずに口を開いた。

「あのさあ、柊」
「ん?」
「お前は、俺との関係どう思ってる?」
「どう?どうって?」

何が言いたいのかつかめず、石原がキョトンとしている。木下は、真面目な顔で彼に体を向けた。

「俺はさ、お前のこと好きだよ」
「うん。俺も、好きだよ?来人のこと」

今さらどうしたんだよ?と、少し心配になったのか、石原が顔を覗き込んできた。
そんな彼に、木下はそっと唇を寄せていった。

「え?来…んっ」

戸惑う石原の肩を抱き寄せて、深く口づける。
突然の行動に驚いていた石原だが、すぐに木下のキスを受け入れていた。こういう熱いキスは、多くはないがしたことはあるから。
だが、何となくいつもと違うことに、石原は気付いてしまった。気付けば芋づる式に、木下が何を言いたいのかも、分かってしまった。
唇を離し、木下が石原を抱きしめてくる。彼にそんな風にされることも日常的なのに、石原の胸はドキンと大きく高鳴って。思わず、体が緊張して固まってしまう。

「俺は、柊と、この先がしたいんだけど」

石原が気付いてくれたことは分かっていたものの、念を押すためにも木下は改めてそう言った。

「お前は、それは望んでない?」
「……来人…」
「もちろん、お前が戸惑うのは分かる。男として、そんなこと嫌だって思うなら仕方ない。
だから、お前が嫌なら、俺はしない。お前が嫌がることは、絶対にしない。だから、正直に言って」

同じ男として、今までは女の子と恋愛をしてきた身として、同性とこんなことをするなんてきっと戸惑うはずだと分かっている。だから、もしも石原がそれを嫌だと思っているなら、自分には何も言う権利はないのだ。男女のセックスとは、違うのだから。
しかし……

「いいよ」

ポツリと、石原が答えてきた。

「……え?」

思わず木下は、体を離して彼を見つめてしまう。すると、石原が木下の首元に抱きついて来た。

「いいよ、来人。俺も多分、同じ」
「……柊」
「この先、しようよ」
「……いい、のか?でもお前、その…」
「大丈夫、わかってる」
「え…?」
「抱いて、来人」

自分の立場がどちらなのか、それぐらい分かっているのだと。石原が、そんな意味を込めてストレートに告げてきたのは、そんな言葉。

「俺の中を来人でいっぱいにして欲しいんだ」

そう言って、最上級の笑顔をくれる。
そんな石原を、木下はたまらず抱き締めた。やっぱり彼は、欲しい答えをくれた、と。
体を離して見つめ合えば……どちらからともなく、唇が重なる。

「お前の部屋、行こう」

木下が耳元で囁くと、石原はコクンと頷いた。

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